「逆行性伝達物質」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
52行目: 52行目:
===LTD===
===LTD===
エンドカンナビノイドはLTDの誘導にも寄与する。興奮性シナプスでみられるエンドカンナビノイド依存性のLTDは、背側線条体、大脳皮質、側坐核、小脳、海馬、背側蝸牛神経核などで報告されている。一方、抑制性シナプスでは、扁桃体、海馬、大脳皮質、腹側被蓋野などで報告がある。
エンドカンナビノイドはLTDの誘導にも寄与する。興奮性シナプスでみられるエンドカンナビノイド依存性のLTDは、背側線条体、大脳皮質、側坐核、小脳、海馬、背側蝸牛神経核などで報告されている。一方、抑制性シナプスでは、扁桃体、海馬、大脳皮質、腹側被蓋野などで報告がある。
   エンドカンナビノイド依存性のLTD(eCB-LTD)誘導にはLTD誘発刺激中にエンドカンナビノイドが産生されてシナプス前終末のCB1受容体が活性化されることが必要である。海馬ではCB1受容体が5−10分間、活性化されることがLTD誘導に必須であることが示されており、LTDの維持にはCB1受容体活性は不要となる(Chevaleyre and Castillo, 2003)。LTD誘発刺激条件は脳部位によって様々であるがシナプス後部ニューロンへのカルシウムイオン流入あるいはグループI代謝型グルタミン酸受容体の活性化を介してエンドカンナビノイド産生が引き起こされることが明らかになっている (Heifets and Castillo, 2009)。エンドカンナビノイドは興奮性シナプスで作られるので、抑制性シナプスで起こるeCB-LTDは異シナプス的に誘導されるLTDである。小脳を除いて、eCB-LTDの発現は、これまですべてシナプス前性の可塑的変化によることが示されている。しかし数分間のCB1受容体の活性化がどのようにして長期の神経伝達物質放出の抑制を誘導するのかについてはまだよくわかっていない。海馬においてはシナプス前終末におけるRIM1αの作用と、カルシウムイオン流入によるカルシニューリンの活性化が必須であることが示されている (Heifets and Castillo, 2009)
 
 エンドカンナビノイド依存性のLTD(eCB-LTD)誘導にはLTD誘発刺激中にエンドカンナビノイドが産生されてシナプス前終末のCB1受容体が活性化されることが必要である。海馬ではCB1受容体が5−10分間、活性化されることがLTD誘導に必須であることが示されており、LTDの維持にはCB1受容体活性は不要となる<ref><pubmed> 12741992 </pubmed></ref>。LTD誘発刺激条件は脳部位によって様々であるがシナプス後部ニューロンへのカルシウムイオン流入あるいはグループI代謝型グルタミン酸受容体の活性化を介してエンドカンナビノイド産生が引き起こされることが明らかになっている <ref name=ref50><pubmed> 19575681 </pubmed></ref>。エンドカンナビノイドは興奮性シナプスで作られるので、抑制性シナプスで起こるeCB-LTDは異シナプス的に誘導されるLTDである。小脳を除いて、eCB-LTDの発現は、これまですべてシナプス前性の可塑的変化によることが示されている。しかし数分間のCB1受容体の活性化がどのようにして長期の神経伝達物質放出の抑制を誘導するのかについてはまだよくわかっていない。海馬においてはシナプス前終末におけるRIM1αの作用と、カルシウムイオン流入によるカルシニューリンの活性化が必須であることが示されている<ref name=ref50 />


==参考文献==
==参考文献==
<references/>
<references/>
(執筆者:橋本谷祐輝、狩野方伸 担当編集委員:河西春郎)
(執筆者:橋本谷祐輝、狩野方伸 担当編集委員:河西春郎)
49

回編集

案内メニュー