「電位依存性カルシウムチャネル」の版間の差分

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=== TRP チャネル<br>  ===
=== TRP チャネル<br>  ===


 TRP (transient receptor potential) チャネルはショウジョウバエの光受容応答変異株の原因遺伝子として発見されたチャネル分子である<sup>[35]</sup>。哺乳類においては28種の遺伝子が同定され、C, M, P, ML, V, Aといった6つのサブファミリーを構成する。TRPチャネルは、温度、機械刺激、痛み、酸-塩基といった種々の物理化学的刺激によって活性化されるカチオンチャネルファミリーを形成している。その多くがCa<sup>2+</sup>透過能を有し、中枢・末梢神経系を始めとするほぼ全ての組織に発現が見られる。TRPCやTRPMファミリーに属するTRPチャネルを介したCa<sup>2+</sup>シグナルは、神経細胞において重要な役割を担っていることが示されている。受容体刺激、細胞内Ca<sup>2+</sup>ストア枯渇、および他のタンパク質との相互作用によって活性化されるTRPCチャネル (TRPC1~7) を介したCa<sup>2+</sup>流入が、神経細胞の分化、増殖、生存や神経突起の伸長・誘導、スパイン形成といった多くの神経機能に関連する<sup>[36]</sup>。一方、酸化ストレスや温度、pH、機械刺激などで活性化されるTRPMチャネル (TRPM1~8)を介したCa<sup>2+</sup>流入が、神経細胞の成長・発達や細胞死に関連する<sup>[36]</sup>。<br>  
 TRP (transient receptor potential) チャネルはショウジョウバエの光受容応答変異株の原因遺伝子として発見されたチャネル分子である<ref name=ref35><pubmed>    2516726</pubmed></ref>。哺乳類においては28種の遺伝子が同定され、C, M, P, ML, V, Aといった6つのサブファミリーを構成する。TRPチャネルは、温度、機械刺激、痛み、酸-塩基といった種々の物理化学的刺激によって活性化されるカチオンチャネルファミリーを形成している。その多くがCa<sup>2+</sup>透過能を有し、中枢・末梢神経系を始めとするほぼ全ての組織に発現が見られる。TRPCやTRPMファミリーに属するTRPチャネルを介したCa<sup>2+</sup>シグナルは、神経細胞において重要な役割を担っていることが示されている。受容体刺激、細胞内Ca<sup>2+</sup>ストア枯渇、および他のタンパク質との相互作用によって活性化されるTRPCチャネル (TRPC1~7) を介したCa<sup>2+</sup>流入が、神経細胞の分化、増殖、生存や神経突起の伸長・誘導、スパイン形成といった多くの神経機能に関連する<ref name=ref36><pubmed>    19999578</pubmed></ref>。一方、酸化ストレスや温度、pH、機械刺激などで活性化されるTRPMチャネル (TRPM1~8)を介したCa<sup>2+</sup>流入が、神経細胞の成長・発達や細胞死に関連する<ref name=ref36 />。<br>  


=== ストア作動性Ca<sup>2+</sup>チャネル <br>  ===
=== ストア作動性Ca<sup>2+</sup>チャネル <br>  ===


 SOCチャネル (store-operated calcium channel&nbsp;: SOC channel, calcium release-activated calcium channel&nbsp;: CRAC channel) は、小胞体Ca<sup>2+</sup>ストアのCa<sup>2+</sup>枯渇によって活性化開口される細胞外からのCa<sup>2+</sup>流入経路である。TRPCチャネルがチャネル分子実態として考えられていたが、近年、重症複合免疫不全症(sevefe combined immunodeficiency&nbsp;: SCID)の患者から遺伝子変異が発見されたOrai1がSOCチャネルとして同定され、主要な分子実態として認識され始めている。Orai (Orai1, 2, 3) は、小胞体のCa<sup>2+</sup>枯渇を感知した小胞体Ca<sup>2+</sup>センサー分子STIM (stromal interacting molecule&nbsp;: STIM1, 2) との相互作用を介して4量体を形成し、活性化開口する<sup>[37]</sup>。<br>SOCチャネルによるCa<sup>2+</sup>流入 (SOC流入) は、免疫細胞における主要なCa<sup>2+</sup>流入経路であり、免疫機能に必須であるとされ、抗原受容体といった受容体活性化の下流でSOC流入が誘導される。これは持続的な [Ca<sup>2+</sup>]<sub>i</sub>上昇によりCa<sup>2+</sup>シグナル伝達を担い、転写因子NFATの活性を調節することが知られる。近年になって、神経細胞や筋細胞といった興奮性細胞においてもSOC流入が確認され、種々の生理機能や疾患との関連が調べられている<sup>[37]</sup>。<br><br><br><br><references />
 SOCチャネル (store-operated calcium channel&nbsp;: SOC channel, calcium release-activated calcium channel&nbsp;: CRAC channel) は、小胞体Ca<sup>2+</sup>ストアのCa<sup>2+</sup>枯渇によって活性化開口される細胞外からのCa<sup>2+</sup>流入経路である。TRPCチャネルがチャネル分子実態として考えられていたが、近年、重症複合免疫不全症(sevefe combined immunodeficiency&nbsp;: SCID)の患者から遺伝子変異が発見されたOrai1がSOCチャネルとして同定され、主要な分子実態として認識され始めている。Orai (Orai1, 2, 3) は、小胞体のCa<sup>2+</sup>枯渇を感知した小胞体Ca<sup>2+</sup>センサー分子STIM (stromal interacting molecule&nbsp;: STIM1, 2) との相互作用を介して4量体を形成し、活性化開口する<ref name=ref37><pubmed>19488056</pubmed></ref>。<br>SOCチャネルによるCa<sup>2+</sup>流入 (SOC流入) は、免疫細胞における主要なCa<sup>2+</sup>流入経路であり、免疫機能に必須であるとされ、抗原受容体といった受容体活性化の下流でSOC流入が誘導される。これは持続的な [Ca<sup>2+</sup>]<sub>i</sub>上昇によりCa<sup>2+</sup>シグナル伝達を担い、転写因子NFATの活性を調節することが知られる。近年になって、神経細胞や筋細胞といった興奮性細胞においてもSOC流入が確認され、種々の生理機能や疾患との関連が調べられている<ref name=ref37 />。<br><br><br><br><references />
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