「エンドフェノタイプ」の版間の差分

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=== 脳神経画像   ===
=== 脳神経画像   ===


 脳構造画像においては,SPM(Statistical Parametric Mapping)を用いたVBM(Voxel-Based-Morphometry)法が導入され,全脳における定量的な解析を比較的簡単に行えるようになったことで,飛躍的にこの分野の研究が進んだ。その結果,全脳の体積や灰白質の体積がエンドフェノタイプとして用いられるようになった<ref><pubmed>18408230</pubmed></ref>。 白質の統合性を測定する拡散テンソル画像(DTI: Diffusion tensor imaging)についても,検討が進んでいる。
 脳構造画像においては,SPM(Statistical Parametric Mapping)を用いたVBM(Voxel-Based-Morphometry)法が導入され,全脳における定量的な解析を比較的簡単に行えるようになったことで,飛躍的にこの分野の研究が進んだ。その結果,全脳の体積や灰白質の体積がエンドフェノタイプとして用いられるようになった<ref><pubmed>18408230</pubmed></ref>。 白質の統合性を測定する拡散テンソル画像(DTI: Diffusion tensor imaging)についても検討が進んでいる。


 脳機能画像研究においては,課題を用いた時の脳血流の変化(賦活化)を定量する機能的MRI(fMRI)が主に用いられている<ref name="ref10" />。統合失調症においてよく研究されているのは,ワーキングメモリー課題とエピソード記憶課題である。次に,情動制御課題や報酬課題がよく用いられる。  
 脳機能画像研究においては,課題を用いた時の脳血流の変化(賦活化)を定量する機能的MRI(fMRI)が主に用いられている<ref name="ref10" />。統合失調症においてよく研究されているのは,ワーキングメモリー課題とエピソード記憶課題である。次に,情動制御課題や報酬課題がよく用いられる。  
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== 双極性障害&nbsp;  ==
== 双極性障害&nbsp;  ==


 双極性障害のエンドフェノタイプにエビデンスは,まだ研究報告が少ないため統合失調症のそれよりも小さい。よって,双極性障害においても理想的なエンドフェノタイプは存在していないが,いくつか有力な候補について述べる。<br> 認知機能については多数の報告があるが,過去の文献をレビューすると一致度は小さい<ref><pubmed>18582942</pubmed></ref>。但し,その後,作業記憶,陳述記憶,が有望であるとの報告がされている<ref><pubmed>20124116</pubmed></ref>。神経生理機能については,眼球運動,P50,PPI,P300などが有力ではあるが,すべて統合失調症と重なっている<ref><pubmed>18502737</pubmed></ref>。脳神経画像については,前部辺縁系の体積や情動刺激課題中の辺縁系を中心とした賦活が関与しているという報告が出始めたばかりである<ref><pubmed>21321565</pubmed></ref> <ref><pubmed>18221633</pubmed></ref>。血液細胞におけるカルシウム濃度や培養リンパ芽球における遺伝子発現が,遺伝子多型を反映するものとして有望とされているが,遺伝性などについてはまだ十分な検討がなされていない<ref>'''加藤忠史'''<br>精神疾患のエンドフェノタイプ 双極性障害のエンドフェノタイプ<br>''分子精神医学'':2005; 5: 145-151</ref>。 <br>  
 双極性障害のエンドフェノタイプにエビデンスは,まだ研究報告が少ないため統合失調症のそれよりも小さい。よって,双極性障害においても理想的なエンドフェノタイプは存在していないが,いくつか有力な候補について述べる。<br> 認知機能については多数の報告があるが,過去の文献をレビューすると一致度は小さい<ref><pubmed>18582942</pubmed></ref>。但し,その後,作業記憶,陳述記憶が有望であるとの報告がされている<ref><pubmed>20124116</pubmed></ref>。神経生理機能については,眼球運動,P50,PPI,P300などが有力ではあるが,すべて統合失調症と重なっている<ref><pubmed>18502737</pubmed></ref>。脳神経画像については,前部辺縁系の体積や情動刺激課題中の辺縁系を中心とした賦活が関与しているという報告が出始めたばかりである<ref><pubmed>21321565</pubmed></ref> <ref><pubmed>18221633</pubmed></ref>。血液細胞におけるカルシウム濃度や培養リンパ芽球における遺伝子発現が,遺伝子多型を反映するものとして有望とされているが,遺伝性などについてはまだ十分な検討がなされていない<ref>'''加藤忠史'''<br>精神疾患のエンドフェノタイプ 双極性障害のエンドフェノタイプ<br>''分子精神医学'':2005; 5: 145-151</ref>。 <br>  


== &nbsp;今後の方向性と課題  ==
== &nbsp;今後の方向性と課題  ==
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