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これまでの心理学・生理学における感覚作用に関する知見は、感覚作用の性質は特定な受容器の興奮の性質であり、相互に独立していると考えに基づいている。これを特殊神経エネルギー仮説という。この仮説を前提とすれば、知覚は、感覚を(知覚者の内部過程で)間接的に加工(推論、演繹、統合など)して得られると結論づけられる。この点に関して、 知覚が要素の複合なのか、あるいはある種の構造による体制化なのかという疑問が、経験主義心理学とゲシュタルト心理学の間で議論された。経験主義者は、学習、あるいは連合が知覚の唯一の体制化原理とし、ゲシュタルト理論家は、脳内の自律的な「場の力」が知覚の体制化の原理だと主張した。 | これまでの心理学・生理学における感覚作用に関する知見は、感覚作用の性質は特定な受容器の興奮の性質であり、相互に独立していると考えに基づいている。これを特殊神経エネルギー仮説という。この仮説を前提とすれば、知覚は、感覚を(知覚者の内部過程で)間接的に加工(推論、演繹、統合など)して得られると結論づけられる。この点に関して、 知覚が要素の複合なのか、あるいはある種の構造による体制化なのかという疑問が、経験主義心理学とゲシュタルト心理学の間で議論された。経験主義者は、学習、あるいは連合が知覚の唯一の体制化原理とし、ゲシュタルト理論家は、脳内の自律的な「場の力」が知覚の体制化の原理だと主張した。 | ||
これに対し、J.J. Gibsonは、受容器に特定的な感覚質を想定しない直接的な知覚経験の可能性を主張した | これに対し、J.J. Gibsonは、受容器に特定的な感覚質を想定しない直接的な知覚経験の可能性を主張した(Gibson, 1983)。この理論では、知覚は動物や人が能動的に、見る、聴く、嗅ぐ、味わう、触ることで獲得する(ピックアップする)情報であるとし、諸感覚器官と神経系を基盤とした 知覚システム(基礎定位、聴覚、触覚、味覚−嗅覚、視覚)を構成する。Gibsonによれば、知覚システムへの神経入力は、身体と環境との相互作用によって入力の段階で既に組織されているので(直接知覚)、脳内で改めて連合形成や、記憶照合をする必要がないという。この理論のもう一つの特徴は、各知覚システムが身体−環境システムとして外界を知覚すると主張する点である。例えば、視覚システムについては、「一つの眼球は、既に網膜像を鮮明に調節する水晶体と、光の強度を最適にするための瞳孔を持つ器官であるが、それらは低次のシステムである。この眼球についた筋肉が高次のシステムである。それは内耳の働きによって、動く頭部の中にあっても環境に対して安定しており、環境をスキャンすることができる。二つの眼が一緒に動くとさらに高次な二重のシステムができる。・・・両眼と頭部と身体からなるシステムは、姿勢の平衡や移動とともに動くことで、世界を歩き回り、すべてのものを見ることができる」と述べている。 | ||
古典的な知覚理論に対する同様の批判は、Merleau-Pontyの議論の中にも見ることができる。Merleau-Pontyは、知覚をめぐる古典的な分析が知覚の能動的側面を見失っていると主張し、身体と環境との相互作用が知覚経験の基盤であると強調した。 | 古典的な知覚理論に対する同様の批判は、Merleau-Pontyの議論の中にも見ることができる。Merleau-Pontyは、知覚をめぐる古典的な分析が知覚の能動的側面を見失っていると主張し、身体と環境との相互作用が知覚経験の基盤であると強調した。 |