「血管性認知症」の版間の差分

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 表1は最も汎用されているNINDS-AIREN(National Institute of Neurological Disorders and Stroke and Association Internationale pur la Rechrche et l’Enseignement en Neurosciences)診断基準である。本診断基準は臨床試験に用いることを目的として作成されたものであり、最も厳密な基準である。診断の特異度は高いが、感度が低くなる欠点がある。  
 表1は最も汎用されているNINDS-AIREN(National Institute of Neurological Disorders and Stroke and Association Internationale pur la Rechrche et l’Enseignement en Neurosciences)診断基準である。本診断基準は臨床試験に用いることを目的として作成されたものであり、最も厳密な基準である。診断の特異度は高いが、感度が低くなる欠点がある。  
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{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" style="width: 949px; height: 494px;"
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| A. 認知症  
| A. 認知症  
a) 記憶障害と,次の認知機能のうち2つ以上の障害がある.見当識,注意力,言語,視覚空間機能,行動機能,運動統御,行為。<br> b) 臨床的診察と神経心理学的検査の両方で確認することが望ましい。 <br> c) 機能障害は,日常生活に支障をきたすほど重症である.しかし,これは脳卒中に基づく身体障害によるものを除く。 <br>  
a) 記憶障害と,次の認知機能のうち2つ以上の障害がある.見当識,注意力,言語,視覚空間機能,行動機能,運動統御,行為。<br> b) 臨床的診察と神経心理学的検査の両方で確認することが望ましい。 <br> c) 機能障害は,日常生活に支障をきたすほど重症である.しかし,これは脳卒中に基づく身体障害によるものを除く。 <br> 【除外基準】<br> a) 神経心理検査を妨げる意識障害,せん妄,精神病,重症失語,著明な感覚運動障害がない<br> b) 記憶や認知機能を障害する全身性疾患や他の脳疾患がない<br>  
 
【除外基準】<br> a) 神経心理検査を妨げる意識障害,せん妄,精神病,重症失語,著明な感覚運動障害がない<br> b) 記憶や認知機能を障害する全身性疾患や他の脳疾患がない<br>  


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 本診断基準では血管性認知症を以下の6型に分類している(表2)。多発梗塞性認知症は血管性認知症の亜型であり、わが国では認知症を伴う脳小血管病が最も多く約半数を占め、多発梗塞性認知症は2-3割を占める。NINDS-AIREN診断基準の作成委員会メンバーのひとりであったErkinjunti Tは血管性認知症の比較的多数を占め、均質な徴候を呈する皮質下血管性認知症に焦点をあて、画像所見を含めた詳細な診断基準を提唱している(表3)。  
 本診断基準では血管性認知症を以下の6型に分類している(表2)。多発梗塞性認知症は血管性認知症の亜型であり、わが国では認知症を伴う脳小血管病が最も多く約半数を占め、多発梗塞性認知症は2-3割を占める。NINDS-AIREN診断基準の作成委員会メンバーのひとりであったErkinjunti Tは血管性認知症の比較的多数を占め、均質な徴候を呈する皮質下血管性認知症に焦点をあて、画像所見を含めた詳細な診断基準を提唱している(表3)。  


表2
{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" style="width: 372px; height: 266px;"
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| 1. 多発梗塞性認知症
  皮質・皮質下領域に大きな完全梗塞が多発するもの。
 
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| 2. Strategic single-infarct dementia<br>
A.皮質領域<br>  角回<br>  前大脳動脈領域<br>  中大脳動脈領域<br>  後大脳動脈領域<br>B. 皮質下領域<br>  視床<br>  前脳基底部
 
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| 3. 認知症を伴う脳小血管病
A. 皮質下領域 多発ラクナ梗塞 Binswanger病<br>B. 皮質領域 脳アミロイド血管症
 
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| 4. 低灌流によるもの
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| 5. 出血性認知症
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| 6. その他の機序によるもの
|}
 
'''表2:血管性認知症の分類(NINDS-AIREN診断基準)'''
 
{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" style="width: 866px; height: 529px;"
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| style="background-color:#dfd" | I. 次のすべてを満たす
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| 1. 認知機能障害として以下の両者
A. 遂行機能障害<br>B. 記銘力障害(おそらく軽度)
 
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| 2.脳血管障害として以下の両者
A. 支持的な神経画像所見<br> 1)CTによる基準<br>   脳脊髄液と正常白質の中間密度の脳室周囲または深部白質病変で、半卵円中心に伸びる境界不鮮明なもの+最低ひとつのラクナ梗塞。<br> 2)MRIによる基準<br>
 
*主に白質病変によるもの(Binswanger type)<br>幅10 mm以上のPVH、幅25mmを超える融合性の深部白質病変、広汎白質病変+深部灰白質のラクナ梗塞
*主にラクナ梗塞によるもの(Lacunar state type)<br>深部灰白質の多発(たとえば5個以上)ラクナ梗塞+中等度以上の白質病変<br>
 
B. 皮質下血管病変を支持する神経徴候の存在、または既往


表3
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| style="background-color:#dfd" | II. 診断を支持する所見
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| 1. 上位運動ニューロン障害のエピソード
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| 2. 早期からの歩行障害の存在
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| 3. ふらつきや原因不明の頻繁な意識消失
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| 4. 早期からの頻尿、尿意促迫、その他の泌尿器症状
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| 5. 構音障害、嚥下障害、錐体外路症状
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| 6. 行動症状、心理症状
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| style="background-color:#dfd" | III. 診断を支持しないあるいは否定する特徴
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| 1. 記憶障害や他の認知機能障害の早期からの発症、あるいは進行性の悪化
|-
| 2. CTやMRIで脳血管障害がない。
|}
 
'''表3:皮質下血管性認知症の臨床診断基準'''<ref name="ref3"><pubmed>10961414</pubmed></ref>
 
{| width="200" cellspacing="1" cellpadding="1" border="1"
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表4
'''表4:DSM-Ⅳによる血管性認知症の診断基準'''


== 血管性認知症の病態  ==
== 血管性認知症の病態  ==

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