「錐体細胞」の版間の差分

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英語名:pyramidal cell, 独:Pyramidenzelle, 仏:Cellule pyramidale  
英語名:pyramidal cell, 独:Pyramidenzelle, 仏:cellule pyramidale  


 錐体細胞とは、主に[[大脳皮質]]に存在する投射性の興奮性神経細胞である。[[樹状突起]]は[[棘突起]]を豊富に持つ。大脳皮質の領野内・領野間及び、皮質から皮質下への情報伝達に重要な役割を果たしている。形態的・生理学的な特徴からサブタイプに分けられ、それぞれが機能的にも異なる役割を果たしていると考えられている。[[網膜]]の[[視細胞]]である[[視細胞#.E9.8C.90.E4.BD.93.E7.B4.B0.E8.83.9E|錐体細胞]](cone cell)についてはここでは記載しない。  
 錐体細胞とは、主に[[大脳皮質]]に存在する投射性の興奮性神経細胞である。[[樹状突起]]は[[棘突起]]を豊富に持つ。大脳皮質の領野内・領野間及び、皮質から皮質下への情報伝達に重要な役割を果たしている。形態的・生理学的な特徴からサブタイプに分けられ、それぞれが機能的にも異なる役割を果たしていると考えられている。[[網膜]]の[[視細胞]]である[[視細胞#.E9.8C.90.E4.BD.93.E7.B4.B0.E8.83.9E|錐体細胞]](cone cell)についてはここでは記載しない。  
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== 定義  ==
== 定義  ==


 錐体細胞は主に[[wikipedia:ja:脊椎動物|脊椎動物]]の[[中枢神経系]]に存在し、[[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]においては大脳皮質や[[海馬]]などに分布する興奮性の神経細胞である。[[細胞体]]が錐形をしていることに由来し、[[錐体路]](pyramidal tract)とは名称の由来が異なる。細胞体は直径20-70μm程であり、[[神経伝達物質]]として[[グルタミン酸]]を使う。[[軸索]]は遠距離に投射する。スペインの神経解剖学者[[wikipedia:ja:サンティアゴ・ラモン・イ・カハール|Santiago Ramón y Cajal]]らによる一連の研究により、詳細な形態が明らかにされた。  
 錐体細胞は主に[[wikipedia:ja:脊椎動物|脊椎動物]]の[[中枢神経系]]に存在し、[[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]においては大脳皮質や[[海馬]]などに分布する興奮性の神経細胞である。[[細胞体]]が錐形をしていることに由来し、[[錐体路]](pyramidal tract)とは名称の由来が異なる。細胞体は直径20-70 μm程であり、[[神経伝達物質]]として[[グルタミン酸]]を使う。[[軸索]]は遠距離に投射する。スペインの神経解剖学者[[wikipedia:ja:サンティアゴ・ラモン・イ・カハール|Santiago Ramón y Cajal]]らによる一連の研究により、詳細な形態が明らかにされた。  


 対義語として、[[非錐体細胞]]と呼ばれる神経細胞があり、細胞体は楕円ないし円形で[[尖端樹状突起]]と[[基底樹状突起]]の区別がない。ほとんどの非錐体細胞は皮質下には投射しない。非錐体細胞は、典型的には[[GABA]]作動性の抑制性[[介在細胞]]を指すことが多いが、後述する[[有棘星状細胞]] (spiny stellate cell)などの興奮性細胞もこう呼ばれることがある。  
 対義語として、[[非錐体細胞]]と呼ばれる神経細胞があり、細胞体は楕円ないし円形で[[尖端樹状突起]]と[[基底樹状突起]]の区別がない。ほとんどの非錐体細胞は皮質下には投射しない。非錐体細胞は、典型的には[[GABA]]作動性の抑制性[[介在細胞]]を指すことが多いが、後述する[[有棘星状細胞]] (spiny stellate cell)などの興奮性細胞もこう呼ばれることがある。  
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=== 海馬  ===
=== 海馬  ===


 海馬<ref name="ref4">'''Johnston D, Amaral DG.'''<br>Hippocampus. In: Synaptic organization of the brain 5th edition<br>(Shepherd GM eds). ''Oxford University Press'', 2004</ref>の錐体細胞は[[アンモン角]](Cornu Ammonis, CA)の錐体細胞層(厚みは細胞体5個程度)に限局して存在する。アンモン角は錐体細胞の形態からCA1-CA3の小領域に分けられる。CA3からCA1にかけて、細胞体の大きさは小さくなり、尖端樹状突起は細くなる傾向がある。細胞体は基部で幅20-40μm、高さが40-60μmの錐形であり、尖端樹状突起は[[放線層]]を経て[[網状層|網状]]・[[分子層]]へと海馬の中心方向に向かって伸びる。CA3錐体細胞には[[棘状瘤]](thorny excrescence)と呼ばれる巨大な棘突起が存在し、[[苔状繊維]](mossy fiber)からの入力を受けている。CA3錐体細胞は、[[反回側枝]](recurrent collateral)により互いに神経結合しており、CA2,CA1領域へは[[シャッファー側枝]] (Schaffer側枝)と呼ばれる[[軸索]]を伸ばす。一方、CA1錐体細胞は[[海馬台]](subiculum)や[[嗅内野]](entorhinal cortex)へ投射している。  
 海馬<ref name="ref4">'''Johnston D, Amaral DG.'''<br>Hippocampus. In: Synaptic organization of the brain 5th edition<br>(Shepherd GM eds). ''Oxford University Press'', 2004</ref>の錐体細胞は[[アンモン角]](Cornu Ammonis, CA)の錐体細胞層(厚みは細胞体5個程度)に限局して存在する。アンモン角は錐体細胞の形態から[[CA1]]-[[CA3]]の小領域に分けられる。CA3からCA1にかけて、細胞体の大きさは小さくなり、尖端樹状突起は細くなる傾向がある。細胞体は基部で幅20-40μm、高さが40-60μmの錐形であり、尖端樹状突起は[[放線層]]を経て[[網状層|網状]]・[[分子層]]へと海馬の中心方向に向かって伸びる。CA3錐体細胞には[[棘状瘤]](thorny excrescence)と呼ばれる巨大な棘突起が存在し、[[苔状繊維]](mossy fiber)からの入力を受けている。CA3錐体細胞は、[[反回側枝]](recurrent collateral)により互いに神経結合しており、[[CA2]],CA1領域へは[[シャッファー側枝]] (Schaffer側枝)と呼ばれる軸索を伸ばす。一方、CA1錐体細胞は[[海馬台]](subiculum)や[[嗅内野]](entorhinal cortex)へ投射している。  


=== 大脳新皮質  ===
=== 大脳新皮質  ===
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|}
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1層には錐体投射細胞は存在しないので省略したが、錐体細胞の尖端樹状突起が密に分岐しており、シナプス結合そのものは豊富である。<br> 層間結合・投射先共に、皮質領野によって違いがみられる。<br> * 結合の同定には様々な手法があり、相互に矛盾しない結果が必ずしも得られているわけではないので、詳細については引用文献などを参照されたい<ref name=ref28><pubmed>19632814</pubmed></ref> <ref name=ref29><pubmed>19186171</pubmed></ref> <ref name=ref30><pubmed>21245906</pubmed></ref> <ref name=ref31><pubmed>16624959</pubmed></ref> <ref name=ref32><pubmed>22171028</pubmed></ref>。錐体細胞のタイプによって、入出力関係に差があることも報告されている<ref name=ref30><pubmed>21245906</pubmed></ref> <ref name=ref31><pubmed>16624959</pubmed></ref>。層内の相互結合は全層で見られるので、表では省略した。<br> ** ここで言う皮質投射は同側領野間および半球間投射。<br> *** 4層は感覚野で発達しており、4層ニューロンの多くは同一または近傍の領野にしか投射しない。  
 1層には錐体投射細胞は存在しないので省略したが、錐体細胞の尖端樹状突起が密に分岐しており、シナプス結合そのものは豊富である。<br> 層間結合・投射先共に、皮質領野によって違いがみられる。<br> * 結合の同定には様々な手法があり、相互に矛盾しない結果が必ずしも得られているわけではないので、詳細については引用文献などを参照されたい<ref name=ref28><pubmed>19632814</pubmed></ref> <ref name=ref29><pubmed>19186171</pubmed></ref> <ref name=ref30><pubmed>21245906</pubmed></ref> <ref name=ref31><pubmed>16624959</pubmed></ref> <ref name=ref32><pubmed>22171028</pubmed></ref>。錐体細胞のタイプによって、入出力関係に差があることも報告されている<ref name=ref30><pubmed>21245906</pubmed></ref> <ref name=ref31><pubmed>16624959</pubmed></ref>。層内の相互結合は全層で見られるので、表では省略した。<br> ** ここで言う皮質投射は同側領野間および半球間投射。<br> *** 4層は感覚野で発達しており、4層ニューロンの多くは同一または近傍の領野にしか投射しない。  




 1層は非錐体細胞で占められている。  
 1層は非錐体細胞で占められている。  


 2層の錐体細胞は比較的小さく、尖端樹状突起は細胞体の近くで分岐しtuftを形成する。その軸索は主として皮質内結合や半球間結合に関わることが知られている。
 2層の錐体細胞は比較的小さく、尖端樹状突起は細胞体の近くで分岐しtuftを形成する。その軸索は主として皮質内結合や[[半球]]間結合に関わることが知られている。


 3層は中型の錐体細胞を含み、皮質間・半球間投射に主に関与する。  
 3層は中型の錐体細胞を含み、皮質間・半球間投射に主に関与する。  
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 6層の錐体細胞は、比較的小さな細胞体と細い尖端樹状突起を持ち、主として[[視床]]へ投射する。  
 6層の錐体細胞は、比較的小さな細胞体と細い尖端樹状突起を持ち、主として[[視床]]へ投射する。  


 また、5層深部と6層にはmodified pyramidal cellと呼ばれる非典型的な形態の錐体細胞が比較的多く観察され、その尖端樹状突起が伸びる方向は細胞によって様々である。しかし、棘突起の存在や興奮性のシナプス結合など、多くの特徴を錐体細胞と共有している<ref name="ref7"><pubmed>19052106</pubmed></ref>。
 また、5層深部と6層には[[modified pyramidal cell]]と呼ばれる非典型的な形態の錐体細胞が比較的多く観察され、その尖端樹状突起が伸びる方向は細胞によって様々である。しかし、[[棘突起]]の存在や興奮性のシナプス結合など、多くの特徴を錐体細胞と共有している<ref name="ref7"><pubmed>19052106</pubmed></ref>。


== 皮質錐体細胞間の結合 ==
== 皮質錐体細胞間の結合 ==
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[[Image:錐体細胞 図2-1.png|thumb|250px|'''図2.霊長類の領野間結合における出力細胞と投射線維の層分布'''<br>階層性結合パターンによってFF (feedforward)・FB(feedback)・lateral connection に分けられ、それぞれに特徴的な層分布が見られる。三角形は出力細胞の分布を示し、投射繊維の密度は黒白の濃淡で示した。]]  
[[Image:錐体細胞 図2-1.png|thumb|250px|'''図2.霊長類の領野間結合における出力細胞と投射線維の層分布'''<br>階層性結合パターンによってFF (feedforward)・FB(feedback)・lateral connection に分けられ、それぞれに特徴的な層分布が見られる。三角形は出力細胞の分布を示し、投射繊維の密度は黒白の濃淡で示した。]]  


 錐体細胞間の興奮性結合は、機能性カラム内や単一の領野内での局所的な結合(local/ intrinsic connection)と、機能性カラム間・領野間・大脳半球間などの長距離の結合(long range/ extrinsic/ inter-areal connection)とに分けることができる。
 錐体細胞間の興奮性結合は、[[機能性カラム]]内や単一の領野内での局所的な結合(local/ intrinsic connection)と、機能性カラム間・領野間・大脳半球間などの長距離の結合(long range/ extrinsic/ inter-areal connection)とに分けることができる。


 局所的結合については、層間の結合様式<ref name=ref28 /> <ref name=ref30 /> <ref name=ref29 />(表)に加え、細胞レベルでの詳細な結合パターンが明らかにされてきている。同じ投射先を持つ錐体細胞同士や、感覚入力に対する応答性を共有する錐体細胞同士では局所結合の確率が高い<ref><pubmed>21478872</pubmed></ref> <ref name=ref31 /> <ref name=ref32 /> <ref><pubmed>15729343</pubmed></ref>。視覚野では、同じ刺激反応特性を示す互いに離れた(0.5-数mm)機能性カラム同士が、錐体細胞の軸索によって相互に結合している<ref><pubmed>9045738</pubmed></ref> <ref><pubmed>2746337</pubmed></ref> <ref><pubmed>9373017</pubmed></ref>。
 局所的結合については、層間の結合様式<ref name=ref28 /> <ref name=ref30 /> <ref name=ref29 />(表)に加え、細胞レベルでの詳細な結合パターンが明らかにされてきている。同じ投射先を持つ錐体細胞同士や、感覚入力に対する応答性を共有する錐体細胞同士では局所結合の確率が高い<ref><pubmed>21478872</pubmed></ref> <ref name=ref31 /> <ref name=ref32 /> <ref><pubmed>15729343</pubmed></ref>。[[視覚野]]では、同じ刺激反応特性を示す互いに離れた(0.5-数mm)機能性カラム同士が、錐体細胞の軸索によって相互に結合している<ref><pubmed>9045738</pubmed></ref> <ref><pubmed>2746337</pubmed></ref> <ref><pubmed>9373017</pubmed></ref>。


 皮質領野には機能的な階層性があり、感覚野を例に取ると、感覚刺激に対する応答が最初に現れる一次領野から高次領野に情報が運ばれていくに従い、刺激応答性が特異化すると考えられている<ref><pubmed>3793980</pubmed></ref> <ref>'''Van Essen DC, Maunsell JHR'''<br>Hierarchical organization and functional streams in the visual cortex.<br>''Trends in Neurosci'' :370-375. (1983) </ref>。機能的階層性の観点から、領野間の結合様式は、低次から高次の階層へのfeedforward(FF)connection、高次から低次の階層へのfeedback(FB) connection、似たような階層間のlateral connectionに分けることができる<ref name=ref120><pubmed>6655500</pubmed></ref>。
 皮質領野には機能的な階層性があり、[[感覚野]]を例に取ると、[[感覚]]刺激に対する応答が最初に現れる一次領野から高次領野に情報が運ばれていくに従い、刺激応答性が特異化すると考えられている<ref><pubmed>3793980</pubmed></ref> <ref>'''Van Essen DC, Maunsell JHR'''<br>Hierarchical organization and functional streams in the visual cortex.<br>''Trends in Neurosci'' :370-375. (1983) </ref>。機能的階層性の観点から、領野間の結合様式は、低次から高次の階層へのfeedforward(FF)connection、高次から低次の階層へのfeedback(FB) connection、似たような階層間のlateral connectionに分けることができる<ref name=ref120><pubmed>6655500</pubmed></ref>。


 霊長類の視覚野では、FF投射は主に2/3層の錐体細胞から起こり、標的領野の4層にクラスター状の終末を形成する<ref name=ref121><pubmed>17580069</pubmed></ref>。これに対し、FB投射は4層以外の錐体細胞から起こり、標的領野では4層以外の層へ拡散した終末を形成する<ref name=ref121 />。出力細胞・入力線維の層分布は領野間結合ごとに固有のパターンがあり、多様なタイプの錐体細胞が関わることが示唆されている<ref><pubmed>11793347</pubmed></ref> <ref><pubmed>16506191</pubmed></ref> <ref><pubmed>19741135</pubmed></ref> <ref><pubmed>10777791</pubmed></ref> <ref><pubmed>16519656</pubmed></ref> <ref>'''Rockland KS'''<br>Elements of cortical architecture: hierarchy revisited. In: Cerebral Cortex vol. 12 (Rockland KS, Kaas JH, Peters A eds).  Plenum Press. (1997) </ref> <ref><pubmed>12815244</pubmed></ref>。FF投射・FB投射のどちらにおいても、複数の領野へ投射する錐体細胞は少なく<ref><pubmed>3840201</pubmed></ref> <ref><pubmed>10972937</pubmed></ref> <ref><pubmed>12843271</pubmed></ref>、加えて、一つの錐体細胞がFF投射とFB投射の両方に関わることはほとんどないことが報告されている<ref name=ref132><pubmed>21618232</pubmed></ref>。また半球間結合や高次脳領野間結合では、結合線維はlateral connectionに特徴的な皮質全層にまたがるカラム様の終末を作る<ref name=ref120 />(図2)。
 [[霊長類]]の[[視覚野]]では、FF投射は主に2/3層の錐体細胞から起こり、標的領野の4層にクラスター状の終末を形成する<ref name=ref121><pubmed>17580069</pubmed></ref>。これに対し、FB投射は4層以外の錐体細胞から起こり、標的領野では4層以外の層へ拡散した終末を形成する<ref name=ref121 />。出力細胞・入力線維の層分布は領野間結合ごとに固有のパターンがあり、多様なタイプの錐体細胞が関わることが示唆されている<ref><pubmed>11793347</pubmed></ref> <ref><pubmed>16506191</pubmed></ref> <ref><pubmed>19741135</pubmed></ref> <ref><pubmed>10777791</pubmed></ref> <ref><pubmed>16519656</pubmed></ref> <ref>'''Rockland KS'''<br>Elements of cortical architecture: hierarchy revisited. In: Cerebral Cortex vol. 12 (Rockland KS, Kaas JH, Peters A eds).  Plenum Press. (1997) </ref> <ref><pubmed>12815244</pubmed></ref>。FF投射・FB投射のどちらにおいても、複数の領野へ投射する錐体細胞は少なく<ref><pubmed>3840201</pubmed></ref> <ref><pubmed>10972937</pubmed></ref> <ref><pubmed>12843271</pubmed></ref>、加えて、一つの錐体細胞がFF投射とFB投射の両方に関わることはほとんどないことが報告されている<ref name=ref132><pubmed>21618232</pubmed></ref>。また半球間結合や高次脳領野間結合では、結合線維はlateral connectionに特徴的な皮質全層にまたがるカラム様の終末を作る<ref name=ref120 />(図2)。


 上述のような階層的領野間結合は他の感覚領野や動物種でも見られるが、層選択性などについては差異がある<ref name=ref132 /> <ref><pubmed>7690066</pubmed></ref> <ref><pubmed>7869111</pubmed></ref> <ref><pubmed>6520238</pubmed></ref>。新しい細胞ラベル法やOptogeneticsの応用により、感覚野-運動野間のような機能的に異なる領野にまたがる投射も含め、長距離結合に関する知見はさらに深められつつある<ref><pubmed>21982373</pubmed></ref>。
 上述のような階層的領野間結合は他の感覚領野や動物種でも見られるが、層選択性などについては差異がある<ref name=ref132 /> <ref><pubmed>7690066</pubmed></ref> <ref><pubmed>7869111</pubmed></ref> <ref><pubmed>6520238</pubmed></ref>。新しい細胞ラベル法やOptogeneticsの応用により、感覚野-運動野間のような機能的に異なる領野にまたがる投射も含め、長距離結合に関する知見はさらに深められつつある<ref><pubmed>21982373</pubmed></ref>。
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[[image:錐体細胞_図2.jpg|thumb|250px|'''図3. In vivo条件で記録したregular-spiking (RS), fast-rhythmic bursting(FRB), intrinsically bursting (IB)細胞の通電(0.8nA, 0.2s)に対する応答'''<br>(Steriade et al., 2004<ref name=ref27><pubmed>14735115</pubmed></ref>より許可を得て転載)]]
[[image:錐体細胞_図2.jpg|thumb|250px|'''図3. In vivo条件で記録したregular-spiking (RS), fast-rhythmic bursting(FRB), intrinsically bursting (IB)細胞の通電(0.8nA, 0.2s)に対する応答'''<br>(Steriade et al., 2004<ref name=ref27><pubmed>14735115</pubmed></ref>より許可を得て転載)]]


 大脳皮質の錐体細胞は、脳スライス標本(in vitro)やin vivo条件の電気生理記録から得られた発火パターンから、いくつかのサブタイプに分けられてきた<ref name="ref8"><pubmed>6296328</pubmed></ref> <ref name="ref9"><pubmed>2999347</pubmed></ref> <ref name="ref10"><pubmed>1729440</pubmed></ref> (図3)。  
 大脳皮質の錐体細胞は、脳[[スライス標本]](in vitro)やin vivo条件の電気生理記録から得られた発火パターンから、いくつかのサブタイプに分けられてきた<ref name="ref8"><pubmed>6296328</pubmed></ref> <ref name="ref9"><pubmed>2999347</pubmed></ref> <ref name="ref10"><pubmed>1729440</pubmed></ref> (図3)。  


 最も多く見られるのは、脱分極パルスに対して等間隔で規則的に発火するregular spiking(RS) 細胞であり、[[wikipedia:Vernon Benjamin Mountcastle|Mountcastle]]によって名づけられた<ref name="ref11"><pubmed>4977839</pubmed></ref>。RS細胞は、閾値以上の電流注入に対して持続的な反復発火で応答し、その注入電流と発火頻度は線形に相関していることから<ref name="ref12"><pubmed>6087761</pubmed></ref> <ref name="ref13"><pubmed>6481432</pubmed></ref>、細胞への入力の時間情報などを運ぶのに適すると考えられる。持続通電中に発火頻度が徐々に落ちる適応(accommodation)の程度によってさらにサブグループに分けられることもある<ref name="ref10"><pubmed>1729440</pubmed></ref> <ref name="ref14"><pubmed>12626627</pubmed></ref> <ref name="ref15"><pubmed>8395586</pubmed></ref>。  
 最も多く見られるのは、脱分極パルスに対して等間隔で規則的に発火するregular spiking(RS) 細胞であり、[[wikipedia:Vernon Benjamin Mountcastle|Mountcastle]]によって名づけられた<ref name="ref11"><pubmed>4977839</pubmed></ref>。RS細胞は、閾値以上の電流注入に対して持続的な反復発火で応答し、その注入電流と発火頻度は線形に相関していることから<ref name="ref12"><pubmed>6087761</pubmed></ref> <ref name="ref13"><pubmed>6481432</pubmed></ref>、細胞への入力の時間情報などを運ぶのに適すると考えられる。持続通電中に発火頻度が徐々に落ちる適応(accommodation)の程度によってさらにサブグループに分けられることもある<ref name="ref10"><pubmed>1729440</pubmed></ref> <ref name="ref14"><pubmed>12626627</pubmed></ref> <ref name="ref15"><pubmed>8395586</pubmed></ref>。  


 Intrinsically Bursting(IB)細胞は、脱分極パルスに対して高頻度で連続発火し<ref name="ref8"><pubmed>6296328</pubmed></ref>、特に閾値より少し上の電流注入に対しては顕著な脱分極に乗った3-5発のバースト発火(約200Hz)を示すのが特徴である。  
 Intrinsically Bursting(IB)細胞は、[[脱分極]]パルスに対して高頻度で連続発火し<ref name="ref8"><pubmed>6296328</pubmed></ref>、特に[[閾値]]より少し上の電流注入に対しては顕著な脱分極に乗った3-5発のバースト発火(約200Hz)を示すのが特徴である。  


 Fast rhythmic bursting (FRB) 細胞は、通電に対して短いinter-burst intervalで2-5発(200-600Hz)のスパイクから為るバーストを発射し[[Chattering neuron]]とも呼ばれる<ref name="ref16"><pubmed>8810245</pubmed></ref>。持続的な脱分極状態の時は、20-80Hzの律動的なバーストとなる<ref name="ref16"><pubmed>8810245</pubmed></ref> <ref name="ref17"><pubmed>10864940</pubmed></ref>。個々のスパイクは小さな[[後過分極]](afterhyperpolarization, AHP)とそれに続く[[後脱分極]](afterdepolarization, ADP)の要素を含む。  
 Fast rhythmic bursting (FRB) 細胞は、通電に対して短いinter-burst intervalで2-5発(200-600Hz)のスパイクから為るバーストを発射し[[Chattering neuron]]とも呼ばれる<ref name="ref16"><pubmed>8810245</pubmed></ref>。持続的な脱分極状態の時は、20-80Hzの律動的なバーストとなる<ref name="ref16"><pubmed>8810245</pubmed></ref> <ref name="ref17"><pubmed>10864940</pubmed></ref>。個々のスパイクは小さな[[後過分極]](afterhyperpolarization, AHP)とそれに続く[[後脱分極]](afterdepolarization, ADP)の要素を含む。  

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