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温情効果のほかに、“自分の評判を良くしようという動機”も利他的行動を促すことが知られている。つまり自分をいい人だと思ってもらいたいから(悪い人だと思われたくないから)寄付をするというような場合である。実際に他者に見られている場合などの匿名性が低い状況では利他的行動の頻度が増えることが多くの社会心理学・実験経済学の研究で報告されている<ref name=ref4><pubmed>22285602</pubmed></ref>。fMRI研究においては、他者から見られている状況で寄付をする場合と誰にも見られていない状況で寄付をする場合とを比較すると、見られている場合に線条体がより活動することが報告されており<ref name=ref5><pubmed>19320552</pubmed></ref>、良い評判という社会的報酬が線条体で処理されていることを示している。 | 温情効果のほかに、“自分の評判を良くしようという動機”も利他的行動を促すことが知られている。つまり自分をいい人だと思ってもらいたいから(悪い人だと思われたくないから)寄付をするというような場合である。実際に他者に見られている場合などの匿名性が低い状況では利他的行動の頻度が増えることが多くの社会心理学・実験経済学の研究で報告されている<ref name=ref4><pubmed>22285602</pubmed></ref>。fMRI研究においては、他者から見られている状況で寄付をする場合と誰にも見られていない状況で寄付をする場合とを比較すると、見られている場合に線条体がより活動することが報告されており<ref name=ref5><pubmed>19320552</pubmed></ref>、良い評判という社会的報酬が線条体で処理されていることを示している。 | ||
他にも利他的行動を促すメカニズムとして“共感”があげられる<ref name=ref6>'''Batson, C. D.'''<br>The altruism question: Toward a social-psychological answer.<br> | 他にも利他的行動を促すメカニズムとして“共感”があげられる<ref name=ref6>'''Batson, C. D.'''<br>The altruism question: Toward a social-psychological answer.<br>Hillsdale, NJ: ''Erlbaum.'', 1991.</ref>。困っている他者を見てその他者の痛みをあたかも自分の痛みのように感じ、助けてあげたいと思うような場合である。Heinら<ref name=ref7><pubmed>20920798</pubmed></ref>はこの共感に基づいた利他的行動の神経基盤をfMRIを用いて検討し、他者が痛みを受けているのを見た時に左島皮質の活動が高い個人ほど後にその他者を助けるということを報告している。この左島皮質は自分が痛みを受けた場合にも活動を示すことから、他人の痛みをどれだけ自分の痛みとして感じられるかが利他的行動に影響し、特に左島皮質が共感に基づく利他的行動において重要な役割を果たすことを示している。 | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
<references /> | <references /> | ||
(執筆者:出馬圭世 担当編集者:定藤規弘) | (執筆者:出馬圭世 担当編集者:定藤規弘) |