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== プリオン病 ==  
== プリオン病 ==  


(編集コメント:具体的にどのような臨床症状、病理所見が有るかご解説頂ければと思います)
 プリオン病とは、ヒトおよび動物において伝達性(感染性)のある異常プリオンタンパク質(PrP<sup>Sc</sup>)が脳に蓄積し、脳が海綿状に変化することによって起きる疾患の総称である。現在までに知られているプリオン病は、有効な治療法が確立しておらず致死性である。


 プリオン病とは、ヒトおよび動物において伝達性(感染性)のある異常プリオンタンパク質(PrP<sup>Sc</sup>)が脳に蓄積し、脳が海綿状に変化することによって起きる致死性の疾患の総称である。動物では、ヒツジやヤギにみられるスクレイピー(scrapie)、ミンクでみられる伝達性ミンク脳症(transmissible mink encephalopathy: TME)、[[wikipedia:ja:シカ|シカ]]でみられる[[慢性消耗性疾患]](chronic wasting disease: CWD)、ウシ海綿状脳症(bovine spongiform encephalopathy: BSE)、[[ネコ海綿状脳症]](feline spongiform encephalopathy: FSE)などが知られている。ヒトでは、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease: CJD)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(Gerstmann-Straussler-Scheinker syndrome: GSS)などが知られており、その原因により特発性・遺伝性・感染性と大きく三つに分類される。
===プリオン病に分類される疾患===
 動物では、ヒツジやヤギにみられるスクレイピー(scrapie)、ミンクでみられる伝達性ミンク脳症(transmissible mink encephalopathy: TME)、[[wikipedia:ja:シカ|シカ]]でみられる[[慢性消耗性疾患]](chronic wasting disease: CWD)、ウシ海綿状脳症(bovine spongiform encephalopathy: BSE)、[[ネコ海綿状脳症]](feline spongiform encephalopathy: FSE)などが知られている。ヒトでは、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease: CJD)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(Gerstmann-Straussler-Scheinker syndrome: GSS)などが知られており、その原因により特発性・遺伝性・感染性と大きく三つに分類される。


 ヒトのプリオン病のうちもっとも頻度の高いものは特発性であり、原因が不明である孤発性CJD (sporadic CJD)であり、ヒトプリオン病の約80-85%を占めている。
 ヒトのプリオン病のうちもっとも頻度の高いものは特発性であり、原因が不明である孤発性CJD (sporadic CJD)であり、ヒトプリオン病の約80-85%を占めている。
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 感染性のプリオン病には、狂牛病から感染することによって起こると考えられる変異型CJD (variant CJD)やCJD汚染[[成長ホルモン]]投与や汚染脳硬膜移植などによって起こる医原性CJD (iatrogenic CJD)などが知られている。また、クールーはパプア・ニューギニアの[[wikipedia:ja:フォレ族|フォレ族]]の子供と女性にみられる疾患であり、[[wikipedia:ja:食人|食人]]習慣による経口感染が原因と考えられる。
 感染性のプリオン病には、狂牛病から感染することによって起こると考えられる変異型CJD (variant CJD)やCJD汚染[[成長ホルモン]]投与や汚染脳硬膜移植などによって起こる医原性CJD (iatrogenic CJD)などが知られている。また、クールーはパプア・ニューギニアの[[wikipedia:ja:フォレ族|フォレ族]]の子供と女性にみられる疾患であり、[[wikipedia:ja:食人|食人]]習慣による経口感染が原因と考えられる。


 ヒトでのプリオン病の発症は人口100万人当たり1人程度とされており、非常にまれな疾患である。わが国では第五類感染症に指定されている。現在までに知られているプリオン病は、有効な治療法が確立しておらず致死性である。
===臨床症状===


CJDの臨床症状としては、急速に進行する認知症、全身性ミオクローヌスなどが特徴である。しかし、生前診断ではCJDと診断されず、剖検によって初めてCJDと診断される症例が多く存在する(確定診断には、死後、剖検を行い、脳の病理学的な検索が必要)。CJDの早期診断は非常に困難なことが多いが、髄液中の14-3-3タンパク、tauタンパク、NSE(neuron specific enolase)による診断、脳波での周期性同期性放電、MRIにおける大脳基底核や大脳皮質での高信号などによる診断が有効であることが知られてきた。また、プリオン遺伝子の遺伝子検査も家族性、孤発性を問わず診断には重要である。
 ヒト、CJDの臨床症状としては、急速に進行する[[認知症]]、[[全身性ミオクローヌス]]などが特徴である。しかし、生前診断ではCJDと診断されず、剖検によって初めてCJDと診断される症例が多く存在する(確定診断には、死後、剖検を行い、脳の病理学的な検索が必要)。CJDの早期診断は非常に困難なことが多いが、[[髄液]]中の[[14-3-3タンパク質]]、[[tauタンパク質]]、[[neuron specific enolase]] ([[NSE]])による診断、[[脳波]]での[[周期性同期性放電]]、[[MRI]]における[[大脳基底核]]や[[大脳皮質]]での高信号などによる診断が有効であることが知られてきた。また、プリオン遺伝子の遺伝子検査も家族性、孤発性を問わず診断には重要である。


プリオン病の病理所見としては、PrP<sup>Sc</sup>の沈着、灰白質における空砲の形成や海綿状変性、クールー斑の形成、グリオーシスなどが挙げられる。CJDでは海綿状変性が、GSSではクールー斑の出現が、それぞれ特徴的に観察される。PrP<sup>Sc</sup>の沈着はシナプス型、プラーク型の染色パターンがあり、プリオン病の指標となる。プリオン病の組織病理はプリオンタンパクの変異の種類や「プリオン株」の種類によって非常に多彩となり、プリオン病の大部分を占めるCJDにおいてもその病理所見は多彩である。
===病理所見===
 
 病理所見としては、PrP<sup>Sc</sup>の沈着、[[灰白質]]における空砲の形成や海綿状変性、[[クールー斑]]の形成、[[グリオーシス]]などが挙げられる。CJDでは海綿状変性が、GSSではクールー斑の出現が、それぞれ特徴的に観察される。PrP<sup>Sc</sup>の沈着はシナプス型、プラーク型の染色パターンがあり、プリオン病の指標となる。プリオン病の組織病理はプリオンタンパクの変異の種類や「プリオン株」の種類によって非常に多彩となり、プリオン病の大部分を占めるCJDにおいてもその病理所見は多彩である。
 
===疫学===
 ヒトでのプリオン病の発症は人口100万人当たり1人程度とされており、非常にまれな疾患である。わが国では第五類感染症に指定されている。


== プリオン仮説 ==  
== プリオン仮説 ==  

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