「カテコールアミン」の版間の差分

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英:catecholamine 独:Katecholamine, Catecholamine, Brenzcatechinamine 仏:catécholamine
同義語:カテコラミン
 カテコールアミンとは本来[[wikipedia:ja:カテコール|カテコール]]基と[[wikipedia:ja:アミノ基|アミノ基]]をもつ化合物であるが、神経科学においては主に[[神経伝達物質]]として機能する[[ドーパミン]]、[[ノルアドレナリン]](または[[ノルエピネフリン]])、[[アドレナリン]](または[[エピネフリン]])の3つを指す。生合成経路上はドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの順に合成され、各細胞における最終的な産物の決定は合成酵素の有無によって決まる。また[[トランスポーター]]や代謝分解に関わる[[wikipedia:ja:酵素|酵素]]の多くが共通している。このように、機能は異なるものの、共通のタンパク質が代謝に関与している。各物質についてはそれぞれの項(ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン)および[[モノアミン]]の項を参照のこと。ここでは主要な共通する特徴、および補足事項を記す。  
 カテコールアミンとは本来[[wikipedia:ja:カテコール|カテコール]]基と[[wikipedia:ja:アミノ基|アミノ基]]をもつ化合物であるが、神経科学においては主に[[神経伝達物質]]として機能する[[ドーパミン]]、[[ノルアドレナリン]](または[[ノルエピネフリン]])、[[アドレナリン]](または[[エピネフリン]])の3つを指す。生合成経路上はドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの順に合成され、各細胞における最終的な産物の決定は合成酵素の有無によって決まる。また[[トランスポーター]]や代謝分解に関わる[[wikipedia:ja:酵素|酵素]]の多くが共通している。このように、機能は異なるものの、共通のタンパク質が代謝に関与している。各物質についてはそれぞれの項(ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン)および[[モノアミン]]の項を参照のこと。ここでは主要な共通する特徴、および補足事項を記す。  


== 構造 ==
== 構造 ==
[[Image:3CA fig1.jpg|thumb|200px|'''図1.カテコールアミン神経伝達物質''']]  
 
[[Image:3CA fig1.jpg|thumb|200px|<b>図1.カテコールアミン神経伝達物質</b>]]  


 カテコール基およびアミノ基をもつ(図1)。  
 カテコール基およびアミノ基をもつ(図1)。  


== カテコールアミン神経伝達物質に共通する特徴 ==
== カテコールアミン神経伝達物質に共通する特徴 ==
 
=== 合成 ===


===合成===
[[Image:3CA fig2.jpg|thumb|200px|<b>図2.カテコールアミン生合成経路</b>]]  
[[Image:3CA fig2.jpg|thumb|200px|'''図2.カテコールアミン生合成経路''']]  


 生合成経路は図2の通りである。このうち、[[チロシン水酸化酵素]]が[[律速酵素]]とされる。チロシン水酸化酵素(tyrosine hydroxylase (TH)、EC 1.14.16.2)は[[wikipedia:ja:チロシン|チロシン]]より[[L-DOPA]] (L-3,4-dihydroxyphenylalanine)を合成する<ref name="ref1"><pubmed>2575455</pubmed></ref> <ref name="ref2"><pubmed>  15569247  </pubmed></ref> <ref name="ref3"><pubmed> 21176768</pubmed></ref>。反応には、[[テトラヒドロビオプテリン]] (tetrahydrobiopterin), O<sub>2</sub>, Fe<sup>2+</sup>が必要。その活性制御は、主にタンパク質の量と、[[リン酸化]]による。全てのカテコールアミン産生細胞に存在する。
 生合成経路は図2の通りである。このうち、[[チロシン水酸化酵素]]が[[律速酵素]]とされる。チロシン水酸化酵素(tyrosine hydroxylase (TH)、EC 1.14.16.2)は[[wikipedia:ja:チロシン|チロシン]]より[[L-DOPA]] (L-3,4-dihydroxyphenylalanine)を合成する<ref name="ref1"><pubmed>2575455</pubmed></ref> <ref name="ref2"><pubmed>  15569247  </pubmed></ref> <ref name="ref3"><pubmed> 21176768</pubmed></ref>。反応には、[[テトラヒドロビオプテリン]] (tetrahydrobiopterin), O<sub>2</sub>, Fe<sup>2+</sup>が必要。その活性制御は、主にタンパク質の量と、[[リン酸化]]による。全てのカテコールアミン産生細胞に存在する。  


 補因子であるテトラヒドロビオプテリン(tetrahydrobiopterin)は[[wikipedia:ja:GTP|GTP]]より合成される。律速酵素は[[GTPシクロヒドラーゼI]](GTP cyclohydrolase I)である<ref name="ref4"><pubmed> 10727395 </pubmed></ref>。
 補因子であるテトラヒドロビオプテリン(tetrahydrobiopterin)は[[wikipedia:ja:GTP|GTP]]より合成される。律速酵素は[[GTPシクロヒドラーゼI]](GTP cyclohydrolase I)である<ref name="ref4"><pubmed> 10727395 </pubmed></ref>。  


===代謝分解===
=== 代謝分解 ===


 カテコールアミンの代謝分解には次の二つの酵素が重要である。  
 カテコールアミンの代謝分解には次の二つの酵素が重要である。  


*'''[[モノアミン酸化酵素]](monoamine oxidase, MAO):'''MAOはモノアミンのアミノ基を[[wikipedia:ja:アルデヒド|アルデヒド]]基に[[wikipedia:ja:酸化|酸化]]する。MAOは[[ミトコンドリア]]外膜に局在し、細胞内のドーパミンおよびノルアドレナリン(再取込みされたものを含む)の分解に関与する。MAOには[[MAO-A]]と[[MAO-B]]があり、二つの別の遺伝子によりコードされている。[[MAO-A]]と[[MAO-B]]はモノアミン作動性神経細胞および[[グリア細胞]]に発現しているが、発現量は細胞の種類により異なり、また動物種によっても違いが見られる<ref name="ref5"><pubmed> 16552415</pubmed></ref><ref name="ref6"><pubmed> 11793338</pubmed></ref>。  
*'''[[モノアミン酸化酵素]](monoamine oxidase, MAO):'''MAOはモノアミンのアミノ基を[[wikipedia:ja:アルデヒド|アルデヒド]]基に[[wikipedia:ja:酸化|酸化]]する。MAOは[[ミトコンドリア]]外膜に局在し、細胞内のドーパミンおよびノルアドレナリン(再取込みされたものを含む)の分解に関与する。MAOには[[MAO-A]]と[[MAO-B]]があり、二つの別の遺伝子によりコードされている。[[MAO-A]]と[[MAO-B]]はモノアミン作動性神経細胞および[[グリア細胞]]に発現しているが、発現量は細胞の種類により異なり、また動物種によっても違いが見られる<ref name="ref5"><pubmed> 16552415</pubmed></ref><ref name="ref6"><pubmed> 11793338</pubmed></ref>。


*'''[[カテコール-O-メチル基転移酵素|カテコール-''O''-メチル基転移酵素]](catechol-''O''-methyltransferase, COMT):'''COMTはカテコール基の[[wikipedia:ja:メタ|メタ]]位の[[wikipedia:ja:水酸基|水酸基]]に[[メチル基]]を転移させる。[[wikipedia:ja:腎臓|腎臓]]や[[wikipedia:ja:肝臓|肝臓]]に豊富だが、カテコールアミン作動性神経細胞の投射先においても発現している。細胞外で働くと考えられている<ref name="ref7"><pubmed> 21846718 </pubmed></ref>。
*'''[[カテコール-O-メチル基転移酵素|カテコール-''O''-メチル基転移酵素]](catechol-''O''-methyltransferase, COMT):'''COMTはカテコール基の[[wikipedia:ja:メタ|メタ]]位の[[wikipedia:ja:水酸基|水酸基]]に[[メチル基]]を転移させる。[[wikipedia:ja:腎臓|腎臓]]や[[wikipedia:ja:肝臓|肝臓]]に豊富だが、カテコールアミン作動性神経細胞の投射先においても発現している。細胞外で働くと考えられている<ref name="ref7"><pubmed> 21846718 </pubmed></ref>。


==関連項目==
== 関連項目 ==
*[[モノアミン]]
 
*[[モノアミン系]]
*[[モノアミン]]  
*[[モノアミン仮説]]
*[[モノアミン系]]  
*[[ドーパミン]]
*[[モノアミン仮説]]  
*[[ノルアドレナリン]]
*[[ドーパミン]]  
*[[ノルアドレナリン]]  
*[[アドレナリン]]
*[[アドレナリン]]


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
 
<references />


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(執筆者:徳岡宏文、一瀬宏 担当編集者:尾藤晴彦)
<br> (執筆者:徳岡宏文、一瀬宏 担当編集者:尾藤晴彦)

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