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Rhashimoto (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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=== 今後の方向性 === | === 今後の方向性 === | ||
精神障害のリスク遺伝子を見出すための一方法として中間表現型という概念が提唱されたが,その概念は徐々に拡大しており,遺伝子と量的に測定可能な神経生物学的な表現型との関連を検討することにより,その遺伝子の機能を見出すというように広く用いられるようになってきている(図2)<ref name="ref11" />。その結果,脳神経画像の分野ではimaging geneticsとして,神経心理学の分野ではneurocognitive geneticsとして発展してきている<ref>'''橋本亮太,大井一高,安田由華,吉田哲彦,武田雅俊'''<br>精神疾患の脳画像解析学と分子生物学の統合 中間表現型としての脳画像解析の現状と展望<br>''分子精神医学'':2007; 7: 214-221</ref>。 中間表現型と遺伝子の関連解析は,異分野の研究手法を用いて多数のサンプルサイズを必要とするため,この解析が可能な研究施設は少ないという問題点があるが,精神疾患を超えて神経科学の分野のトレンドとなることでこの問題が解決すると考えられ,今後の発展が期待される。 | 精神障害のリスク遺伝子を見出すための一方法として中間表現型という概念が提唱されたが,その概念は徐々に拡大しており,遺伝子と量的に測定可能な神経生物学的な表現型との関連を検討することにより,その遺伝子の機能を見出すというように広く用いられるようになってきている(図2)<ref name="ref11" />。その結果,脳神経画像の分野ではimaging geneticsとして,神経心理学の分野ではneurocognitive geneticsとして発展してきている<ref>'''橋本亮太,大井一高,安田由華,吉田哲彦,武田雅俊'''<br>精神疾患の脳画像解析学と分子生物学の統合 中間表現型としての脳画像解析の現状と展望<br>''分子精神医学'':2007; 7: 214-221</ref>。 中間表現型と遺伝子の関連解析は,異分野の研究手法を用いて多数のサンプルサイズを必要とするため,この解析が可能な研究施設は少ないという問題点があるが,精神疾患を超えて神経科学の分野のトレンドとなることでこの問題が解決すると考えられ,今後の発展が期待される。 | ||
中間表現型は統合失調症における定量的に測定できる神経生物学的な表現型であることから,いわゆる生物学的な診断マーカーとしての期待が持てる。一つ一つの中間表現型(例えば、記憶障害や脳構造異常)の感度と特異度は十分ではなく,未だ生物学的な診断マーカーは見つかっていない。しかし、統合失調症の病態のうち異なる遺伝子による異常を反映すると考えられる中間表現型の組み合わせを用いることにより、診断マーカーの開発につながることが期待されている(図2)<ref name="ref11" />。 | |||
動物モデルの研究への応用可能性も今後期待される分野である。現在、精神疾患の診断は,多くを患者本人の主観的体験の陳述と行動の観察に頼っている。特に,幻聴や妄想といった症状は,動物で定義することは不可能である。動物でも定量可能なエンドフェノタイプを用いることで,こうした問題を克服できる可能性がある。実際に,統合失調症においてはプレパルス抑制の障害をヒトとモデル動物の双方に用いて研究がなされている。 | |||
エンドフェノタイプ(中間表現型)は,定義上あくまでもヒトにおける表現型であるが,脳神経科学研究の領域にその概念が広がることにより,新たな意味を獲得しつつある。例えば,動物や細胞レベルにおける分子レベルのフェノタイプを精神疾患のエンドフェノタイプや中間表現型として,病態解明を目指す研究が行われ始めている。これは,現時点においてはテクニカルタームの誤用ということになるかもしれない。しかし,テクニカルタームは研究の進展とともに新たな概念を獲得して発展していくものであることから,この研究分野が今後,生物精神医学研究の中心的な研究手法から脳神経科学研究の中心的な研究になることが期待される。 | |||
=== 今後の課題 === | === 今後の課題 === |
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