「逆行性伝達物質」の版間の差分

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=== 気体分子  ===
=== 気体分子  ===


 [[一酸化窒素]](NO)はセカンドメッセンジャーとして働くことが知られているが、特に海馬のLTP誘導において逆行性伝達物質として働くことが報告されている<ref name="ref19"><pubmed> 8083727 </pubmed></ref><ref><pubmed> 9223222 </pubmed></ref>。[[NMDA受容体]]を介して流入した[[カルシウム]]が[[NO合成酵素]]を活性化することによって[[wikipedia:ja:L-アルギニン|L-アルギニン]]からNOがシナプス後部で作られる。細胞外へと放出されたNOはシナプス前終末の内部に入り、[[可溶性グアニル酸シクラーゼ]]を活性化し[[cGMP]]産生とそれに引き続き[[cGMP依存性プロテインキナーゼ]]の活性化を引き起こす。その結果、神経伝達物質の放出が促進される。海馬以外にも例えば[[腹側被蓋野]]<ref><pubmed> 17460674 </pubmed></ref>、[[視床下部]]<ref><pubmed> 19144839 </pubmed></ref>、[[大脳皮質]]<ref><pubmed> 16837587 </pubmed></ref>、[[脊髄]]<ref><pubmed> 22131400 </pubmed></ref>などでNOによる逆行性シナプス伝達が報告されている。  
 [[一酸化窒素]] (NO)はセカンドメッセンジャーとして働くことが知られているが、特に海馬のLTP誘導において逆行性伝達物質として働くことが報告されている<ref name="ref19"><pubmed> 8083727 </pubmed></ref><ref><pubmed> 9223222 </pubmed></ref>。[[NMDA型グルタミン酸受容体]]を介して流入した[[カルシウム]]が[[NO合成酵素]]を活性化することによってL-[[wikipedia:ja:アルギニン|アルギニン]]からNOがシナプス後部で作られる。細胞外へと放出されたNOはシナプス前終末の内部に入り、[[可溶性グアニル酸シクラーゼ]]を活性化し[[cGMP]]産生とそれに引き続き[[cGMP依存性プロテインキナーゼ]]の活性化を引き起こす。その結果、神経伝達物質の放出が促進される。海馬以外にも例えば[[腹側被蓋野]]<ref><pubmed> 17460674 </pubmed></ref>、[[視床下部]]<ref><pubmed> 19144839 </pubmed></ref>、[[大脳皮質]]<ref><pubmed> 16837587 </pubmed></ref>、[[脊髄]]<ref><pubmed> 22131400 </pubmed></ref>などでNOによる逆行性シナプス伝達が報告されている。  


 NOが順行性伝達物質としても働くことが、特に[[小脳]]の[[LTD]]でよく調べられている<ref><pubmed> 18588525 </pubmed></ref>。小脳[[プルキンエ細胞]]に入力する興奮性の[[平行線維]]終末からNOが放出され<ref><pubmed> 9032691 </pubmed></ref>シナプス後部に入り、可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化する。その結果、cGMP/cGMP依存性プロテインキナーゼのカスケードが活性化し[[G-substrate]]を[[リン酸化]]する<ref><pubmed> 10051666 </pubmed></ref>。リン酸化したG-substrateは[[ホスファターゼ]]の[[阻害剤]]として働き、別経路で活性化された[[プロテインキナーゼC]]と合わせて、最終的に[[AMPA受容体]]のリン酸化および[[エンドサイトーシス]]を促進する方向へ向かう。  
 NOが順行性伝達物質としても働くことが、特に[[小脳]]の[[LTD]]でよく調べられている<ref><pubmed> 18588525 </pubmed></ref>。小脳[[プルキンエ細胞]]に入力する興奮性の[[平行線維]]終末からNOが放出され<ref><pubmed> 9032691 </pubmed></ref>シナプス後部に入り、可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化する。その結果、cGMP/cGMP依存性プロテインキナーゼのカスケードが活性化し[[G-substrate]]を[[リン酸化]]する<ref><pubmed> 10051666 </pubmed></ref>。リン酸化したG-substrateは[[ホスファターゼ]]の[[阻害剤]]として働き、別経路で活性化された[[プロテインキナーゼC]]と合わせて、最終的に[[AMPA型グルタミン酸受容体]]のリン酸化および[[エンドサイトーシス]]を促進する方向へ向かう。  


 [[一酸化炭素]]も逆行性伝達物質として働くことが示唆されているが<ref><pubmed> 7682336 </pubmed></ref><ref name="ref19" />まだそれを支持する十分な証拠は揃っていない。  
 [[一酸化炭素]]も逆行性伝達物質として働くことが示唆されているが<ref><pubmed> 7682336 </pubmed></ref><ref name="ref19" />まだそれを支持する十分な証拠は揃っていない。


=== 神経栄養因子  ===
=== 神経栄養因子  ===

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