「アセチル化」の版間の差分

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 しかし逆に、HDAC6はマウスの[[情動]]行動に関与し、HDAC6の欠損やHDAC6阻害剤が運動亢進、[[不安]]の軽減などの抗うつ様の行動を誘導することで、[[うつ病]]等の治療によい影響を与えることも明らかになっている。HDAC6は、[[気分障害]]等の精神疾患に深く関与する[[セロトニン神経細胞]]の豊富な中脳の[[縫線核]]、[[青斑核]]、黒質の神経細胞に多く存在している。しかし、HDAC6の欠損マウスにおいて、セロトニンの量、及び既存の[[抗うつ薬]]である[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]]/[[セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬]](Selective Serotonin Reuptake Inhibitors/ Serotonin &amp; Norepinephrine Reuptake Inhibitors:SSRI/SNRI)に対する応答性には変化がなく、SSRI/SNRIの急性投与による大幅なうつ様行動の改善はHDAC6の欠損マウスと野生型マウスで同程度である。このことからHDAC6阻害剤による抗うつ作用メカニズムは既存の抗うつ薬とは異なると考えられており、HDAC6の阻害はうつ病の病態解明や新規抗うつ薬の開発につながる可能性が示唆されている<ref><pubmed>22328923</pubmed></ref>。  
 しかし逆に、HDAC6はマウスの[[情動]]行動に関与し、HDAC6の欠損やHDAC6阻害剤が運動亢進、[[不安]]の軽減などの抗うつ様の行動を誘導することで、[[うつ病]]等の治療によい影響を与えることも明らかになっている。HDAC6は、[[気分障害]]等の精神疾患に深く関与する[[セロトニン神経細胞]]の豊富な中脳の[[縫線核]]、[[青斑核]]、黒質の神経細胞に多く存在している。しかし、HDAC6の欠損マウスにおいて、セロトニンの量、及び既存の[[抗うつ薬]]である[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]]/[[セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬]](Selective Serotonin Reuptake Inhibitors/ Serotonin &amp; Norepinephrine Reuptake Inhibitors:SSRI/SNRI)に対する応答性には変化がなく、SSRI/SNRIの急性投与による大幅なうつ様行動の改善はHDAC6の欠損マウスと野生型マウスで同程度である。このことからHDAC6阻害剤による抗うつ作用メカニズムは既存の抗うつ薬とは異なると考えられており、HDAC6の阻害はうつ病の病態解明や新規抗うつ薬の開発につながる可能性が示唆されている<ref><pubmed>22328923</pubmed></ref>。  


 上記の例に加えて、タンパク質のアセチル化と脳機能に関しては多くの報告がなされている。これらのことから、ヒストンのアセチル化や非ヒストンタンパク質のアセチル化は脳の発達や機能にさまざまな役割を果たしており、脳において重要な機構であるといえる。
== 終わりに  ==
 
 今回紹介した例以外にも、タンパク質のアセチル化と脳機能に関しては多くの報告がなされており、ヒストンのアセチル化や非ヒストンタンパク質のアセチル化は脳の発達や機能に重要な機構であるといえる。一般にHDAC阻害剤は脳疾患の治療に有用であり、記憶形成を増強させることなどが知られている。しかし、上に示したように、軸索輸送や軸索伸長に対してHDAC6が重要な役割を果たすこと、また、HDACがオリゴデンドロサイトの分化を促進させること([[ヒストン]]の項参照)、さらにはHDAC1、2を同時に欠損させたマウスでは海馬や小脳、大脳皮質の形成に異常が生じ、胎生致死となることなども知られている<ref><pubmed>19380719</pubmed></ref>。これらのことから、HDACは脳の発生や機能に重要な役割を果たすものでもあり、HDACによる脳でのアセチル化レベルのバランスの維持が、正常な脳機能を果たす上では重要であるといえる。


== 関連項目  ==
== 関連項目  ==
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