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[[Image:Node of Ranvier.png|thumb|right|347x216px|図2:有髄神経の構造とサブドメイン]]  
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神経軸索の髄鞘と髄鞘の隙間は特別な名称がつけられており、非常に特異な構造をしている。ノード(node)に電位作動型イオンチャネルNav1.2や Nav1.6、アンキリンG(Ankyrin G)などが、パラノード(paranode)にはCasprなど、ジャクスタパラノード(jaxtaparanode)にはKv1.2などのカリウムチャネルなどが分布する。中枢神経系(オリゴデンドロサイト)と末梢神経系(シュワン細胞)で髄鞘の巻き方が少し異なる。オリゴデンドロサイトは離れた軸索に別々に髄鞘を形成するのに対し、シュワン細胞はいくつかの軸索を抱え込むようにして包んだ後、1本の軸索を選別して、その周りに髄鞘を形成する[[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22192173]]。髄鞘を構成する蛋白質も少し異なる。 中枢神経系では髄鞘の主要構成蛋白質はPLP,MBPあるのに対し、末梢神経系ではP0(ピーゼロ)とP2が主要構成蛋白質である。
髄鞘は細胞形質膜の多層構造体であるため、細胞形質膜や細胞内小胞膜などの他の多くの細胞と比べて蛋白質成分が少なく、脂質が約8割程度を占め、残りが蛋白質である。髄鞘を構成する主な脂質は糖脂質ガラクトセレブロシド(Galactocerebroside)とその硫酸化誘導体スルファチド(Salfatide)である[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9530920]。神経軸索の髄鞘と髄鞘の隙間は特別な名称がつけられており、非常に特異な構造をしている。ノード(node)に電位作動型イオンチャネルNav1.2や Nav1.6、アンキリンG(Ankyrin G)などが、パラノード(paranode)にはCasprなど、ジャクスタパラノード(jaxtaparanode)にはKv1.2などのカリウムチャネルなどが分布する。中枢神経系(オリゴデンドロサイト)と末梢神経系(シュワン細胞)で髄鞘の巻き方が少し異なる。オリゴデンドロサイトは離れた軸索に別々に髄鞘を形成するのに対し、シュワン細胞はいくつかの軸索を抱え込むようにして包んだ後、1本の軸索を選別して、その周りに髄鞘を形成する[[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22192173]]。髄鞘を構成する蛋白質も少し異なる。中枢神経系では髄鞘の主要構成蛋白質はPLP,MBPあるのに対し、末梢神経系ではP0(ピーゼロ)とP2が主要構成蛋白質である。その他の蛋白質は中枢神経系ではCNPase、MOG、MAGなどがあり、末梢神経系ではPMP22、MAG、MOGなどが発現している。


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== 脱髄性疾患(Demyelinating disease)  ==
== 脱髄性疾患(Demyelinating disease)  ==


正常な発生における髄鞘形成がなされたのち、神経軸索から髄鞘が脱落すること[[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18558866]]。この疾患を脱髄性疾患(demyelinating disease)といい、髄鞘の消失により神経伝導速度が遅くなり、さまざまな神経症状が引き起こされる。脱髄が起こる場所により症状はさまざまである。運動麻痺、感覚麻痺、視力障害などが起こる。中枢神経系では日本では特定疾患に指定されている多発性硬化症(Multiple sclerosis;MS)がある。MSはもっともよく起こる脱髄性疾患であり、若年成人での神経障害の主な原因である。約80-90%のMS患者が二十代後半で再発-寛解型になり、寛解期には共通してある一定程度神経障害が一過的に回復する。発病から数年後、多くの患者が実質上機能回復はなくなり第二ステージに移り、病状は進行型になる。そして、あとの残り10-20%の患者は始めから寛解を経験することのない進行型である[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22189514]。カルシウムチャネルブロッカーであるFampridine(Fampyra)はMS治療において初めて機能回復に成功した経口投与薬であるが、転ける、背中が痛む、めまいがする、不眠、疲労感、悪心、平衡障害が副作用を伴うことが知られている[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2435223][http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3001584][http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6631441][http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7354839]。インターフェロンβ(Interferon β)とグラチマラー酢酸塩(Glatiramer acetate)が現在もっともよく用いられている。根本治療法はDisease-modifying therapy(DMT)といわれ、これらの薬剤はこのDMTに属しているが、おもにこれらの薬剤が用いられるのは再発-寛解型の患者にのみである。[Nakaharaの論文]。また、末梢神経系ではギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome)や慢性炎症脱髄性疾患多発神経炎(Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy; CIDP)、などがある。また、最近の研究により統合失調症との関連が示唆されている。[よしむら9,10]髄鞘形成が不完全な髄鞘形成不全疾患(dysmyelination disease)とは区別される。 <br> <br>  
正常な発生における髄鞘形成がなされたのち、神経軸索から髄鞘が脱落すること[[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18558866]]。この疾患を脱髄性疾患(demyelinating disease)といい、髄鞘の消失により神経伝導速度が遅くなり、さまざまな神経症状が引き起こされる。脱髄が起こる場所により症状はさまざまである。運動麻痺、感覚麻痺、視力障害などが起こる。中枢神経系では日本では特定疾患に指定されている多発性硬化症(Multiple sclerosis;MS)がある。MSはもっともよく起こる脱髄性疾患であり、若年成人での神経障害の主な原因である。約80-90%のMS患者が二十代後半で再発-寛解型になり、寛解期には共通してある一定程度神経障害が一過的に回復する。発病から数年後、多くの患者が実質上機能回復はなくなり第二ステージに移り、病状は進行型になる。そして、あとの残り10-20%の患者は始めから寛解を経験することのない進行型である[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22189514]。カルシウムチャネルブロッカーであるFampridine(Fampyra)はMS治療において初めて機能回復に成功した経口投与薬であるが、転ける、背中が痛む、めまいがする、不眠、疲労感、悪心、平衡障害が副作用を伴うことが知られている[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2435223][http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3001584][http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6631441][http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7354839]。インターフェロンβ(Interferon β)とグラチマラー酢酸塩(Glatiramer acetate)が現在もっともよく用いられている。根本治療法はDisease-modifying therapy(DMT)といわれ、これらの薬剤はこのDMTに属しているが、おもにこれらの薬剤が用いられるのは再発-寛解型の患者にのみである。[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22189514]。また、末梢神経系ではギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome)や慢性炎症脱髄性疾患多発神経炎(Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy; CIDP)、などがある。また、最近の研究により統合失調症との関連が示唆されている。[よしむら9,10]髄鞘形成が不完全な髄鞘形成不全疾患(dysmyelination disease)とは区別される。 <br> <br>  


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== 参考文献  ==
== 参考文献  ==
1:Coetzee T et al., New perspectives on the function of myelin galactolipids. Trends Neurosci.: 1998, 21(3);126-30 [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9530920 [PubMed]]<br>
2:Pereira JA et al., Molecular mechanisms regulating myelination in the peripheral nervous system.Trends Neurosci.: 2012, 35(2);123-34 [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22192173 [PubMed]]<br>
3:Rasband MN et al., The axon initial segment and the maintenance of neuronal polarity. Nat. Rev. Neurosci.: 2010, 11(8);552-62. [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20631711 [PubMed]]<br>
4:Klaus-Armin Nave, Bruce D Trapp. Axon-glial signaling and the glial support of axon function. Annu. Rev. Neurosci.: 2008, 31;535-61[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18558866 [PubMed]] <br> 


1:Jorge A Pereira, Frédéric Lebrun-Julien, Ueli Suter. Molecular mechanisms regulating myelination in the peripheral nervous system.Trends Neurosci.: 2012, 35(2);123-34 [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22192173 [PubMed]]<br>
,10:Nakahara J et al., Clin Rev Allergy Immunol.:2012 Feb;42(1):26-34 [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22189514 [PubMed]]<br>
2:Rasband MN et al., The axon initial segment and the maintenance of neuronal polarity. Nat. Rev. Neurosci.: 2010, 11(8);552-62. [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20631711 [PubMed]]<br>
3:Klaus-Armin Nave, Bruce D Trapp Axon-glial signaling and the glial support of axon function. Annu. Rev. Neurosci.: 2008, 31;535-61[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18558866 [PubMed]] <br>


4:Nakahara J et al., Clin Rev Allergy Immunol.:2012 Feb;42(1):26-34 [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22189514 [PubMed]]<br>
6:Salzer JL et al., Glia 56:1532-1540 (2008) Molecular Domains of Myelinated Axons in the Peripheral Nervous System [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18803321 [PubMed]]<br>  


5:James L. Salzer et al., Glia 56:1532-1540 (2008) Molecular Domains of Myelinated Axons in the Peripheral Nervous System [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18803321 [PubMed]]<br>
7:Buffington SA et al., European Journal of Neuroscience, Vol. 34, pp. 1609-1619 (2011) The axon initial segment in nervous system disease and injury. [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22103418 [PubMed]]<br>  
 
5:Shelly A. Buffington et al., European Journal of Neuroscience, Vol. 34, pp. 1609-1619 (2011) The axon initial segment in nervous system disease and injury. [http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22103418 [PubMed]]<br>  


(執筆者:清水崇弘、池中一裕 担当編集委員:柚崎通介)
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