「受容野」の版間の差分

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=== 聴覚空間受容野の生成  ===
=== 聴覚空間受容野の生成  ===


 音信号は、末梢受容器官である内耳蝸牛の有毛細胞により電気信号に変換されたのち、蝸牛神経により延髄の蝸牛神経核へと送られる。有毛細胞は特定の音周波数に選択的に応答するが、空間内のいずれの方向からやってくる音にたいしても応答する。蝸牛神経繊維や蝸牛神経核の細胞も、有毛細胞と同様、周波数に鋭い選択性を示すが、音の空間位置に選択性は示さない。すなわち、視覚や体性感覚の場合と異なり、聴覚系の初期段階の細胞は、定まった空間受容野をもっていない。  
 音信号は、末梢受容器官である内耳蝸牛の有毛細胞により電気信号に変換されたのち、蝸牛神経により延髄の蝸牛神経核へと送られる。有毛細胞は特定の音周波数に選択的に応答するが、空間内のいずれの方向からやってくる音にたいしても応答する。蝸牛神経繊維や蝸牛神経核の細胞も、有毛細胞と同様、周波数に鋭い選択性を示すが、音の空間位置に選択性は示さない。すなわち、視覚や体性感覚の場合と異なり、聴覚系の初期段階の細胞は、定まった空間受容野をもっていない。    


 蝸牛神経核で処理された音信号は、一般的には、脳幹の上オリーブ複合体、外側毛帯核を経て中脳の下丘へと伝達され、その後、視床内側膝状体を経て大脳皮質一次聴覚野へと伝達される。この経路において左右の耳からの信号は次第に統合されていく。この統合された信号をもとに、細胞は特定の空間範囲からくる音だけに選択的に応答する空間受容野特性を獲得する。この受容野特性は、動物が音源の位置を特定する能力、すなわち、音源定位の神経基盤をなすものと考えられている。  
 蝸牛神経核で処理された音信号は、一般的には、脳幹の上オリーブ複合体、外側毛帯核を経て中脳の下丘へと伝達され、その後、視床内側膝状体を経て大脳皮質一次聴覚野へと伝達される。この経路において左右の耳からの信号は次第に統合されていく。この統合された信号をもとに、細胞は特定の空間範囲からくる音だけに選択的に応答する空間受容野特性を獲得する。この受容野特性は、動物が音源の位置を特定する能力、すなわち、音源定位の神経基盤をなすものと考えられている。    


 顔の正面から水平方向にずれた位置からくる音は、左右の耳に違うタイミングや強度差を伴って届くため、この両耳時間差や両耳強度差は音源位置の手がかりとなる。両耳からの音信号がはじめて収斂する上オリーブ複合体には、この両耳時間差や両耳強度差に選択的に応答する細胞が現れる。これらの細胞は、上オリーブ複合体の異なる部位(前者は内側核、後者は外側核)に分かれて存在しているが、これらの細胞からの入力が収斂する下丘では、多くの細胞が両耳時間差と両耳強度差の両方に選択性をもち、空間位置に強い選択性を示すようになる。大脳皮質聴覚野でも、このような空間受容野をもつ細胞が確認されている。  
 顔の正面から水平方向にずれた位置からくる音は、左右の耳に違うタイミングや強度差を伴って届くため、この両耳時間差や両耳強度差は音源位置の手がかりとなる。両耳からの音信号がはじめて収斂する上オリーブ複合体には、この両耳時間差や両耳強度差に選択的に応答する細胞が現れる。これらの細胞は、上オリーブ複合体の異なる部位(前者は内側核、後者は外側核)に分かれて存在しているが、これらの細胞からの入力が収斂する下丘では、多くの細胞が両耳時間差と両耳強度差の両方に選択性をもち、空間位置に強い選択性を示すようになる。大脳皮質聴覚野でも、このような空間受容野をもつ細胞が確認されている。  
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=== メンフクロウ聴覚受容野  ===
=== メンフクロウ聴覚受容野  ===


 メンフクロウは左右で異なった構造の耳をもつため、顔の正面から上下方向にずれた位置からくる音には、左右の耳で大きな強度差が生じる。このため、この動物では、両耳強度差は音の垂直位置の手がかりなる。音の水平位置は両耳時間差が手がかりとなる。両耳時間差と両耳強度差は、それぞれ、層状核、外側毛帯核後核という異なる場所で並列に検出されるが、これらの情報が統合された信号を受け取る下丘外側核では、個々の細胞が水平と垂直方向の特定の組み合わせからくる信号にのみ反応する。その空間受容野は、網膜神経節細胞の中心周辺拮抗型受容野のように、細胞に興奮を引き起こす領域とそれを取り囲む抑制性の周辺領域からなっている。さらに、このような受容野をもつ細胞は、受容野の位置にしたがって2次元的に秩序正しく配置しており、外界の空間を再現した聴覚地図を構成している。
 メンフクロウは左右で異なった構造の耳をもつため、顔の正面から上下方向にずれた位置からくる音には、左右の耳で大きな強度差が生じる。このため、この動物では両耳強度差は音の垂直位置の手がかりなる。音の水平位置は両耳時間差が手がかりとなる。両耳時間差と両耳強度差は、それぞれ、層状核、外側毛帯核後核という異なる場所で並列に検出されるが、これらの情報が統合された信号を受け取る下丘外側核では、個々の細胞が水平と垂直方向の特定の組み合わせからくる信号にのみ反応する。その空間受容野は、網膜神経節細胞の中心周辺拮抗型受容野のように、細胞に興奮を引き起こす領域とそれを取り囲む抑制性の周辺領域からなっている。さらに、このような受容野をもつ細胞は、受容野の位置にしたがって2次元的に秩序正しく配置しており、外界の空間を再現した聴覚地図を構成している。


== 関連項目  ==
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