31
回編集
Ryouheinakayama (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
Ryouheinakayama (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
||
1行目: | 1行目: | ||
英:metacognition、独:Meta-Anerkennung | 英:metacognition、独:Meta-Anerkennung | ||
自己の認知活動(知覚、情動、記憶、思考など)を客観的に捉え評価した上で制御することである。認知を認知すること("cognition about cognition")、あるいは知っていることを知っていること("knowing about knowing")とも言われる。またそれを行う心理的な能力をメタ認知能力という。 | |||
メタ認知は様々な形でみられ、学習や問題解決において、いつどのような方略を用いるかといった知識や判断も含まれる。現在では多くの教育現場で、メタ認知能力の育成は重要な課題となっている。またメタ記憶とは、自己の記憶や記憶過程に対する客観的な認知であり、メタ認知の重要な要素のひとつである。 | メタ認知は様々な形でみられ、学習や問題解決において、いつどのような方略を用いるかといった知識や判断も含まれる。現在では多くの教育現場で、メタ認知能力の育成は重要な課題となっている。またメタ記憶とは、自己の記憶や記憶過程に対する客観的な認知であり、メタ認知の重要な要素のひとつである。 | ||
9行目: | 9行目: | ||
= '''概要''' = | = '''概要''' = | ||
メタ認知という用語はFlavell(1976)において初めて用いられた。 | |||
「メタ認知とは認知過程及びその関連事物(情報やデータなど)に関する自己認知をさす。例えば、私がAよりもBの方が学習が困難であると気づいたとしたり、あるいはCが事実であると認める前にそれについて再確認しようと思いついたとしたら、それはメタ認知を行っているということだ。」 | |||
自己の認知活動のモニタリングはメタ認知の根幹を成す。それは基本的な感覚応答から、行動目標を達成する上で複雑に組み合わされる脳内処理過程(高次認知機能)にまで及ぶ。モニタリングされた情報を意識的または無意識的に吟味することで、様々な認知活動の制御が可能となる。例えば、自分の能力と作業の難易度を照合し今後の行動に関して適切な判断を下すこと、行動目標に対して適切な課題を設定すること、状況に応じて適切な方略または道具を選ぶこと、モニタリングそのものを効率的に行うことなどである。これらの適応的な認知活動は、複雑な問題の解決にあたり、いつどのような知識に基づき行動するべきかを把握し実行する能力に支えられている。<br> | |||
=== '''分類''' === | === '''分類''' === | ||
19行目: | 19行目: | ||
メタ認知は大きく3つに分類されている。 | メタ認知は大きく3つに分類されている。 | ||
1、メタ認知的知識(metacognitive knowledge/awareness)は、認知に関する知識。自己だけではなく,他者の認知や記憶についての知識も含まれる(例「AさんはBさんよりも想像力に富んでいる」)。一般的にメタ記憶はこれに含まれる。 | |||
2、メタ認知的調整(metacognitive regulation)は、学習の制御を補うような行動を通し、認知や学習をの経験を調整することである。 | |||
3、メタ認知的経験(metacognitive experiences)は、現在進行形のメタ認知的な経験(活動)のことである。<br> | |||
= '''機能''' = | = '''機能''' = | ||
37行目: | 37行目: | ||
= '''メタ認知の発達''' = | = '''メタ認知の発達''' = | ||
メタ認知能力と言語能力との結びつきは強く、言語能力が未発達である新生児、乳児にはメタ認知能力は備わっていないと考えられてきた。メタ認知能力の発達は、行動主体としての自己に気付くことから始まり、5, | メタ認知能力と言語能力との結びつきは強く、言語能力が未発達である新生児、乳児にはメタ認知能力は備わっていないと考えられてきた。メタ認知能力の発達は、行動主体としての自己に気付くことから始まり、5,6歳頃から周囲の状況と自己の能力を考慮して起こりうる事態を予測するなど、いくつかのメタ認知的機能について成人と同様の能力が有されていることがわかった。(Flavel, 1979; Lockl & Schneider, 2006, 2007; Uehara, 2011)<br> | ||
=== 他の動物におけるメタ認知能力 === | === 他の動物におけるメタ認知能力 === | ||
メタ認知はサピエンスに特有の能力で、それゆえサピエンスの定義のひとつであると考えられてきた。しかし近年、マカクザルや類人猿、イルカなどが、自己の記憶知識に対する「確信度」「確かさ」の認識を持ち合わせていること、また不確実要素についてモニタリングを行っていることを示す知見が得られている。一方、鳥類のメタ認知能力に関する研究は結論に至っていない。2007年の研究でラットのメタ認知能力が報告されているが、さらなる分析ではラットは単にオペラント条件付けの法則に従ったとも考えられている。(Itakura,2007; Fujita, 2009)<br> | |||
= '''神経基盤''' = | = '''神経基盤''' = | ||
53行目: | 53行目: | ||
=== 各分野におけるメタ認知研究 === | === 各分野におけるメタ認知研究 === | ||
発達心理学、教育心理学の分野では、主に子供の課題遂行能力や学習能力の向上という視点から研究が行われてきた。Piagetを中心とする自己制御(self-regulation)研究では,人間は「能動的に」調整/学習すると考えられた。 | |||
実験心理学では、モニタリング(自身の記憶に関する判断)と制御(判断を行動に結びつける)の間のメタ認知の質的な違いに注目した研究が多い。認知神経科学では、メタ認知的なモニタリングと制御は、他の皮質領野からの入力やフィードバックを受けた前頭前野における機能と考えられている。人工知能やモデリングの分野においても、メタ認知研究が行われている。<br> | |||
=== 最近の研究動向 === | === 最近の研究動向 === | ||
70行目: | 72行目: | ||
内観 | 内観 | ||
メタ記憶(metamemory)<br>メタ理解(metacomprehension)<br>メタ感情(meta-emotion)<br>メタ知識(metaknowledge)<br>メタ哲学(metaphilosophy)<br>メタ理論(metatheory) | |||
学習法 | 学習法 | ||
学習容易性判断(ease-of-learning judgments; EOL)<br> | |||
既学習判断(judgments of learning; JOL) | |||
既知感(feeling-of-knowing; FOK) | |||
もう少しで分かりそうな感じ(feeling of warmth; FOW)<br> | |||
心相續(mindstream) | |||
ミラーテスト<br> | |||
2次サイバネティクス | 2次サイバネティクス | ||
111行目: | 107行目: | ||
Schwartz, Bacon & Shimamura, 2008; Handbook of metamemory and memory | Schwartz, Bacon & Shimamura, 2008; Handbook of metamemory and memory | ||
Fujita, 2009; Metamemory in tufted capuchin monkeys | Fujita, 2009; Metamemory in tufted capuchin monkeys (Cebus apella). Animal Cognition, 12, 575-85. | ||
Uehara, 2011; メタ記憶の発達に関する考察ー概観と展望ー | Uehara, 2011; メタ記憶の発達に関する考察ー概観と展望ー |
回編集