「内側膝状体」の版間の差分

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===MGv===
===MGv===
MGvは3つの亜核の中で、聴覚情報処理の中心的な役割を担っている領域である。MGvを構成する主なニューロンはtufted neuronであり、30%弱がstellate cellである(図2)。MGvは周囲をthe marginal zone (MZ)に囲まれており、さらにpars lateralis (LV), pars ovoidea (PO), pars ventrolateralis (PV)の3つに区別される(図2)。pars lateralisはMGvの代表的部位で、音の高さに沿ったトノトピーが層状に構成されている(Laminae構造)(図3)。Laminae構造はラットでは弱いがネコでは非常にはっきりとした構造となる(Winer et al. 1999)。Tufted neuronの樹状突起も層構造に沿って配置されている。Pars ovoideaではtufted neuronの樹状突起と軸索は渦で巻いた様な形態をとっている(図3)。
MGvは3つの亜核の中で、聴覚情報処理の中心的な役割を担っている領域である。MGvを構成する主なニューロンはtufted neuronであり、30%弱がstellate cellである(図2)。MGvは周囲をthe marginal zone (MZ)に囲まれており、さらにpars lateralis (LV), pars ovoidea (PO), pars ventrolateralis (PV)の3つに区別される(図2)。pars lateralisはMGvの代表的部位で、音の高さに沿ったトノトピーが層状に構成されている(Laminae構造)(図3)。Laminae構造はラットでは弱いがネコでは非常にはっきりとした構造となる(Winer et al. 1999)。Tufted neuronの樹状突起も層構造に沿って配置されている。Pars ovoideaではtufted neuronの樹状突起と軸索は渦で巻いた様な形態をとっている(図3)。
 MGvが主に受ける軸索は同側下丘の中心核(central nucleus of the inferior colliculus, ICC)のニューロンからであり、興奮性入力はグルタミン酸作動性でNMDA/AMPA受容体に作用する。樹状突起には代謝型グルタミン酸受容体も存在する(Tennigkeit et al. 1999)。MGvへの抑制性入力はGABA作動性であり、GABAA/GABAB受容体に作用する(Bartlett and Smith, 1999)。MGvから大脳皮質へは、Core領域(前聴覚野(anterior auditory field, AAF)、一次聴覚野(primary auditory cortex, AI)、ネコやイヌなどのposterior auditory field (P))のIII/IV層にトノトピー構造をもって軸索を伸ばす。聴覚野からの下降性の直接入力は興奮性しかないが、視床網様核(reticular thalamic nucleus, TRN)を経由してMGを抑制する系が存在する(図4)。
 
MGvが主に受ける軸索は同側下丘の中心核(central nucleus of the inferior colliculus, ICC)のニューロンからであり、興奮性入力はグルタミン酸作動性でNMDA/AMPA受容体に作用する。樹状突起には代謝型グルタミン酸受容体も存在する(Tennigkeit et al. 1999)。MGvへの抑制性入力はGABA作動性であり、GABAA/GABAB受容体に作用する(Bartlett and Smith, 1999)。MGvから大脳皮質へは、Core領域(前聴覚野(anterior auditory field, AAF)、一次聴覚野(primary auditory cortex, AI)、ネコやイヌなどのposterior auditory field (P))のIII/IV層にトノトピー構造をもって軸索を伸ばす。聴覚野からの下降性の直接入力は興奮性しかないが、視床網様核(reticular thalamic nucleus, TRN)を経由してMGを抑制する系が存在する(図4)。


MGvは個々のニューロンの周波数チューニングが比較的鋭いが、下丘で見られる様な非常に鋭い周波数チューニングを持つニューロンはあまり見られない。MGvニューロンの潜時は非常に短い。MGvはpars ventrolateralisにおいてはっきりしたトノトピー構造を持つ。即ち、低周波数音に最適周波数を持つニューロンから高周波数音に最適周波数を持つニューロンまでが一方向に並んでいる。しかし種によってこの構造には差異がある。ラットやウサギでは、低周波数に良く応ずるニューロンは背側部に、高周波数に応ずるニューロンは腹側部に位置する(Kuo and Wu, 2012; McMullen e al. 2005)。ネコでは低周波数に応ずるニューロンは腹側部に、高周波数に応ずるニューロンは背側部に位置し逆転している(Imig, 1985)。Pars ovoideaは、ネコでは低周波数から高周波数まで応ずるが、ウサギでは低い周波数に選択的に応ずる領域であると考えられている(Paxinos, 2004)。
MGvは個々のニューロンの周波数チューニングが比較的鋭いが、下丘で見られる様な非常に鋭い周波数チューニングを持つニューロンはあまり見られない。MGvニューロンの潜時は非常に短い。MGvはpars ventrolateralisにおいてはっきりしたトノトピー構造を持つ。即ち、低周波数音に最適周波数を持つニューロンから高周波数音に最適周波数を持つニューロンまでが一方向に並んでいる。しかし種によってこの構造には差異がある。ラットやウサギでは、低周波数に良く応ずるニューロンは背側部に、高周波数に応ずるニューロンは腹側部に位置する(Kuo and Wu, 2012; McMullen e al. 2005)。ネコでは低周波数に応ずるニューロンは腹側部に、高周波数に応ずるニューロンは背側部に位置し逆転している(Imig, 1985)。Pars ovoideaは、ネコでは低周波数から高周波数まで応ずるが、ウサギでは低い周波数に選択的に応ずる領域であると考えられている(Paxinos, 2004)。
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