「Shank」の版間の差分

82 バイト追加 、 2012年5月29日 (火)
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同義語:ProSAP (Proline-rich synapse-associated protein), CortBP (Cortactin-binding protein), Somatostatin receptor-interacting protein (SSTRIP), GKAP/SAPAP-interacting protein, SPANK, Synamon 
同義語:ProSAP (Proline-rich synapse-associated protein), CortBP (Cortactin-binding protein), Somatostatin receptor-interacting protein (SSTRIP), GKAP/SAPAP-interacting protein, SPANK, Synamon 


 Shankは、多くの蛋白質と相互作用する2000個以上のアミノ酸からなる巨大な足場蛋白質である。選択的スプライシングによりさまざまな遺伝子産物が得られるが、最も長いものはアンキリンリピート、SH3ドメイン、PDZドメイン、プロリンリッチ配列、SAMドメインからなる。それぞれのドメインが相互作用する蛋白質を持つので、結合蛋白質は多岐にわたる。自閉症との関連が指摘されている。 
 Shankは、多くのタンパク質と相互作用する2000個以上の[[アミノ酸]]からなる巨大な足場タンパク質である。選択的スプライシングによりさまざまな遺伝子産物が得られるが、最も長いものはアンキリンリピート、SH3ドメイン、PDZドメイン、プロリンリッチ配列、SAMドメインからなる。それぞれのドメインが相互作用するタンパク質を持つので、結合タンパク質は多岐にわたる。自閉症との関連が指摘されている。 


== Shankの構造  ==
== Shankの構造  ==
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== Shankの機能  ==
== Shankの機能  ==


 Shankを神経細胞に過剰発現するとスパインの肥大化が起こり、特にShank結合蛋白質であるHomerとの共発現はスパインのを更なる肥大化を引き起こす<ref><pubmed>11498055</pubmed></ref>。 さらに、本来、スパインを持たない抑制性の小脳顆粒細胞にShankを導入すると、 NMDA型やAMPA型のグルタミン酸受容体をもつスパインを形成するようになる<ref><pubmed>15814786</pubmed></ref>。  
 Shankを神経細胞に過剰発現するとスパインの肥大化が起こり、特にShank結合タンパク質であるHomerとの共発現はスパインのを更なる肥大化を引き起こす<ref><pubmed>11498055</pubmed></ref>。 さらに、本来、スパインを持たない抑制性の小脳顆粒細胞にShankを導入すると、 NMDA型やAMPA型のグルタミン酸受容体をもつスパインを形成するようになる<ref><pubmed>15814786</pubmed></ref>。  


 Shank分子間のドメイン間相互作用によりオリゴマーを形成するShankと、両端に2つずつのリガンド結合部位をもつ逆平行4量体を形成するHomerは互いに架橋して、高次のネットワーク構造を形成する。このShankとHomerの高次複合体がシナプス後肥厚の骨格となると考えられる<ref><pubmed>19345194</pubmed></ref> 。
 Shank分子間のドメイン間相互作用によりオリゴマーを形成するShankと、両端に2つずつのリガンド結合部位をもつ逆平行4量体を形成するHomerは互いに架橋して、高次のネットワーク構造を形成する。このShankとHomerの高次複合体がシナプス後肥厚の骨格となると考えられる<ref><pubmed>19345194</pubmed></ref> 。
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== Shankの分子内・分子間相互作用  ==
== Shankの分子内・分子間相互作用  ==


 Shank分子内、あるいはShank分子間の相互作用としては、アンキリンリピートとSH3ドメインが相互作用する<ref><pubmed>15496675</pubmed></ref>ほか、PDZドメインはホモ二量体を<ref name="ref2"><pubmed>12954649</pubmed></ref>、SAMドメインは多量体を<ref name="ref3"><pubmed>16439662</pubmed></ref> 形成する。このPDZドメインによるホモ二量体形成には、PDZドメイン本来の蛋白質結合部位は関与しないので、二量体を形成しても、他のPDZリガンドは結合できる(図2)。一方、結晶化されたSAMドメインは一周6分子の螺旋状ポリマーを形成しており(図3)、更にこの螺旋が側面で会合して、Zn2+イオンに依存性の二次元の広がりをもつシートを形成する。
 Shank分子内、あるいはShank分子間の相互作用としては、アンキリンリピートとSH3ドメインが相互作用する<ref><pubmed>15496675</pubmed></ref>ほか、PDZドメインはホモ二量体を<ref name="ref2"><pubmed>12954649</pubmed></ref>、SAMドメインは多量体を<ref name="ref3"><pubmed>16439662</pubmed></ref> 形成する。このPDZドメインによるホモ二量体形成には、PDZドメイン本来のタンパク質結合部位は関与しないので、二量体を形成しても、他のPDZリガンドは結合できる(図2)。一方、結晶化されたSAMドメインは一周6分子の螺旋状ポリマーを形成しており(図3)、更にこの螺旋が側面で会合して、Zn2+イオンに依存性の二次元の広がりをもつシートを形成する。


 但し、SAMドメインの大きさはShank全長の3%にしか相当しないので、上流の長い配列も含めて大きなポリマーを形成できるかどうかは不明である。  
 但し、SAMドメインの大きさはShank全長の3%にしか相当しないので、上流の長い配列も含めて大きなポリマーを形成できるかどうかは不明である。  
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[[Image:Shank-SAM 2F44.png|thumb|250px|'''図3.Shank SAM ドメインの結晶構造'''<ref name="ref3" />]]
[[Image:Shank-SAM 2F44.png|thumb|250px|'''図3.Shank SAM ドメインの結晶構造'''<ref name="ref3" />]]


== Shankと相互作用する蛋白質 ==
== Shankと相互作用するタンパク質 ==


=== 受容体・膜蛋白質 ===
=== 受容体・膜タンパク質 ===


 いずれも、カルボキシ端がShankのPDZドメインに結合する。
 いずれも、カルボキシ端がShankのPDZドメインに結合する。
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GluR delta 2<ref><pubmed>15207857</pubmed></ref>&nbsp;  
GluR delta 2<ref><pubmed>15207857</pubmed></ref>&nbsp;  


=== シナプス足場蛋白質 ===
=== シナプス足場タンパク質 ===


DLGAP1/GKAP<ref><pubmed>10488079</pubmed></ref>  
DLGAP1/GKAP<ref><pubmed>10488079</pubmed></ref>  
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Sharpin<ref><pubmed>11178875</pubmed></ref>  
Sharpin<ref><pubmed>11178875</pubmed></ref>  


=== 低分子量GTP結合蛋白質を制御する蛋白質 ===
=== 低分子量GTP結合タンパク質を制御するタンパク質 ===


IRSp53  
IRSp53  
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[[Image:3L4F.jpg|thumb|250px|'''図4.Shank PDZ ドメインとbetaPIXとの相互作用'''<ref><pubmed>20117114</pubmed></ref>]]   
[[Image:3L4F.jpg|thumb|250px|'''図4.Shank PDZ ドメインとbetaPIXとの相互作用'''<ref><pubmed>20117114</pubmed></ref>]]   


=== [[アクチン]]結合蛋白質 ===
=== [[アクチン]]結合タンパク質 ===


IRSp53  
IRSp53  
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Spectrin-alpha<ref><pubmed>11509555</pubmed></ref>  
Spectrin-alpha<ref><pubmed>11509555</pubmed></ref>  


=== その他の蛋白質 ===
=== その他のタンパク質 ===


Phospholipse beta 3<ref><pubmed>15632121</pubmed></ref>&nbsp;  
Phospholipse beta 3<ref><pubmed>15632121</pubmed></ref>&nbsp;