「小脳によるタイミング制御」の版間の差分

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1. 臨床で用いられるタイミング制御の課題
1. タイミング制御に関係する課題


&nbsp; 一般的に、小脳が障害されると運動の速度が遅くなるとともに運動のリズムが不正確になる 。運動のタイミングに関して、以下のような検査が臨床で用いられている [1]。代表的な小脳症状に反復性拮抗不全(Adiadochokinesis)がある(図 1A)。これは例えば、手のひらをくるくる回すなどの主動筋と拮抗筋を交互に活動させる動作を行う時に、滑らかな一定のリズムで動かすことができないという症状であり、リズム形成の障害と考えられる。タッピング課題(図1B)は、音や光の点滅による指示に従って一定のリズムでボタンを押し、指示が消えた後もそのリズムでボタン押しを続けられるかを調べるものである。健常者は指示されたリズムでボタン押しを続けることができるが、小脳疾患の患者はボタン押しのタイミングにばらつきが生じることが知られている。時間長弁別課題(図1C)は、持続の長さの異なる2種類の音を間隔をおいて提示し、その持続時間の違いを問う課題であり、小脳の認知機能を調べるものである。音声言語医学の分野では、小脳症状の検査として、Voice Onset Time (VOT)の生成と認識の課題が利用される(図1D)。「バ」と「パ」等の無声破裂音と有声破裂音では、第一フォルマントの立ち上がりのタイミングに数十ミリ秒の違いしかない。その発音には構音筋の微妙な協調運動を必要するため、小脳疾患の患者では発音を仕分けるのが困難になる。またその聞き分けは、時間長弁別課題と同様に小脳の認知機能に関係する。  
&nbsp; 一般的に、小脳が障害されると運動の速度が遅くなるとともに運動のリズムが不正確になる 。運動のタイミングに関して、以下のような検査法が知られている [1]。代表的な小脳症状に反復性拮抗不全(Adiadochokinesis)がある(図 1A)。これは例えば、手のひらをくるくる回すなどの主動筋と拮抗筋を交互に活動させる動作を行う時に、滑らかな一定のリズムで動かすことができないという症状であり、リズム形成の障害と考えられる。タッピング課題(図1B)は、音や光の点滅による指示に従って一定のリズムでボタンを押し、指示が消えた後もそのリズムでボタン押しを続けられるかを調べるものである。健常者は指示されたリズムでボタン押しを続けることができるが、小脳疾患の患者はボタン押しのタイミングにばらつきが生じることが知られている。時間長弁別課題(図1C)は、持続の長さの異なる2種類の音を間隔をおいて提示し、その持続時間の違いを問う課題であり、小脳の認知機能を調べるものである。音声言語医学の分野では、小脳症状の検査として、Voice Onset Time (VOT)の生成と認識の課題が利用される(図1D)。「バ」と「パ」等の無声破裂音と有声破裂音では、第一フォルマントの立ち上がりのタイミングに数十ミリ秒の違いしかない。その発音には構音筋の微妙な協調運動を必要するため、小脳疾患の患者では発音を仕分けるのが困難になる。またその聞き分けは、時間長弁別課題と同様に小脳の認知機能に関係する。  


[[Image:Yamazaki_Nagao_図1rev.jpg|図 1. 小脳によるタイミング制御を調べるのに用いられる課題。(A) 回内・回外運動課題、(B) タッピング課題、(C) 時間長弁別課題、(D) Voice Onset Time (VOT)。]]<br>
[[Image:Yamazaki Nagao 図1rev.jpg|図 1. 小脳によるタイミング制御を調べるのに用いられる課題。(A) 回内・回外運動課題、(B) タッピング課題、(C) 時間長弁別課題、(D) Voice Onset Time (VOT)。]]<br>


2. 遅延型瞬目反射の条件付け  
2. 遅延型瞬目反射の条件付け  
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