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また近年、[[Gタンパク質共役型受容体]]([[G protein-coupled receptor]]: [[GPCR]])もステロイドホルモンの膜受容体として注目されている。 | また近年、[[Gタンパク質共役型受容体]]([[G protein-coupled receptor]]: [[GPCR]])もステロイドホルモンの膜受容体として注目されている。 | ||
=== | ===エストロゲン受容体=== | ||
エストロゲン受容体にはERαとERβとがあり、これらは独立した遺伝子から産生される(スプライシングバリアントではない)。ER受容体はリガンドフリーの状態でも核内に存在するが、リガンドと結合すると二量体を形成して標的遺伝子の[[転写調節領域]]に結合する。ERは[[エストロゲン応答配列]] ([[estrogen response element]]: [[ERE]])に直接に結合する以外にも、[[AP-1]]やc[[yclic AMP応答エレメント]]([[cyclic AMP-responsive element]], [[CRE]])様配列にも間接的に作用し遺伝子発現を調節することが知られる。 | |||
ERの標的遺伝子としては[[プロラクチン]]、[[オボアルブミン]]、[[インスリン様成長因子-1]] ([[insulin-like growth factor-1]], [[IGF-1]])、プレセニリン-2 (trefoil factor 1, TFF-1/pS2)、[[カテプシン]]D、[[c-Myc]], [[cyclin D1]]等が知られる。エストロゲンによるプロラクチン遺伝子の発現調節はEREによるものであるが、オボアルブミンやIGF-1遺伝子の発現調節はAP-1によるものであることが報告されており、発現調節のメカニズムにおいては遺伝子ごとの詳細な解析が必要とされる。 | |||
エストロゲン受容体のノンゲノミック作用はミリ秒から数分でおこり、従来のゲノミックな作用機序とは異なる。免疫電子顕微鏡の研究から従来のERαおよびERβが細胞膜や細胞質に分布し、[[視床下部]]や[[海馬]]の神経細胞では[[樹状突起]][[スパイン]]や[[軸索終末]]にも存在することが報告されている。特に、海馬神経細胞においてはエストロゲンのシグナル伝達に[[カベオリン]]タンパク質が重要な働きをしており、ERαおよびERβが膜に存在することを示唆している<ref><pubmed>18670908</pubmed></ref>。 | |||
一方、従来のERαやERβではなく、GPCRの1つである[[GPR30]]がノンゲノミック作用を示すことが報告されている。さらに、遺伝子は未だにクローニングされていないが、[[ER-X]]および[[Gq-coupled membrane ER]]([[Gq-mER]])などもエストロゲン膜受容体の可能性が示されている。これら膜受容体の作用機序としては、ERα、ERβおよびER-XはMAPK系を介して、またGPR30やGq-mERはGタンパク質を介して作用する。さらに、エストロゲンは[[NMDA型グルタミン酸受容体]]や[[AMPA型グルタミン酸受容体]]に作用することも報告されている<ref><pubmed>11744083</pubmed></ref>。 | |||
====アンドロゲン受容体==== | |||
アンドロゲン受容体(AR)はGRなどと同様にリガンド非存在下では細胞質に存在し、リガンドと結合すると核へ移行し標的遺伝子の転写を調節する。ARの標的遺伝子には[[前立腺特異抗原]]([[prostate specific antigen]], [[PSA]])、[[線維芽細胞成長因子8]] ([[fibroblast growth factor 8]], [[FGF8]])、[[サイクリン依存性キナーゼ1]] (cyclin-dependent kinase 1. Cdk1), Cdk2, PMDPA1, [[transmembrane protease, serine 2]] (TMPRSS2)、[[D-dopachrome tautomerase]] (DDT)、[[グルタチオン-S-転位酵素θ2]] ([[glutathione S-transferase θ2]] ([[GSTT2]])、[[Ca2+/リン脂質依存性タンパク質リン酸化酵素|Ca<sup>2+</sup>/リン脂質依存性タンパク質リン酸化酵素]] (protein kinase C&delta, PRKCD)、[[ピロリン-5-カルボン酸レダクターゼI]] ([[pyrroline-5-carboxylate reductase I]], [[PYXRI]])等が知られる。[[wikipedia:ja:哺乳動物|哺乳動物]]の[[中枢神経]]においては、これまでにアンドロゲンのノンゲノミック作用に直接関与するような膜型受容体は見つかっていない。 | |||
====プロゲステロン==== | ====プロゲステロン==== | ||
プロゲステロン受容体(PR)はPR-BとPR-Aの2つのアイソフォームが存在し、これらは同一遺伝子から産生され、PR-AはPR-BのN末端のアミノ酸が164個欠落したものである。PR-Bはリガンドの非存在下では細胞質と核の両方に分布するが、PR-Aはリガンド非存在下でも核内に局在し、いずれも標的遺伝子の転写を調節する。さらに、PR-Bは膜シグナル伝達分子である[[c-Src]]を代表とする[[Srcファミリーチロシンキナーゼ]] ([[Src family tyrosine kinase]], [[SFK]])と相互作用し、SFKを活性化することによりその下流の[[MAPK]]へシグナルを伝達することが報告されている<ref><pubmed>15242342</pubmed></ref>。 | |||
標的遺伝子として、fumarylacetoacetate, prolactin, Sox17 (Rubel et al., Mol Endocrinol, 2012)などが知られる<ref><pubmed>22638070</pubmed></ref>。 | 標的遺伝子として、fumarylacetoacetate, prolactin, Sox17 (Rubel et al., Mol Endocrinol, 2012)などが知られる<ref><pubmed>22638070</pubmed></ref>。 | ||
==コレステロール== | ==コレステロール== |