「外傷後ストレス障害」の版間の差分

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<pre>==治療==</pre>  
<pre>==治療==</pre>  
  PTSDに対して、これまでさまざまな治療法が試みられてきた。ランダム化比較試験(RCT:Randomized Contorolled Trial)で有効性を証明された治療法に認知行動療法(CBT:Cognitive Behavior Therapy)、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法:Eye Movement Desensitization and Reprocessing)、薬物療法がある。2005年のNICE(英国国立医療技術評価機構:National Institute for Health and Clinical Excellence)のガイドラインでは、心理療法(CBTないしはEMDR)を基本的な第一選択としている。薬物療法が推奨されるのは、心理療法を患者が望まない時や実施が困難は場合としている。また、2007年に示された全米アカデミーズ医学院PTSD治療評価委員のレポートでは、PTSDへの治療的有効性が確立されているのは曝露療法のみで、その他の心理療法、薬物療法の有効性に関するエビデンスは不十分と結論づけられている。<br>  
  PTSDに対して、これまでさまざまな治療法が試みられてきた。ランダム化比較試験(RCT:Randomized Contorolled Trial)で有効性を証明された治療法に認知行動療法(CBT:Cognitive Behavior Therapy)、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法:Eye Movement Desensitization and Reprocessing)、薬物療法がある。2005年のNICE(英国国立医療技術評価機構:National Institute for Health and Clinical Excellence)のガイドラインでは、心理療法(CBTないしはEMDR)を基本的な第一選択としている。薬物療法が推奨されるのは、心理療法を患者が望まない時や実施が困難は場合としている。また、2007年に示された全米アカデミーズ医学院PTSD治療評価委員のレポートでは、PTSDへの治療的有効性が確立されているのは曝露療法のみで、その他の心理療法、薬物療法の有効性に関するエビデンスは不十分と結論づけられている。<br>  
=== 薬物療法 ===
<pre>===薬物療法===</pre>
==== 抗うつ薬 ====
<pre>====抗うつ薬====</pre>
PTSDに対する薬物療法として、sertraline、paroxetine、fluoxetineといった選択的セロトニン再取り込阻害薬(selective serotonine reuptake inhibitor:SSRI)が海外の複数のランダム化比較試験でPTSDの3つの中核症状(DSM-Ⅳ-TRの基準B,C,D)全てと抑うつなどの合併する精神症状に有効性が証明され、第一選択として推奨されている。また、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬(serotonine norepinephrine reuptake inhibitor:SNRI)であるvenlafaxineもSSRIと共に第一選択として推奨されている。三環系抗うつ薬であるimpramine、amitriptylineも効果が認められているが、SSRI、SNRIと比較して一般的に副作用の出現や忍容性が懸念される薬剤である。その他、mirtazapine、bupropion、nefazodone、torazodoneに関しての研究報告がある。
米国ではparoxetineとsertralineがPTSD治療の薬剤として認可されているが、現在、日本でPTSD治療への適応を認可された薬剤はない。<br>
==== <br>モノアミン酸化酵素阻害薬 ====
<pre>====MAOI(モノアミン酸化酵素阻害薬)====</pre>
モノアミン酸化酵素阻害薬は食事制限などを厳密に遵守する必要がある薬剤で、phenelzineのBとD症状への効果が示されている。日本で認可されているMAOIはselegilineのみである。<br>
==== <br>抗アドレナリン作動薬 ====
<pre>====抗アドレナリン作動薬====</pre>
抗アドレナリン作動薬であるprazosin、propranolol、clonidine、guanfacineは一般的に安全性の高い薬剤であるが血圧の低下の可能性を留意する必要がある。過覚醒、再体験への有効性が報告されている。<br><br>
==== 非定型抗精神病薬 ====
<pre>====非定型抗精神病薬====</pre>
非定型抗精神病薬であるrisperidone、olanzapine、quetiapineはSSRIで症状が残存した時、治療抵抗性のPTSD患者への増強療法として複数の小規模なランダム化比較試験で有効性が報告されている。過覚醒、攻撃行動、妄想や精神病性の症状を呈するPTSD患者への効果も期待されている。<br><br>
==== Benzodiazepine系薬 ====
<pre>====Benzodiazepine系薬====</pre>
PTSDの中核症状への効果はないとされ、単独での治療は推奨されていない。<br><br>
==== 抗けいれん薬(気分安定薬) ====
<pre>====抗けいれん薬(気分安定薬)====</pre>
有効性に関して一致した結論には至らず、現時点では治療薬としては推奨されていない。 <br>
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===  心理療法<br>  ===
===  心理療法<br>  ===
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Shapiroが開発したEMDRはCBTと並び効果のある治療法で、海外での複数のランダム化比較試験でPTSDに対する有効性が証明されている。 8つの段階から構成され、1セッションは60-90分で実施される。状態の確認、心理教育の後、治療者が指をリズミックに左右に動かし、患者はそれを追視しながら、トラウマ体験の想起、肯定的な認知の想起、身体感覚の確認を行う。海外での複数のランダム化比較試験でPTSDに対する有効性が証明されている。  
Shapiroが開発したEMDRはCBTと並び効果のある治療法で、海外での複数のランダム化比較試験でPTSDに対する有効性が証明されている。 8つの段階から構成され、1セッションは60-90分で実施される。状態の確認、心理教育の後、治療者が指をリズミックに左右に動かし、患者はそれを追視しながら、トラウマ体験の想起、肯定的な認知の想起、身体感覚の確認を行う。海外での複数のランダム化比較試験でPTSDに対する有効性が証明されている。  


=== 薬物療法  ===
<pre>===薬物療法===</pre>
==== 抗うつ薬  ====
<pre>====抗うつ薬====</pre>
PTSDに対する薬物療法として、sertraline、paroxetine、fluoxetineといった[[選択的セロトニン再取り込阻害薬]](selective serotonine reuptake inhibitor:SSRI)が海外の複数のランダム化比較試験でPTSDの3つの中核症状(DSM-Ⅳ-TRの基準B,C,D)全てと抑うつなどの合併する精神症状に有効性が証明され、第一選択として推奨されている。また、[[選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬|セロトニン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬]](serotonine norepinephrine&nbsp;reuptake inhibitor:SNRI)であるvenlafaxineもSSRIと共に第一選択として推奨されている。三環系抗うつ薬であるimpramine、amitriptylineも効果が認められているが、SSRI、SNRIと比較して一般的に副作用の出現や忍容性が懸念される薬剤である。その他、mirtazapine、bupropion、nefazodone、torazodoneに関しての研究報告がある。
米国ではparoxetineとsertralineがPTSD治療の薬剤として認可されているが、現在、日本でPTSD治療への適応を認可された薬剤はない。<br>
==== モノアミン酸化酵素阻害薬<br>  ====
<pre>====MAOI(モノアミン酸化酵素阻害薬)====
</pre>
モノアミン酸化酵素阻害薬は食事制限などを厳密に遵守する必要がある薬剤で、phenelzineのBとD症状への効果が示されている。日本で認可されているMAOIはselegilineのみである。<br>
==== 抗アドレナリン作動薬  ====
<pre>====抗アドレナリン作動薬====</pre>
抗アドレナリン作動薬であるprazosin、propranolol、clonidine、guanfacineは一般的に安全性の高い薬剤であるが血圧の低下の可能性を留意する必要がある。過覚醒、再体験への有効性が報告されている。
==== 非定型抗精神病薬  ====
<pre>====非定型抗精神病薬====</pre>
非定型抗精神病薬であるrisperidone、olanzapine、quetiapineはSSRIで症状が残存した時、治療抵抗性のPTSD患者への増強療法として複数の小規模なランダム化比較試験で有効性が報告されている。過覚醒、攻撃行動、妄想や精神病性の症状を呈するPTSD患者への効果も期待されている。
==== Benzodiazepine系薬  ====
<pre>====Benzodiazepine系薬====</pre>
&nbsp;PTSDの中核症状への効果はないとされ、単独での治療は推奨されていない。


==== 抗けいれん薬(気分安定薬)  ====
<pre>====抗けいれん薬(気分安定薬)====</pre>
有効性に関して一致した結論には至らず、現時点では治療薬としては推奨されていない。


== &nbsp;疫学&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;  ==
== &nbsp;疫学&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;  ==
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 恐怖条件づけの消去現象とNMDA受容体、GABA受容体、BDNFなど分子レベルの因子と関連があることが知られており、さらにそれらの因子と関連する遺伝子レベルの研究も行われている。しかし、現時点でPTSDに決定的な影響を与える遺伝子は同定されていない。遺伝子研究については[[wikipedia:gene by environment interaction|gene-by-environment interaction]] の観点からも研究がおこなわれており、糖質コルチコイド受容体の関連遺伝子であるFKBP5の4つの多形のうち1つが幼少期の被虐待歴のある者でPTSDのリスクを上昇させるという報告がある<ref><pubmed>18349090</ref>。  
 恐怖条件づけの消去現象とNMDA受容体、GABA受容体、BDNFなど分子レベルの因子と関連があることが知られており、さらにそれらの因子と関連する遺伝子レベルの研究も行われている。しかし、現時点でPTSDに決定的な影響を与える遺伝子は同定されていない。遺伝子研究については[[wikipedia:gene by environment interaction|gene-by-environment interaction]] の観点からも研究がおこなわれており、糖質コルチコイド受容体の関連遺伝子であるFKBP5の4つの多形のうち1つが幼少期の被虐待歴のある者でPTSDのリスクを上昇させるという報告がある<ref><pubmed>18349090</ref>。  
<pre>==関連項目==</pre>  
<pre>==関連項目==</pre>  
&nbsp; 解離性障害
&nbsp; 解離性障害  


 恐怖条件付け  
 恐怖条件付け  
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