「メタ認知」の版間の差分

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メタ認知能力と言語能力との結びつきは強く,言語能力が未発達である新生児,乳児にはメタ認知能力は備わっていないと考えられてきた.メタ認知能力の発達は,行動主体としての自己に気付くことから始まり,5,6歳頃から周囲の状況と自己の能力を考慮して起こりうる事態を予測するなど,いくつかのメタ認知的機能について成人と同様の能力が有されていることがわかった.(Flavel, 1979; Lockl &amp; Schneider, 2006, 2007; Uehara, 2011)<br>  
メタ認知能力と言語能力との結びつきは強く,言語能力が未発達である新生児,乳児にはメタ認知能力は備わっていないと考えられてきた.メタ認知能力の発達は,行動主体としての自己に気付くことから始まり,5,6歳頃から周囲の状況と自己の能力を考慮して起こりうる事態を予測するなど,いくつかのメタ認知的機能について成人と同様の能力が有されていることがわかった.(Flavel, 1979; Lockl &amp; Schneider, 2006, 2007; Uehara, 2011)<br>  


'''サピエンスとの関係'''<br>メタ認知はサピエンスに特有の能力で,それゆえサピエンスの定義のひとつであると考えられてきた.しかし近年,マカクザルや類人猿,イルカなどが,自己の記憶知識に対する「確信度」「確かさ」の認識を持ち合わせていること,また不確実要素についてはモニタリングを行っていることを示す知見が得られている.一方,鳥類のメタ認知能力に関する研究は結論に至っていない.2007年の研究でラットのメタ認知能力が報告されているが,さらなる分析ではラットは単にオペラント条件付けの法則に従ったとも考えられている.(Itakura,2007; Fujita, 2009)<br>  
'''他の動物におけるメタ認知能力'''<br>メタ認知はサピエンスに特有の能力で,それゆえサピエンスの定義のひとつであると考えられてきた.しかし近年,マカクザルや類人猿,イルカなどが,自己の記憶知識に対する「確信度」「確かさ」の認識を持ち合わせていること,また不確実要素についてはモニタリングを行っていることを示す知見が得られている.一方,鳥類のメタ認知能力に関する研究は結論に至っていない.2007年の研究でラットのメタ認知能力が報告されているが,さらなる分析ではラットは単にオペラント条件付けの法則に従ったとも考えられている.(Itakura,2007; Fujita, 2009)<br>  


= '''研究'''  =
= '''神経基盤'''  =


メタ認知研究の根源は,幼児が記憶方略を教示された直後には有効に実行するのにその後自発的には使用しないという現象が,メタ記憶の欠如として説明されたことに始まる.発達心理学,教育心理学の分野では,主に子供の課題遂行能力や学習能力の向上という視点から研究された.実験心理学では,モニタリング(自身の記憶に関する判断)と制御(判断を行動に結びつける)の間でメタ認知に違いがあるとし,認知神経科学では,メタ認知的なモニタリングと制御は,他の皮質領野からの入力やフィードバックを受けた前頭前野の機能と考えられている.人工知能とモデリングの分野でもメタ認知研究は行われている.
= '''研究の歴史'''  =


=== '''神経基盤'''  ===
メタ認知研究の根源は,幼児が記憶方略を教示された直後には有効に実行するのにその後自発的には使用しないという現象が,メタ記憶の欠如として説明されたことに始まる.発達心理学,教育心理学の分野では,主に子供の課題遂行能力や学習能力の向上という視点から研究された.実験心理学では,モニタリング(自身の記憶に関する判断)と制御(判断を行動に結びつける)の間でメタ認知に違いがあるとし,認知神経科学では,メタ認知的なモニタリングと制御は,他の皮質領野からの入力やフィードバックを受けた前頭前野の機能と考えられている.人工知能とモデリングの分野でもメタ認知研究は行われている.<br>


=== 最近の研究  ===
=== 最近の研究  ===
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