「外傷後ストレス障害」の版間の差分

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 病態メカニズムについて神経心理、脳画像研究、遺伝子研究などが行われている。恐怖の条件付けに関連した扁桃体、内側前頭前野と海馬を含むfear circuitが神経回路として想定されており、それを支持する脳画像研究結果が存在する。遺伝子研究においては現時点でPTSDに決定的な影響を与える遺伝子は同定されていない。<br>  
 病態メカニズムについて神経心理、脳画像研究、遺伝子研究などが行われている。恐怖の条件付けに関連した扁桃体、内側前頭前野と海馬を含むfear circuitが神経回路として想定されており、それを支持する脳画像研究結果が存在する。遺伝子研究においては現時点でPTSDに決定的な影響を与える遺伝子は同定されていない。<br>  


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== &nbsp;PTSDとは&nbsp;  ==
== &nbsp;PTSDとは&nbsp;  ==
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==== 自記式質問紙法  ====
==== 自記式質問紙法  ====
<pre>====自記式質問紙法====</pre>  
<pre>====自記式質問紙法====</pre>  
1.Impact of&nbsp; Event Scale-Revised (IES-R)&nbsp;:改訂出来事インパクト尺度<br> Horowitsにより開発された出来事インパクト尺度をWeissらが改訂し作成した<ref>'''Weiss DS、Marmar CR'''<br>The Impact of Event Scale-revised<br>''Assessing Psychological Trauma and OTSD (2nd edition)'':168-189,2004</ref>自記式質問紙で、世界的に広く用いられている。最近1週間の22項目の症状についてその強度を0-4点で評価しする。飛鳥井らによって日本語版が作成され、信頼性と妥当性が検証されている<ref><pubmed>11923652</ref>
1.Impact of&nbsp; Event Scale-Revised (IES-R)&nbsp;:改訂出来事インパクト尺度<br> Horowitsにより開発された出来事インパクト尺度をWeissらが改訂し作成した<ref>'''Weiss DS、Marmar CR'''<br>The Impact of Event Scale-revised<br>''Assessing Psychological Trauma and OTSD (2nd edition)'':168-189,2004</ref>自記式質問紙で、世界的に広く用いられている。最近1週間の22項目の症状についてその強度を0-4点で評価しする。飛鳥井らによって日本語版が作成され、信頼性と妥当性が検証されている<ref><pubmed>11923652</ref>。心理検査として診療報酬点数80点が認められている。


2.The PTSD checkkist (PCL)&nbsp;:PTSDチェックリスト  
2.The PTSD checkkist (PCL)&nbsp;:PTSDチェックリスト  
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1.Clinician-Administered PTSD Scale (CAPS)&nbsp;:PTSD臨床診断面接尺度  
1.Clinician-Administered PTSD Scale (CAPS)&nbsp;:PTSD臨床診断面接尺度  


CAPSはアメリカのNational Center for PTSDの研究グループによって開発された構造化診断面接法<ref><pubmed>7712061</ref>で、PTSD研究に世界的に広く用いられている。一定のトレーニングを受けた面接者がDSM-Ⅳで示される17症状について構造化された質問を実施し、症状の頻度と強度の両方をアンカーポイントにそって評価するものである。1998年に飛鳥井らが日本語版を作成しており、その信頼性と妥当性が検証<ref>'''飛鳥井望、廣幡小百合、加藤寛ほか'''<br>CAPS(PTSD臨床診断面接尺度)日本語版の尺度特性<br>''トラウマティック・ストレス1'':47-53,2003</ref>されている。
CAPSはアメリカのNational Center for PTSDの研究グループによって開発された構造化診断面接法<ref><pubmed>7712061</ref>で、最も精度の高い診断法として世界的に広く用いられている。一定のトレーニングを受けた面接者がDSM-Ⅳで示される17症状について既定の質問をし、症状の頻度と強度の両方をアンカーポイントにそって評価するものである。日本語版は飛鳥井らが作成し、その信頼性と妥当性が検証<ref>'''飛鳥井望、廣幡小百合、加藤寛ほか'''<br>CAPS(PTSD臨床診断面接尺度)日本語版の尺度特性<br>''トラウマティック・ストレス1'':47-53,2003</ref>されている。心理検査として診療報酬点数450点が認められている。


2.Structured Clinical Interview for DSM-Ⅳ(SCID)&nbsp;: DSM-Ⅳのための構造化臨床面接  
2.Structured Clinical Interview for DSM-Ⅳ(SCID)&nbsp;: DSM-Ⅳのための構造化臨床面接  


2010年に高橋らによって日本語版が出版されている<ref>'''(翻訳)高橋三郎、北村俊則、岡野禎治'''<br>精神科診断面接マニュアル SCID:使用の手引き・テスト用紙 第2版<br>''日本評論社'':2010</ref>。SCIDはDSM-Ⅳの17症状の有無のみを問う形式であり、評価者によって症状の有無が異なってしまう恐れがある。
高橋らによって日本語版が出版されている<ref>'''(翻訳)高橋三郎、北村俊則、岡野禎治'''<br>精神科診断面接マニュアル SCID:使用の手引き・テスト用紙 第2版<br>''日本評論社'':2010</ref>。SCIDはDSM-ⅣのPTSD17症状の有無のみを問う形式のため、評価者の臨床経験により、評価がばらつく恐れがある。


3.MINI International Neuropsychiatric Interview (M.I.N.I)&nbsp;:精神疾患簡易構造化面接法  
3.MINI International Neuropsychiatric Interview (M.I.N.I)&nbsp;:精神疾患簡易構造化面接法  


sheehanらによって開発された短時間で施行可能なスクリーニングより包括的な構造化面接である。大坪らが日本語版を作成している<ref>'''(翻訳)大坪天平、宮岡等、上島国利'''<br>M.I.N.I._精神疾患簡易構造化面接法<br>''星和書店'':2000</ref>。症状項目の有無のみを問う形式であり、評価者によって症状の有無が異なってしまう恐れがある。&nbsp;  
Sheehanらによって開発されたスクリーニング目的に短時間で施行可能な包括的構造化面接である。大坪らが日本語版を作成している<ref>'''(翻訳)大坪天平、宮岡等、上島国利'''<br>M.I.N.I._精神疾患簡易構造化面接法<br>''星和書店'':2000</ref>。SCIDと同じく症状項目の有無のみを問う形式である。&nbsp;  


== 治療  ==
== 治療  ==
<pre>===治療=</pre>  
<pre>===治療=</pre>  
  PTSDに対して、これまでさまざまな治療法が試みられてきた。ランダム化比較試験で有効性を証明された治療法に認知行動療法、眼球運動による脱感作と再処理法(Eye Movement Desensitization and Reprocessing: EMDR)、薬物療法がある。2005年の英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence: NICE)のガイドラインでは、トラウマ焦点化心理療法を基本的な第一選択とし、薬物療法はトラウマ焦点化心理療法を拒否する時かトラウマ体験の影響で試行できない時、トラウマ焦点化心理療法で十分な効果が得られない時、うつ病などの合併症の強化療法時などに限定して推奨している。
  PTSDに対して、これまでさまざまな治療法が試みられてきた。ランダム化比較試験(RCT:Randomized Contorolled Trial)で有効性を証明された治療法に認知行動療法(CBT:Cognitive Behavior Therapy)、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法:Eye Movement Desensitization and Reprocessing)、薬物療法がある。2005年のNICE(英国国立医療技術評価機構:National Institute for Health and Clinical Excellence)のガイドラインでは、心理療法(CBTないしはEMDRを基本的な第一選択としている。薬物療法が推奨されるのは、心理療法を患者が望まない時や実施が困難は場合としている。


   
   
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