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神経幹細胞を含む多くの細胞は'''一次繊毛'''と呼ばれる微小管束によって膜が突出したアンテナ状構造を持つ。一次繊毛は一般的に非運動性で[[wikipedia:jp:ソニック・ヘッジホッグ|hedgehog]][[シグナル伝達|シグナル]]やPDGFシグナルなどの細胞外シグナルや機械刺激に対するセンサーとして働く。[[wikipedia:jp:細胞周期|間期]]の細胞において中心体は基底小体として一次繊毛形成の鋳型となる。繊毛の形成不全は脳の発生過程や機能において様々な障害を引き起こすことが知られている<ref><pubmed>21435552</pubmed></ref>。小脳顆粒細胞や海馬歯状回顆粒細胞の前駆細胞はSonic Hedgehogシグナル依存的な細胞増殖を行うことが知られており、一次繊毛の形成不全を示すIFT88やKif3a欠損マウスにおいてはこれらの細胞数が減少する。'''脈絡叢(choroid plexus)'''上皮細胞の一次繊毛は[[脳脊髄液]]量の調節に関与していると考えられており、繊毛形成の異常は脳脊髄液量の増大と'''[[wikipedia:jp:水頭症|水頭症]]'''を引き起こす。
神経幹細胞を含む多くの細胞は'''一次繊毛'''と呼ばれる微小管束によって膜が突出したアンテナ状構造を持つ。一次繊毛は一般的に非運動性で[[wikipedia:jp:ソニック・ヘッジホッグ|hedgehog]][[シグナル伝達|シグナル]]やPDGFシグナルなどの細胞外シグナルや機械刺激に対するセンサーとして働く。[[wikipedia:jp:細胞周期|間期]]の細胞において中心体は基底小体として一次繊毛形成の鋳型となる。繊毛の形成不全は脳の発生過程や機能において様々な障害を引き起こすことが知られている<ref><pubmed>21435552</pubmed></ref>。小脳顆粒細胞や海馬歯状回顆粒細胞の前駆細胞はSonic Hedgehogシグナル依存的な細胞増殖を行うことが知られており、一次繊毛の形成不全を示すIFT88やKif3a欠損マウスにおいてはこれらの細胞数が減少する。'''脈絡叢(choroid plexus)'''上皮細胞の一次繊毛は[[脳脊髄液]]量の調節に関与していると考えられており、繊毛形成の異常は脳脊髄液量の増大と'''[[wikipedia:jp:水頭症|水頭症]]'''を引き起こす。


また、一部の細胞は一次繊毛から派生した'''二次繊毛(secondary cilia)'''を持つ。二次繊毛を構成する微小管束はダイニン分子と結合し、その滑り運動により繊毛打を発生させる。一次繊毛が1つの細胞にⅠ本なのに対して二次繊毛は細胞種により複数(時には数百本)形成されることがあり、このとき繊毛と同数の基底小体が形成される。脳室壁に存在する[[上衣細胞]]は複数の二次繊毛を脳室面に形成し、その運動により脳室内の脳脊髄液を循環させる。脳脊髄液の流れは細胞外分泌因子の濃度勾配形成にも関与しており、繊毛の機能不全はこのような濃度勾配依存的な神経細胞移動の異常を引き起こすことが報告されている。また、[[嗅覚受容体|嗅覚受容神経細胞]]は嗅覚受容体を局在させた複数の非運動性繊毛を嗅上皮に露出させることでにおい物質を感知する。このため繊毛の形成不全に起因する疾患では嗅覚障害が伴う場合がある。
一部の細胞は一次繊毛から派生した'''二次繊毛(secondary cilia)'''を持つ。二次繊毛を構成する微小管束はダイニン分子と結合し、その滑り運動により繊毛打を発生させる。一次繊毛が1つの細胞にⅠ本なのに対して二次繊毛は細胞種により複数(時には数百本)形成されることがあり、このとき繊毛と同数の基底小体が形成される。脳室壁に存在する[[上衣細胞]]は複数の二次繊毛を脳室面に形成し、その運動により脳室内の脳脊髄液を循環させる。脳脊髄液の流れは細胞外分泌因子の濃度勾配形成にも関与しており、繊毛の機能不全はこのような濃度勾配依存的な神経細胞移動の異常を引き起こすことが報告されている。また、[[嗅覚受容体|嗅覚受容神経細胞]]は嗅覚受容体を局在させた複数の非運動性繊毛を嗅上皮に露出させることでにおい物質を感知する。このため繊毛の形成不全に起因する疾患では嗅覚障害が伴う場合がある。


== 中心体関連遺伝子と神経疾患  ==
== 中心体関連遺伝子と神経疾患  ==
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