「帯状皮質運動野」の版間の差分

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 帯状皮質運動野の各亜領域では、それぞれ線維連絡のようすが異なり、[[一次運動野]]や頭頂葉、視床などの各対象領野との連絡部位も各亜領域間で異なる。入出力のパターンも異なり、例えば、帯状皮質運動野の尾側部は、一次運動野、補足運動野、前補足運動野から投射を受けるが、吻側部は一次運動野、補足運動野からの投射を受けない<ref name="ref21" />。また、帯状皮質運動野吻側部は、前補足運動野へ豊富に投射するが、一次運動野への投射は多くない。一方、尾側部は一次運動野への投射が多く、前補足運動野への投射は少ない<ref name="ref27" /> <ref name="ref29" />。なお、補足運動野への投射に関しては、吻側部・尾側部から同程度ある<ref name="ref27" />という報告と、尾側部から多く、吻側部からは少ない、という報告<ref name="ref29" />がある。吻側部、尾側部ともに扁桃体からの入力を受けるが、特に吻側部の顔領域への入力が豊富である。扁桃体 → 帯状皮質運動野吻側部 → [[顔面神経核]](橋)の経路が、感情的な表情の表出に関与していると考えられている<ref name="ref31" />。
 帯状皮質運動野の各亜領域では、それぞれ線維連絡のようすが異なり、[[一次運動野]]や頭頂葉、視床などの各対象領野との連絡部位も各亜領域間で異なる。入出力のパターンも異なり、例えば、帯状皮質運動野の尾側部は、一次運動野、補足運動野、前補足運動野から投射を受けるが、吻側部は一次運動野、補足運動野からの投射を受けない<ref name="ref21" />。また、帯状皮質運動野吻側部は、前補足運動野へ豊富に投射するが、一次運動野への投射は多くない。一方、尾側部は一次運動野への投射が多く、前補足運動野への投射は少ない<ref name="ref27" /> <ref name="ref29" />。なお、補足運動野への投射に関しては、吻側部・尾側部から同程度ある<ref name="ref27" />という報告と、尾側部から多く、吻側部からは少ない、という報告<ref name="ref29" />がある。吻側部、尾側部ともに扁桃体からの入力を受けるが、特に吻側部の顔領域への入力が豊富である。扁桃体 → 帯状皮質運動野吻側部 → [[顔面神経核]](橋)の経路が、感情的な表情の表出に関与していると考えられている<ref name="ref31" />。


== 電気生理学的事項  ==
==機能==
=== 電気生理学的事項  ===


 帯状皮質運動野の正確な位置や解剖学的構造が解明される以前の 20世紀半ばに、この領域を電気刺激すると運動が誘発されることが、サルおよびヒトで報告された<ref name="ref13" /> <ref name="ref32"><pubmed>14446213</pubmed></ref> <ref name="ref33"><pubmed>14867993</pubmed></ref>。その後、皮質内微小電気刺激を用いることにより、帯状皮質運動野の各亜領域の特性を観察することが可能になった。帯状皮質運動野尾側部は、比較的低強度(40 μA 以下)の電気刺激にて運動を誘発することが可能で、[[体性局在]]も確認された。一方、吻側部は、刺激強度を増しても常に運動が誘発されるわけではなく、体性局在も不明瞭であった<ref name="ref34"><pubmed>1757598</pubmed></ref>。その理由の1つとして、脊髄へ直接投射する細胞の密度が、吻側部よりも尾側部のほうが高いことが考えられている<ref name="ref4" /> <ref name="ref5" />。  
 帯状皮質運動野の正確な位置や解剖学的構造が解明される以前の 20世紀半ばに、この領域を電気刺激すると運動が誘発されることが、サルおよびヒトで報告された<ref name="ref13" /> <ref name="ref32"><pubmed>14446213</pubmed></ref> <ref name="ref33"><pubmed>14867993</pubmed></ref>。その後、皮質内微小電気刺激を用いることにより、帯状皮質運動野の各亜領域の特性を観察することが可能になった。帯状皮質運動野尾側部は、比較的低強度(40 μA 以下)の電気刺激にて運動を誘発することが可能で、[[体性局在]]も確認された。一方、吻側部は、刺激強度を増しても常に運動が誘発されるわけではなく、体性局在も不明瞭であった<ref name="ref34"><pubmed>1757598</pubmed></ref>。その理由の1つとして、脊髄へ直接投射する細胞の密度が、吻側部よりも尾側部のほうが高いことが考えられている<ref name="ref4" /> <ref name="ref5" />。  


 また、動作遂行に際して、この領域の細胞が活動することが知られている。開始信号によって開始する動作と、自発的に開始する動作を遂行する際の細胞活動を調べた研究では<ref name="ref35"><pubmed>2016637</pubmed></ref>、帯状皮質運動野の約 40% の細胞は、両条件において同様な活動を呈した。自発的な運動開始の際に選択的に活動する細胞は、前方領域に多くみられた。さらに、動作の開始時点よりかなり早くからの(500 ms - 2 s 前)細胞活動もみられたが、この活動は、主に自発的な運動開始の際にみられ、このような活動を呈する細胞は、前方領域に多かった。したがって、後方領域は運動の実行に直接的に関与し、前方領域はより高次の運動コントロールに関与していることが考えられる<ref name="ref35" />(文献<ref name="ref36"><pubmed>12954861</pubmed></ref> <ref name="ref37"><pubmed>12424298</pubmed></ref>も参照のこと)。また、前方領域、特に CMAr には、運動の実行のみならず、運動の不実行に関与する細胞も多く存在する<ref name="ref36" />。  
 また、動作遂行に際して、この領域の細胞が活動することが知られている。開始信号によって開始する動作と、自発的に開始する動作を遂行する際の細胞活動を調べた研究では<ref name="ref35"><pubmed>2016637</pubmed></ref>、帯状皮質運動野の約 40% の細胞は、両条件において同様な活動を呈した。自発的な運動開始の際に選択的に活動する細胞は、前方領域に多くみられた。さらに、動作の開始時点よりかなり早くからの(500 ms - 2 s 前)細胞活動もみられたが、この活動は、主に自発的な運動開始の際にみられ、このような活動を呈する細胞は、前方領域に多かった。したがって、後方領域は運動の実行に直接的に関与し、前方領域はより高次の運動コントロールに関与していることが考えられる<ref name="ref35" />(文献<ref name="ref36"><pubmed>12954861</pubmed></ref> <ref name="ref37"><pubmed>12424298</pubmed></ref>も参照のこと)。また、前方領域、特に CMAr には、運動の実行のみならず、運動の不実行に関与する細胞も多く存在する<ref name="ref36" />。


== 高次機能  ==
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