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4. 小脳にみられるゾーン構造 | 4. 小脳にみられるゾーン構造 | ||
哺乳類の小脳では、小脳皮質プルキンエ細胞は小脳核へ軸索投射する。小脳皮質は正中線に沿って内側部が虫部、外側部が半球、虫部と半球に挟まれた領域を中間部と前後軸に伸びる帯状の領域に分類される。小脳核は内側より室頂核(内側核)、中位核、歯状核(外側核)と分けられるが、小脳皮質虫部は室頂核へ、中間部は中位核へ、半球部は外側核へ選択的に投射することが明らかになり、小脳は前後軸に広がる3つのゾーンに機能分化することが示唆されていた()。<br> 1960年代に入り、小脳皮質へ登上線維を送り出すオリーブ核の亜領域と、出力先である小脳皮質の亜領域の詳細な検討がなされた。小脳皮質の微小電気刺激によるオリーブ核での逆行性応答のマッピング、そして各種トレーサーによる登上線維マッピングにより、左右の小脳皮質はそれぞれ前後軸に沿って伸びる少なくともA,B,C1,C2,C3,D1,D2の7つのゾーン(longitudinal zones)が存在することが示された()。現在では入力領域のさらなる差別化、そして小脳核への出力パターンを組み合わせることで、A,AX,X, B, A2, C1, CX, C2, C3, D1, D0, | 哺乳類の小脳では、小脳皮質プルキンエ細胞は小脳核へ軸索投射する。小脳皮質は正中線に沿って内側部が虫部、外側部が半球、虫部と半球に挟まれた領域を中間部と前後軸に伸びる帯状の領域に分類される。小脳核は内側より室頂核(内側核)、中位核、歯状核(外側核)と分けられるが、小脳皮質虫部は室頂核へ、中間部は中位核へ、半球部は外側核へ選択的に投射することが明らかになり、小脳は前後軸に広がる3つのゾーンに機能分化することが示唆されていた()。<br> 1960年代に入り、小脳皮質へ登上線維を送り出すオリーブ核の亜領域と、出力先である小脳皮質の亜領域の詳細な検討がなされた。小脳皮質の微小電気刺激によるオリーブ核での逆行性応答のマッピング、そして各種トレーサーによる登上線維マッピングにより、左右の小脳皮質はそれぞれ前後軸に沿って伸びる少なくともA,B,C1,C2,C3,D1,D2の7つのゾーン(longitudinal zones)が存在することが示された()。現在では入力領域のさらなる差別化、そして小脳核への出力パターンを組み合わせることで、A,AX,X, B, A2, C1, CX, C2, C3, D1, D0, D2の12のゾーンが小脳皮質にあると考えられている(Apps and Hawkes 2009)(図3)。これらのゾーン構造のうち、BゾーンやC3ゾーンでは「マイクロゾーン」と呼ばれる100~300μm幅と、通常のゾーン構造の幅(~1mm)より更に細かなゾーン構造が見いだされている()。しかしながら、マイクロゾーンが全てのlongitudinal zoneに存在するかはまだ不明でありこれからの研究が俟たれる。<br> これら神経連絡や電気生理学的方法により同定されたゾーン構造とは別に、小脳では様々な分子の発現が前後軸に沿った帯状パターンを示すことが知られている。もっともよく研究されているのはzebrin II (Aldolase C)の発現パターンで、前後軸に沿ってzebrin II発現プルキンエ細胞によるゾーンと発現しないプルキンエ細胞によるゾーンが交互に並ぶ(Brochu et al 1990)。Zebrin IIの発現パターンとオリーブ核小脳投射の詳細な比較から、ゾーン状の分子発現と解剖学的・生理学的ゾーン構造との対応が解明されてきている(Sugihara and Shinoda 2004, Apps and Hawkes 2009)。また、小脳の発生段階を観察すると、プルキンエ細胞におけるzebrin IIの発現の有無はその細胞の生まれた日と密接に関連していて、ゾーン特異的な神経連絡の形成と関連することが示唆されている(Namba et al 2011)。Zebrin IIの発現で区別される2つのゾーンの機能の違いはまだ明らかになっていない。しかしPLCβ(代謝型グルタミン酸受容体等7回膜貫通型受容体のシグナル伝達に重要)のサブタイプPLCβ3はZebrin II発現プルキンエ細胞に、PLCβ4はzebrin II非発現プルキンエ細胞に特異的に発現することから、zebrin IIで区分される2つのゾーンは異なるシナプス伝達特性を持つ可能性が考えられる(Sarna et al 2006)。<br> | ||
5. 参考文献 | 5. 参考文献 | ||
Apps and Hawkes 2009 PMID=<br>Berghard and Buck 1996 PMID=8558259<br>Haga et al 2010 PMID=20596023<br>Isogai et al 2011 PMID=21937988<br>Jia and Halpern 1996 PMID=<br>Kobayakawa et al 2007 PMID=17989651<br>Krieger et al 1999<br>Miyamichi et al 2005 PMID=15814789<br> | Apps and Hawkes 2009 PMID=19693030<br>Berghard and Buck 1996 PMID=8558259<br>Brochu et al 1990 PMID=2329190<br>Haga et al 2010 PMID=20596023<br>Isogai et al 2011 PMID=21937988<br>Jia and Halpern 1996 PMID=8782871<br>Kobayakawa et al 2007 PMID=17989651<br>Krieger et al 1999 PMID=9988702<br>Miyamichi et al 2005 PMID=15814789<br>Namba et al 2011 PMID=21456012<br>Ressler et al 1993 PMID=7683976<br>Ressler et al 1994 PMID=7528109<br>Sarna et al 2006 PMID=16566000<br>Sugihara and Shinoda 2004 PMID=15470143<br>Vasser et al 1993 PMID=8343958<br>Vasser et al 1994 PMID=8001145<br>Yoshihara et al 1997 PMID=9221781<br>Yoshihara and Mori 1997 PMID=9321710<br><br> | ||
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(執筆者:柏谷英樹、担当編集委員:藤田一郎) | (執筆者:柏谷英樹、担当編集委員:藤田一郎) |
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