「核内受容体」の版間の差分

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 核内受容体のリガンドは、輸送蛋白質に結合して血中や体液中を運搬され、標的細胞の中へは単独で入り、細胞質に存在する核内受容体に結合する。例えば、グルココルチコイド受容体 (GR) は、細胞質でシャペロン蛋白質であるhsp90やp23と結合しており、リガンドが結合するとシャペロンから離れて核内に移行し、標的遺伝子の「グルココルチコイド応答エレメント(glucocorticoid response element: GRE)」と呼ばれるDNA配列に結合する<ref name=ref1 />(後述)。リガンドおよびDNAと結合したNRは、コアクチベーター蛋白質などと結合して、クロマチンの構造を変えて転写を調節する大きな複合体としてはたらく。また、細胞核内でリガンドと結合していないNRはコリプレッサー蛋白質と結合しており、標的遺伝子の転写を抑制している(図3)。NRは、細胞質蛋白質であるSMAD3やJNKとも相互作用する。AF-1領域にはリン酸化部位があり、リン酸化による活性調節を受ける。
 核内受容体のリガンドは、輸送蛋白質に結合して血中や体液中を運搬され、標的細胞の中へは単独で入り、細胞質に存在する核内受容体に結合する。例えば、グルココルチコイド受容体 (GR) は、細胞質でシャペロン蛋白質であるhsp90やp23と結合しており、リガンドが結合するとシャペロンから離れて核内に移行し、標的遺伝子の「グルココルチコイド応答エレメント(glucocorticoid response element: GRE)」と呼ばれるDNA配列に結合する<ref name=ref1 />(後述)。リガンドおよびDNAと結合したNRは、コアクチベーター蛋白質などと結合して、クロマチンの構造を変えて転写を調節する大きな複合体としてはたらく。また、細胞核内でリガンドと結合していないNRはコリプレッサー蛋白質と結合しており、標的遺伝子の転写を抑制している(図3)。NRは、細胞質蛋白質であるSMAD3やJNKとも相互作用する。AF-1領域にはリン酸化部位があり、リン酸化による活性調節を受ける。


== 核内受容体スーパーファミリー ==
== 核内受容体スーパーファミリー ==


 ヒトで48の遺伝子(表1)、マウスで49の遺伝子にコードされる。分子系統樹から7つのサブファミリー(NR0~6)に分類され、個々の慣用名に対応する正式名がある<ref name=ref4><pubmed>10219237</pubmed></ref>。サブファミリー0 (NR0)は、DNA結合領域(DBD, C領域)またはリガンド結合領域(LBD, E領域)の一方しか持たないもので、例えばSHPはLBDしか持たずNR0B2と呼ばれる。各サブファミリーはさらにA, B,,,のグループに分けられ、1つのグループはパラログによって構成される。例えば、甲状腺ホルモン受容体 (TR) はサブファミリー1グループA (NR1A)で、TRαはNR1A1, TRβはNR1A2となる。また、例えばNR5A1a (=SF1)とNR5A1b(ELP)とは、同じ遺伝子からスプライシングの違いによってできた異なったアイソフォームである。
 ヒトで48の遺伝子(表1)、マウスで49の遺伝子にコードされる。分子系統樹から7つのサブファミリー(NR0~6)に分類され、個々の慣用名に対応する正式名がある<ref name="ref4"><pubmed>10219237</pubmed></ref>。サブファミリー0 (NR0)は、DNA結合領域(DBD, C領域)またはリガンド結合領域(LBD, E領域)の一方しか持たないもので、例えばSHPはLBDしか持たずNR0B2と呼ばれる。各サブファミリーはさらにA, B,,,のグループに分けられ、1つのグループはパラログによって構成される。例えば、甲状腺ホルモン受容体 (TR) はサブファミリー1グループA (NR1A)で、TRαはNR1A1, TRβはNR1A2となる。また、例えばNR5A1a (=SF1)とNR5A1b(ELP)とは、同じ遺伝子からスプライシングの違いによってできた異なったアイソフォームである。  


他の分類:組織特異的発現パターンや生理的機能から6群(クラスター)に分けられる(表2)<ref name=ref5><pubmed>16923397</pubmed></ref> <ref name=ref6><pubmed>22411605</pubmed></ref>。
他の分類:組織特異的発現パターンや生理的機能から6群(クラスター)に分けられる(表2)<ref name="ref5"><pubmed>16923397</pubmed></ref> <ref name="ref6"><pubmed>22411605</pubmed></ref>。  


{| width="1037" cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" height="681"
|-
| style="background-color:#a9a9a9; text-align:center" | クラスター
| style="background-color:#a9a9a9; text-align:center" | 機能
| style="background-color:#a9a9a9; text-align:center" | 核内受容体
| style="background-color:#a9a9a9; text-align:center" | 機能
| style="background-color:#a9a9a9; text-align:center" | 発現部位
|-
| rowspan="3" style="text-align:center" | I
| rowspan="3" | ステロイド合成
| FXRb
| ヒトになし、マウスで機能不明
| rowspan="3" | 中枢神経系、生殖器、副腎
|-
| SF1
| rowspan="2" | 性分化とステロイド合成
|-
| DAX1
|-
| rowspan="5" style="text-align:center" | II
| rowspan="5" | 生殖と発生
| AR
| rowspan="3" | 内分泌ステロイドホルモン受容体(性決定、性生殖)
|-
| ERa, ERb
|-
| PR 
|-
| COUP-TFII
| RARシグナルの調節
|-
| RARa, RARg
| 発生
|-
| rowspan="12" style="text-align:center" | III
| rowspan="12" | 中枢神経系、概日リズム、基礎代謝機能
| TLX
| rowspan="4" | 神経細胞と末梢組織の分化
| rowspan="4" | 中枢神経系
|-
| COUP-TFI
|-
| TR4
|-
| NR4As (NGFIB, NOR1, NURR1)
|-
| Rev-ErbAa, Rev-ErbAb
| rowspan="4" | 概日リズムと代謝の調節
|-
| RORa, RORb
|-
| ERRb, ERRg
|-
| NR4As
|-
| TRa
| rowspan="3" | 心臓血管機能の調節
|-
| MR
|-
| LXRb
|-
| RXRb, RXRg
| 内分泌NRや脂質NRとヘテロダイマーを形成
|-
| rowspan="12" style="text-align:center" | III
| rowspan="12" | 中枢神経系、概日リズム、基礎代謝機能
| TLX
| rowspan="4" | 神経細胞と末梢組織の分化
| rowspan="4" | 中枢神経系
|-
|}


<br>


'''表2.マウス核内受容体の機能による分類'''
'''表2.マウス核内受容体の機能による分類'''  


*クラスターI: ステロイド合成
*クラスターI: ステロイド合成  
*クラスターII: 生殖と発生
*クラスターII: 生殖と発生  
*クラスターIII: 中枢神経系、概日リズム、基礎代謝機能
*クラスターIII: 中枢神経系、概日リズム、基礎代謝機能  
*クラスターIV: 胆汁酸と生体異物の代謝
*クラスターIV: 胆汁酸と生体異物の代謝  
*クラスターVとVI: 脂質代謝とエネルギーの恒常性
*クラスターVとVI: 脂質代謝とエネルギーの恒常性


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