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細 (ページの作成:「英語名:antidepressant 抗うつ薬とは、うつ病・うつ状態を改善させる効果をもつ薬剤である。うつ病の病態生理は解明されて...」) |
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===その他の抗うつ薬=== | ===その他の抗うつ薬=== | ||
現在の抗うつ薬による初回治療の寛解率は40%程度であり<ref name=ref1><pubmed>22008447</pubmed></ref>、セロトニンおよびノルアドレナリン系の増強とは直接関連しない抗うつ薬の開発が待たれている。 | |||
===ドパミン関連 === | ===ドパミン関連 === | ||
うつ病患者では、脳脊髄液中のドパミン代謝差物であるhomovanillic | うつ病患者では、脳脊髄液中のドパミン代謝差物であるhomovanillic acid(HVA)の濃度が低く、中枢ドパミン機能の低下が示唆されており、パーキンソン病の治療に使用される、bromocriptine、pramipexoleなどのドパミン作動薬の難治性うつ病に対する有効性が報告されている<ref name=ref2><pubmed>10812530</pubmed></ref> <ref name=ref3><pubmed>2404964</pubmed></ref>。Bupropionは、ノルアドレナリンおよびドパミントランスポーター阻害作用をもち、ドパミン系の増強効果を有している抗うつ薬であり、海外ではうつ病治療に導入されている。 | ||
===メラトニン関連 === | ===メラトニン関連 === | ||
モノアミントランスポーターの阻害とは関連しない新規抗うつ薬として、agomelatineがヨーロッパでは臨床導入されている。Agomelatineは、メラトニン1およびメラトニン2受容体への作用と5HT2C受容体の阻害作用をもち,抗うつ効果の作用機序としては、メラトニン受容体への作用による睡眠リズムの改善、5- | モノアミントランスポーターの阻害とは関連しない新規抗うつ薬として、agomelatineがヨーロッパでは臨床導入されている。Agomelatineは、メラトニン1およびメラトニン2受容体への作用と5HT2C受容体の阻害作用をもち,抗うつ効果の作用機序としては、メラトニン受容体への作用による睡眠リズムの改善、5-HT2C受容体阻害作用によるノルアドレナリンおよびドパミンの増加が想定されている<ref name=ref4><pubmed>18827285</pubmed></ref>。 | ||
===グルタミン酸神経作用薬関連=== | ===グルタミン酸神経作用薬関連=== | ||
うつ病患者ではグルタミン酸神経系の異常が示唆されており、非競合的NMDA受容体阻害作用を有するketamineや<ref name=ref5><pubmed>10686270</pubmed></ref>、競合的NMDA受容体阻害作用を有するamantadineのうつ病に対する有効性が報告されていることもあり<ref name=ref6><pubmed>12858143</pubmed></ref>、NMDA受容体に作用する抗うつ薬の開発が期待されている。 | |||
===視床下部 - 下垂体 - 副腎皮質系関連 === | ===視床下部 - 下垂体 - 副腎皮質系関連 === | ||
ストレスの生体反応と視床下部―下垂体―副腎皮質系(hypothalamo- pituitary-adrenal axis: HPA | ストレスの生体反応と視床下部―下垂体―副腎皮質系(hypothalamo- pituitary-adrenal axis: HPA 系)の関係は、従来より研究されており、うつ病患者では、コルチゾール概日リズムの異常、コルチゾール過剰分泌、ACTH投与によるコルチゾール過分泌、コルチコトロピン放出ホルモンの過分泌、デキサメサゾン抑制試験のコルチゾール反応性低下などが指摘されている。dexamethasoneの短期間投与による抗うつ効果や、metyrapone、ketoconazoleなどのグルココルチコイド受容体阻害薬の抗うつ効果が報告<ref name=ref7><pubmed>10511017</pubmed></ref>されており、グルココルチコイドに関連した抗うつ薬の開発が期待されている。 | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
<references /> | <references /> | ||
(執筆者:上田幹人、下田和孝 担当編集委員:加藤忠史) | (執筆者:上田幹人、下田和孝 担当編集委員:加藤忠史) |