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Takumitsutsui (トーク | 投稿記録) 編集の要約なし |
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症状は再体験、回避・精神麻痺、過覚醒の3つの症状クラスターに大別される。再体験にはフラッシュバック、悪夢、身体生理反応など、回避には記憶を想起させる場所、物事、状況への回避、感情麻痺など、過覚醒には睡眠障害、集中困難、物音などへの過敏反応などが含まれる。DSM‐Ⅳ‐TRに示される再体験症状1項目以上、回避症状3項目以上、過覚醒症状2項目以上が1ヶ月以上持続し、著しい苦痛か社会的な機能の障害を伴うとPTSDと診断される。 | 症状は再体験、回避・精神麻痺、過覚醒の3つの症状クラスターに大別される。再体験にはフラッシュバック、悪夢、身体生理反応など、回避には記憶を想起させる場所、物事、状況への回避、感情麻痺など、過覚醒には睡眠障害、集中困難、物音などへの過敏反応などが含まれる。DSM‐Ⅳ‐TRに示される再体験症状1項目以上、回避症状3項目以上、過覚醒症状2項目以上が1ヶ月以上持続し、著しい苦痛か社会的な機能の障害を伴うとPTSDと診断される。 | ||
<br>1860年から80年にかけてイギリスのエリクソンは鉄道事故後の精神神経症状に鉄道脊髄症として、器質的な原因による障害として報告した。ドイツのオッペンハイムも同様に器質的原因を想定した報告を1889年に行った。その一方で1885年にイギリスのペイジは症状は心理的原因によるものと反論している。1915年にマイヤースによりshell shockと名付けられた症状は、第一次世界大戦に従軍した兵士2000人以上を対象とした研究の結果、最終的に心理的原因と結論付けられた。こうして、器質的原因から心理的原因が想定されるようになった。<br> <br> 心理的原因とされるに従い、症状は疾病利得により生じると考えられるようになった。1879年にリグラーにより賠償神経症という用語が提唱され、ドイツ、イギリスでも詐病説が強まる結果となった。<br> | <br>1860年から80年にかけてイギリスのエリクソンは鉄道事故後の精神神経症状に鉄道脊髄症として、器質的な原因による障害として報告した。ドイツのオッペンハイムも同様に器質的原因を想定した報告を1889年に行った。その一方で1885年にイギリスのペイジは症状は心理的原因によるものと反論している。1915年にマイヤースによりshell shockと名付けられた症状は、第一次世界大戦に従軍した兵士2000人以上を対象とした研究の結果、最終的に心理的原因と結論付けられた。こうして、器質的原因から心理的原因が想定されるようになった。<br> <br> 心理的原因とされるに従い、症状は疾病利得により生じると考えられるようになった。1879年にリグラーにより賠償神経症という用語が提唱され、ドイツ、イギリスでも詐病説が強まる結果となった。<br> | ||
== 症状と診断 == | == 症状と診断 == | ||
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=== 症状評価方法 === | === 症状評価方法 === | ||
<pre>===症状評価方法===</pre> | <pre>===症状評価方法===</pre> | ||
| 症状評価方法は自記式質問紙法と構造化面接法に大別される。一般に質問紙法は簡便であるが診断精度は構造化面接に劣るとされ、状況に応じた使用が求められる。 | ||
==== 自記式質問紙法 ==== | ==== 自記式質問紙法 ==== | ||
<pre>====自記式質問紙法====</pre> | <pre>====自記式質問紙法====</pre> | ||
1.Impact of Event Scale-Revised (IES-R) :改訂出来事インパクト尺度<br> Horowitsにより開発された出来事インパクト尺度をWeissらが改訂し作成した<ref>'''Weiss DS、Marmar CR'''<br>The Impact of Event Scale-revised<br>''Assessing Psychological Trauma and OTSD (2nd edition)'':168-189,2004</ref> | 1.Impact of Event Scale-Revised (IES-R) :改訂出来事インパクト尺度<br> Horowitsにより開発された出来事インパクト尺度をWeissらが改訂し作成した<ref>'''Weiss DS、Marmar CR'''<br>The Impact of Event Scale-revised<br>''Assessing Psychological Trauma and OTSD (2nd edition)'':168-189,2004</ref>自記式質問紙で、世界的に広く用いられている。最近1週間の22項目の症状についてその強度を0-4点で評価し、24/25点をカットオフ値とする。飛鳥井らによって日本語版が作成され、信頼性と妥当性が検証されている<ref><pubmed>11923652</ref>。 | ||
2.The PTSD checkkist (PCL) :PTSDチェックリスト | 2.The PTSD checkkist (PCL) :PTSDチェックリスト | ||
PCLはDSM-Ⅳの17症状により構成された自記式質問紙である。従軍経験でのトラウマ体験へはPTSDchecklist - military version (PCL-M)、特定されていない市民生活でのトラウマ体験へはPTSD checklist - civirian version (PCL-C)、既に確定している特定のトラウマ体験へは PTSDchecklist - specific version (PCL-S)を用いる。最近1か月の17症状についてその強度を1-5点で評価し49/50点をカットオフ値とする。(引用の仕方がわからない。ISTSSからリンク可能) | |||
3.Posttraumatic Symptom Scale (PTS-10) :外傷後症状尺度 | 3.Posttraumatic Symptom Scale (PTS-10) :外傷後症状尺度 | ||
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Weisaethにより開発された尺度<ref><pubmed>2624136</ref>で、10項目の症状の有無を評価する。 | Weisaethにより開発された尺度<ref><pubmed>2624136</ref>で、10項目の症状の有無を評価する。 | ||
==== 構造化面接法 ==== | ==== 構造化面接法 ==== | ||
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2.Structured Clinical Interview for DSM-Ⅳ(SCID) : DSM-Ⅳのための構造化臨床面接 | 2.Structured Clinical Interview for DSM-Ⅳ(SCID) : DSM-Ⅳのための構造化臨床面接 | ||
2010年に高橋らによって日本語版が作成されている。SCIDはDSM- | 2010年に高橋らによって日本語版が作成されている。SCIDはDSM-Ⅳの17症状の有無のみを問う形式であり、<u>評価者間のぶれが生じる可能性がある</u>。 | ||
(飛鳥井先生へ:筆者の許可が必要か?) | (飛鳥井先生へ:筆者の許可が必要か?) | ||
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3.MINI International Neuropsychiatric Interview (M.I.N.I) :精神疾患簡易構造化面接法 | 3.MINI International Neuropsychiatric Interview (M.I.N.I) :精神疾患簡易構造化面接法 | ||
sheehanらによって開発された短時間で施行可能なスクリーニングより包括的な構造化面接である。大坪らが日本語版を作成している。症状項目の有無のみを問う形式であり、<u>評価者間でのぶれが生じる可能性がある。 </u> | |||
(飛鳥井先生へ:筆者の許可が必要か?) | (飛鳥井先生へ:筆者の許可が必要か?) | ||
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<br> | == 疫学 == | ||
<pre>==疫学==</pre> | |||
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<br> | === 原因による発生率の違い === | ||
<pre>===原因による発生率の違い===</pre> | |||
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== | === resilience === | ||
<pre> | <pre>===resilience===</pre> | ||
=== === | |||
< | === 併存障害 === | ||
<pre>===併存障害===</pre> | |||
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== 病態メカニズム == | == 病態メカニズム == | ||
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PTSDに対して、これまでさまざまな治療法が試みられてきた。ランダム化比較試験で有効性を証明された治療法は認知行動療法、眼球運動による脱感作と最処理法(Eye Movement Desensitization and Reprocessing: EMDR)、抗うつ薬による治療である。2005年の英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence: NICE)のガイドライン(参考文献:NICE)では、トラウマ焦点化心理療法(トラウマ焦点化認知行動療法とEMDR)を第一選択とし、薬物療法はトラウマ焦点化心理療法を拒否する時かトラウマ体験の影響で試行できない時、トラウマ焦点化心理療法で十分な効果が得られない時、うつ病などの合併症の強化療法時などに限定して推奨されている。 | PTSDに対して、これまでさまざまな治療法が試みられてきた。ランダム化比較試験で有効性を証明された治療法は認知行動療法、眼球運動による脱感作と最処理法(Eye Movement Desensitization and Reprocessing: EMDR)、抗うつ薬による治療である。2005年の英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence: NICE)のガイドライン(参考文献:NICE)では、トラウマ焦点化心理療法(トラウマ焦点化認知行動療法とEMDR)を第一選択とし、薬物療法はトラウマ焦点化心理療法を拒否する時かトラウマ体験の影響で試行できない時、トラウマ焦点化心理療法で十分な効果が得られない時、うつ病などの合併症の強化療法時などに限定して推奨されている。 | ||
=== | === トラウマ焦点化心理療法 === | ||
<pre>===トラウマ焦点化心理療法===</pre> | <pre>===トラウマ焦点化心理療法===</pre> | ||
トラウマ焦点化心理療法のうち長時間暴露法(prolonged exposure:PE療法)は日本国内でランダム化比較試験で有効性が証明された治療法である(参考文献:飛鳥井先生)。 | トラウマ焦点化心理療法のうち長時間暴露法(prolonged exposure:PE療法)は日本国内でランダム化比較試験で有効性が証明された治療法である(参考文献:飛鳥井先生)。 |
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