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ジャンクトフィリン (junctophilin; JP)は、筋細胞などの興奮性細胞における細胞膜と小胞体膜との隣接構造である「結合膜構造」に深く寄与する分子として同定された。JPは分子量72-90 kDa程度のタンパク質で、C末端に小胞体膜貫通セグメントを有し、残りの部分は細胞質側に配向する。この細胞質側の領域にMORNモチーフと呼ばれる14アミノ酸残基よりなる相同配列が8回繰り返され、MORNモチーフとリン脂質との相互作用によりJPは細胞膜に直接結合すると考えられている。 | |||
哺乳類では異なる遺伝子に由来する4種のJPサブタイプが存在し、骨格筋特異的なJP1、筋細胞全般に分布するJP2、神経細胞特異的なJP3、JP4が同定されている。 | |||
JP1欠損マウスは出生致死、JP2欠損マウスは胎生致死を示す一方で、JP3、JP4単独欠損マウスには顕著な異常は観察されず、またJP3とJP4の発現分布に重複が見られることから、両サブタイプ間の機能補完作用が推測される。JP3、JP4二重欠損(JP-DKO)マウスは、通常飼育条件下では離乳時期に衰弱し死亡するが、固形飼料でなくペースト状飼料で飼育すると、ほぼ正常に生育する。JP-DKO成熟個体では、海馬依存的な記憶学習試験における成績低下、小脳依存的な運動学習脳・運動協調の低下が見られる。さらに、これらの個体レベルでの異常に対応するかのように、海馬CA1シナプスにおける長期増強の阻害、小脳平行線維-プルキンエ細胞シナプスにおける長期抑圧の異常(長期抑圧誘導刺激による長期増強の誘導)が見られる。さらに、海馬CA1錐体細胞、プルキンエ細胞では、興奮後過分極(afterhyperpolarization、AHP)の阻害が見られるが、これはRyRを介して放出されるCa2+による小コンダクタンスCa2+依存性K+チャネル(SKチャネル)の活性化の阻害によるものであり、小脳プルキンエ細胞では、slow AHPの阻害によりLTDがLTP化することが示されている。したがって、海馬錐体細胞、小脳プルキンエ細胞などの中枢神経系細胞では、RyRはJPが媒介するSKチャネルとの機能的共役を介して細胞の興奮性、ひいては、シナプス可塑性、記憶学習機能に関与することが示された。 |