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Rhashimoto (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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== 統合失調症 == | == 統合失調症 == | ||
代表的な統合失調症のエンドフェノタイプ(中間表現型)としては,認知機能,脳画像,神経生理機能などが今までよく用いられているが,最近はより発展して、人格傾向や遺伝子発現などもエンドフェノタイプの一つとして用いられるようになってきた(図2)< | 代表的な統合失調症のエンドフェノタイプ(中間表現型)としては,認知機能,脳画像,神経生理機能などが今までよく用いられているが,最近はより発展して、人格傾向や遺伝子発現などもエンドフェノタイプの一つとして用いられるようになってきた(図2)<ref name=ref11>'''橋本亮太、安田由華、大井一高、福本素由己、梅田知美、岡田武也、山森英長、武田雅俊'''<br>脳の機能と統合失調症-新たな診断と治療への展望- 統合失調症の中間表現型<br>''精神科治療学'':2011; 26: 1363-1369</ref>。認知機能には,言語性記憶,視覚性記憶,作業記憶,遂行機能,語流暢性,注意・集中力,精神運動速度,視・知覚運動処理などがある。言語性記憶に関しても短期記憶と長期記憶に分かれ,さらにそれぞれについて確立した測定法が複数あるため,本来ならばその一つ一つについて中間表現型の定義を満たすかどうかを確認する必要があるが,実際にそのエビデンスがあるものは少ないのが現状である。そこでここでは,それぞれのエンドフェノタイプのドメインでよく用いられるものを中心にその妥当性をまとめた(表1)<ref name="ref8" />。妥当性の高いエンドフェノタイプは存在するが、理想的なエンドフェノタイプは存在していないことを追記しておく必要がある。 | ||
以下によく用いられる統合失調症のエンドフェノタイプについて述べる。<br> | 以下によく用いられる統合失調症のエンドフェノタイプについて述べる。<br> | ||
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=== その他 === | === その他 === | ||
エンドフェノタイプの概念が広がり、死後脳やリンパ芽球における遺伝子発現やパーソナリティー傾向もその候補として考えられるようになってきたが、まだ十分な検討はなされておらず、今後の発展が期待される。 | エンドフェノタイプの概念が広がり、死後脳やリンパ芽球における遺伝子発現やパーソナリティー傾向もその候補として考えられるようになってきたが、まだ十分な検討はなされておらず、今後の発展が期待される。 | ||
== 双極性障害 == | == 双極性障害 == | ||
双極性障害のエンドフェノタイプにエビデンスは、まだ研究報告が少ないため統合失調症のそれよりも小さい。よって、双極性障害においても理想的なエンドフェノタイプは存在していないが、いくつか有力な候補について述べる。<br>認知機能については多数の報告があるが、過去の文献をレビューすると一致度は小さい<ref><pubmed>18582942</pubmed></ref>。但し、その後、processing speed, working memory, and declarative (facial) memoryが有望であるとの報告がされている<ref><pubmed>20124116</pubmed></ref>。神経生理機能については、眼球運動、P50、PPI、P300などが有力ではあるが、すべて統合失調症と重なっている<ref><pubmed>18502737</pubmed></ref>。脳神経画像については、前部辺縁系の体積や情動刺激課題中の辺縁系を中心とした賦活が関与しているという報告が出始めたばかりである<ref><pubmed>21321565</pubmed></ref> <ref><pubmed>18221633</pubmed></ref>。血液細胞におけるカルシウム濃度や培養リンパ芽球における遺伝子発現が、遺伝子多型を反映するものとして有望とされているが、遺伝性などについてはまだ十分な検討がなされていない<ref>'''橋本亮太、大井一高、安田由華、吉田哲彦、武田雅俊'''<br>精神疾患の脳画像解析学と分子生物学の統合 中間表現型としての脳画像解析の現状と展望<br>''分子精神医学'':2007; 7: 214-221</ref>。 <br> | 双極性障害のエンドフェノタイプにエビデンスは、まだ研究報告が少ないため統合失調症のそれよりも小さい。よって、双極性障害においても理想的なエンドフェノタイプは存在していないが、いくつか有力な候補について述べる。<br>認知機能については多数の報告があるが、過去の文献をレビューすると一致度は小さい<ref><pubmed>18582942</pubmed></ref>。但し、その後、processing speed, working memory, and declarative (facial) memoryが有望であるとの報告がされている<ref><pubmed>20124116</pubmed></ref>。神経生理機能については、眼球運動、P50、PPI、P300などが有力ではあるが、すべて統合失調症と重なっている<ref><pubmed>18502737</pubmed></ref>。脳神経画像については、前部辺縁系の体積や情動刺激課題中の辺縁系を中心とした賦活が関与しているという報告が出始めたばかりである<ref><pubmed>21321565</pubmed></ref> <ref><pubmed>18221633</pubmed></ref>。血液細胞におけるカルシウム濃度や培養リンパ芽球における遺伝子発現が、遺伝子多型を反映するものとして有望とされているが、遺伝性などについてはまだ十分な検討がなされていない<ref>'''橋本亮太、大井一高、安田由華、吉田哲彦、武田雅俊'''<br>精神疾患の脳画像解析学と分子生物学の統合 中間表現型としての脳画像解析の現状と展望<br>''分子精神医学'':2007; 7: 214-221</ref>。 <br> | ||
== 今後の方向性と課題 == | == 今後の方向性と課題 == | ||
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=== 今後の方向性 === | === 今後の方向性 === | ||
精神障害のリスク遺伝子を見出すための一方法として中間表現型という概念が提唱されたが,その概念は徐々に拡大しており,遺伝子と量的に測定可能な神経生物学的な表現型との関連を検討することにより,その遺伝子の機能を見出すというように広く用いられるようになってきている(図2)<ref name="ref11" />。その結果、脳神経画像の分野ではimaging geneticsとして,神経心理学の分野ではneurocognitive geneticsとして発展してきている。中間表現型と遺伝子の関連解析は,異分野の研究手法を用いて多数のサンプルサイズを必要とするため,この解析が可能な研究施設は少ないという問題点があるが,精神疾患を超えて神経科学の分野のトレンドとなることでこの問題が解決すると考えられ,今後の発展が期待される。<br> <br>中間表現型は統合失調症における定量的に測定できる神経生物学的な表現型であることから、いわゆる生物学的な診断マーカーとしての期待が持てる。一つ一つの中間表現型(例えば、記憶障害や脳構造異常)の感度と特異度は十分ではなく、未だ生物学的な診断マーカーは見つかっていない。しかし、統合失調症の病態のうち異なる遺伝子による異常を反映すると考えられる中間表現型の組み合わせを用いることにより、診断マーカーの開発につながることが期待されている。<br> <br>動物モデルの研究への応用可能性も今後期待される分野である。現在、精神疾患の診断は、多くを患者本人の主観的体験の陳述と行動の観察に頼っている。特に、幻聴や妄想といった症状は、動物で定義することは不可能である。動物でも定量可能なエンドフェノタイプを用いることで、こうした問題を克服できる可能性がある。実際に、統合失調症においてはプレパルス抑制の障害をヒトとモデル動物の双方に用いて研究がなされている。<br> | |||
=== 今後の課題 === | === 今後の課題 === |
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