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[[Image:Kv1.2.png|300px|thumb|right|'''図1. 電位依存性カリウムチャネルの四量体構造(PDB: 2R9R)'''<br>中央にポアドメイン、外側に4つの膜電位センサードメインを持つ。中央紫の球はカリウムイオン。]] | [[Image:Kv1.2.png|300px|thumb|right|'''図1. 電位依存性カリウムチャネルの四量体構造(PDB: 2R9R)'''<br>中央にポアドメイン、外側に4つの膜電位センサードメインを持つ。中央紫の球はカリウムイオン。]] | ||
1950年代に[[Hodgkin]]と[[Huxley]]によって[[wikipedia:ja:イカ|イカ]]の巨大[[軸索]]の[[活動電位]]の発生に関わる膜電位依存性のナトリウムイオンとカリウムイオンの透過性の変化が記載されて以来、電位依存性チャネルのゲーティング機構の解明はイオンチャネル研究のもっとも中心的な課題の一つであり続けている。HodgkinとHuxleyは、カリウムイオンのコンダクタンスに関して、膜電位依存的に動く仮想的な4つのゲート”n”を仮定し、これら4つのnが膜電位依存的に独立に開状態と閉状態を行き来し、4つすべてが開状態になることで初めてカリウムイオンが流れるとした。すなわちカリウムイオン電流がn<sup>4</sup>に比例するというモデル(Hodgkin-Huxley方程式)を考案した<ref><pubmed>12991237</pubmed></ref>。ナトリウムイオン電流には3つの活性化ゲート”m”と一つの不活性化ゲート”h”を仮定し、m3hで表すことができるとした。このHodgkin-Huxley方程式により、イカの巨大軸索の活動電位と、それに伴うカリウムイオンとナトリウムイオンのコンダクタンス変化を正確に再現することができた。膜電位の変化を感知するための機構として、細胞膜を横切って動く電荷”ゲーティングチャージ”の存在が予想された。 | 1950年代に[[wikipedia:ja:アラン・ロイド・ホジキン|Hodgkin]]と[[wikipedia:ja:アンドリュー・フィールディング・ハクスリー|Huxley]]によって[[wikipedia:ja:イカ|イカ]]の巨大[[軸索]]の[[活動電位]]の発生に関わる膜電位依存性のナトリウムイオンとカリウムイオンの透過性の変化が記載されて以来、電位依存性チャネルのゲーティング機構の解明はイオンチャネル研究のもっとも中心的な課題の一つであり続けている。HodgkinとHuxleyは、カリウムイオンのコンダクタンスに関して、膜電位依存的に動く仮想的な4つのゲート”n”を仮定し、これら4つのnが膜電位依存的に独立に開状態と閉状態を行き来し、4つすべてが開状態になることで初めてカリウムイオンが流れるとした。すなわちカリウムイオン電流がn<sup>4</sup>に比例するというモデル(Hodgkin-Huxley方程式)を考案した<ref><pubmed>12991237</pubmed></ref>。ナトリウムイオン電流には3つの活性化ゲート”m”と一つの不活性化ゲート”h”を仮定し、m3hで表すことができるとした。このHodgkin-Huxley方程式により、イカの巨大軸索の活動電位と、それに伴うカリウムイオンとナトリウムイオンのコンダクタンス変化を正確に再現することができた。膜電位の変化を感知するための機構として、細胞膜を横切って動く電荷”ゲーティングチャージ”の存在が予想された。 | ||
70年代に入り、イオン電流に先んじて流れるゲート電流が実際に記録された。80年代に入り、イオンチャネル分子が実際にクローニングされ、その後[[電位依存性カリウムチャネル]]が実際に四量体であることが明らかとなり、Hodgkin-Huxley方程式で記載されたカリウムイオン電流のモデルが、四量体構造に由来するものであることが明確に示された。また四番目の膜貫通セグメント(S4)には3アミノ酸おきに正電荷を持つアミノ酸([[wikipedia:ja:アルギニン|アルギニン]]または[[wikipedia:ja:リジン|リジン]])が配置されていることがわかった。このS4セグメントこそが膜電位センサーであり、アルギニン(リジン)残基が電場内を動く際に生じるのがゲーティング電流であることが明らかになった。 | 70年代に入り、イオン電流に先んじて流れるゲート電流が実際に記録された。80年代に入り、イオンチャネル分子が実際にクローニングされ、その後[[電位依存性カリウムチャネル]]が実際に四量体であることが明らかとなり、Hodgkin-Huxley方程式で記載されたカリウムイオン電流のモデルが、四量体構造に由来するものであることが明確に示された。また四番目の膜貫通セグメント(S4)には3アミノ酸おきに正電荷を持つアミノ酸([[wikipedia:ja:アルギニン|アルギニン]]または[[wikipedia:ja:リジン|リジン]])が配置されていることがわかった。このS4セグメントこそが膜電位センサーであり、アルギニン(リジン)残基が電場内を動く際に生じるのがゲーティング電流であることが明らかになった。 |