「前頭眼窩野」の版間の差分

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前頭眼窩野の損傷患者ではうつ病になるリスクが高いことが知られているが、うつ病はこの脳部位がもつ情動・動機づけ制御機能が適切に働かないことと関係していると考えられる。うつ病患者ではこの脳部位の体積が減少していることが知られている。一方、安静時の脳代謝や脳血流量を調べると、この脳部位の活動がうつ病患者では増加していること、適切な治療がされるとこの増加がなくなることが示されている。この活動の増加は、うつ病患者がくよくよ考えることに関係しているとも考えられる。  情動・動機づけ制御機能に障害が考えられるものに「社会病質」Psychopathyもある。これは他人の痛みを感じることがなく、他者に暴力的な反応をしても罪の意識を感じず、同じ犯罪を繰り返し行う行動傾向を指す。社会病質者では、前頭眼窩野の活動性が(うつ病)と違って低いが、この脳部位の損傷で社会病質者になるという報告はない。社会病質者の多くには扁桃核に障害があり、その結果として前頭眼窩野の働きに障害が出ると考えらえている。  前頭眼窩野の情動・動機づけ機能は神経伝達物質のドーパミン,セロトニン、ノルエピネフリン,GABA(ガンマアミノ酪酸)などによって支えられている。その中でセロトニンはこの脳部位の情動機能を支えるのに最も重要な神経伝達物質である。PET研究によると、うつ病は前頭眼窩野のセロトニンの働きの異常が関係していると考えられる。うつ病治療に用いられる薬物の多くは前頭眼窩野のセロトニンの働きを高めるように作用する。 トリプトファン(たんぱく質に含まれるアミノ酸)はセロトニンの前駆物質であるが、このトリプトファン成分だけ除去した食事を実験的に続けると、回復していたうつ症状がぶり返す場合があることが知られている。健常人にトリプトファンを除去した食事をしてもらうと、前頭眼窩野の損傷患者で見られるように、攻撃的傾向が増したり、逆転学習の障害が見られたりする。サルにおいてセロトニンを神経伝達物質とするニューロンは、長期の報酬予測の制御に関係していることも知られている。人では、実験的にトリプトファンを欠乏させると短期的思考が多くなり、過剰にすると長期予測の割合が増すという報告もある。うつ病患者では、特に前頭眼窩野の脳内セロトニン低下により長期予測機能が低下しており、結果として目先のことしか考えられないという短期的思考になり、将来に希望が持てなくなるという仮説も提示されている。  
前頭眼窩野の損傷患者ではうつ病になるリスクが高いことが知られているが、うつ病はこの脳部位がもつ情動・動機づけ制御機能が適切に働かないことと関係していると考えられる。うつ病患者ではこの脳部位の体積が減少していることが知られている。一方、安静時の脳代謝や脳血流量を調べると、この脳部位の活動がうつ病患者では増加していること、適切な治療がされるとこの増加がなくなることが示されている。この活動の増加は、うつ病患者がくよくよ考えることに関係しているとも考えられる。  情動・動機づけ制御機能に障害が考えられるものに「社会病質」Psychopathyもある。これは他人の痛みを感じることがなく、他者に暴力的な反応をしても罪の意識を感じず、同じ犯罪を繰り返し行う行動傾向を指す。社会病質者では、前頭眼窩野の活動性が(うつ病)と違って低いが、この脳部位の損傷で社会病質者になるという報告はない。社会病質者の多くには扁桃核に障害があり、その結果として前頭眼窩野の働きに障害が出ると考えらえている。  前頭眼窩野の情動・動機づけ機能は神経伝達物質のドーパミン,セロトニン、ノルエピネフリン,GABA(ガンマアミノ酪酸)などによって支えられている。その中でセロトニンはこの脳部位の情動機能を支えるのに最も重要な神経伝達物質である。PET研究によると、うつ病は前頭眼窩野のセロトニンの働きの異常が関係していると考えられる。うつ病治療に用いられる薬物の多くは前頭眼窩野のセロトニンの働きを高めるように作用する。 トリプトファン(たんぱく質に含まれるアミノ酸)はセロトニンの前駆物質であるが、このトリプトファン成分だけ除去した食事を実験的に続けると、回復していたうつ症状がぶり返す場合があることが知られている。健常人にトリプトファンを除去した食事をしてもらうと、前頭眼窩野の損傷患者で見られるように、攻撃的傾向が増したり、逆転学習の障害が見られたりする。サルにおいてセロトニンを神経伝達物質とするニューロンは、長期の報酬予測の制御に関係していることも知られている。人では、実験的にトリプトファンを欠乏させると短期的思考が多くなり、過剰にすると長期予測の割合が増すという報告もある。うつ病患者では、特に前頭眼窩野の脳内セロトニン低下により長期予測機能が低下しており、結果として目先のことしか考えられないという短期的思考になり、将来に希望が持てなくなるという仮説も提示されている。  
References
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文献 1)Lhermitte F. 'Utilization behaviour' and its relation to lesions of the frontal lobes. Brain 1983, 106:237-255.  
文献 1)Lhermitte F. 'Utilization behaviour' and its relation to lesions of the frontal lobes. Brain 1983, 106:237-255.  
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