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== 神経系におけるSTAT3の発現パターン ==
== 神経系におけるSTAT3の発現パターン ==


 マウスでは、例えば胎生11日目の神経幹細胞Neural stem cell (NSC)においてSTAT3のプロモーター上のシトシン残基がDNAメチル化を受けており、転写因子が結合することができず、STAT3は転写されない。しかし胎生14日頃からSTAT3プロモーターの脱メチル化が起こり、STAT3転写が可能となる。以降はSTAT3プロモーターはメチル化を受けることがなく、神経系細胞全般でSTAT3の発現が確認できると考えられる<ref><pubmed> 11740937 </pubmed></ref>。
 中枢神経系central nervous system (CNS) においてニューロン、アストロサイト、神経幹細胞Neural stem cell (NSC) など神経系細胞において発現が確認される。また細胞内において通常は細胞質内に局在するが、サイトカインシグナルにより二量体化したSTAT3は局在が核へ移行する<ref><pubmed> 10407422 </pubmed></ref>。


== 神経系での働き①:アストロサイト分化誘導  ==
== 神経系での働き①:アストロサイト分化誘導  ==


 IL-6ファミリーサイトカインの刺激により活性化したSTAT3は、転写活性化因子としてグリア線維性酸性タンパク質glial fibrillary acidic protein (GFAP)のプロモーターに結合し、転写を促進する。GFAPはアストロサイトで特異的に発現するタンパク質であり、これまでNSC の培養系にIL-6ファミリーサイトカインを添加すると、JAK/STAT3経路を活性化することでアストロサイトへの分化が促進されることが明らかとなっている(図3)<ref name="ref4" /><ref name="ref1" />。また、STAT3をシグナル経路下流の転写因子とするIL-6ファミリーサイトカインとSmadをシグナル経路下流の転写因子とする骨形成因子bone morphogenetic protein (BMP)群(TGF-βスーパーファミリーに属する)の両者は別々の受容体システムを介し、相乗的にアストロサイトの分化を誘導することが明らかにされている<ref><pubmed> 10205054 </pubmed></ref>。そのメカニズムとして、転写活性化の補助的役割を果たす核内転写共役因子p300が、サイトカイン刺激に応答して活性化されたSTAT3のN末端と、Smad1のC末端に結合し、STAT3/p300/smad1複合体を形成することで、標的遺伝子GFAPの効率的な発現を誘導することが明らかにされている。  
 IL-6ファミリーサイトカインの刺激により活性化したSTAT3は、転写活性化因子としてグリア線維性酸性タンパク質glial fibrillary acidic protein (GFAP)のプロモーターに結合し、転写を促進する。GFAPはアストロサイトで特異的に発現するタンパク質であり、これまでNSCの培養系にIL-6ファミリーサイトカインを添加すると、JAK/STAT3経路を活性化することでアストロサイトへの分化が促進されることが明らかとなっている(図3)<ref name="ref4" /><ref name="ref1" />。また、STAT3をシグナル経路下流の転写因子とするIL-6ファミリーサイトカインとSmadをシグナル経路下流の転写因子とする骨形成因子bone morphogenetic protein (BMP)群(TGF-βスーパーファミリーに属する)の両者は別々の受容体システムを介し、相乗的にアストロサイトの分化を誘導することが明らかにされている<ref><pubmed> 10205054 </pubmed></ref>。そのメカニズムとして、転写活性化の補助的役割を果たす核内転写共役因子p300が、サイトカイン刺激に応答して活性化されたSTAT3のN末端と、Smad1のC末端に結合し、STAT3/p300/smad1複合体を形成することで、標的遺伝子GFAPの効率的な発現を誘導することが明らかにされている。  


== 神経系での働き②:神経幹細胞増殖制御 ==
== 神経系での働き②:神経幹細胞増殖制御 ==
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