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細 (ページの作成:「== 要 約 == 大脳辺縁系の重要な機能の1つは、情動発現や情動行動の遂行であり、これらの機能に重要な役割を果たしている...」) |
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== 構造 == | == 構造 == | ||
[[image:扁桃体1.png|thumb| | [[image:扁桃体1.png|thumb|300px|'''図1.ラット(左図)とサルの扁桃体の位置と扁桃体を構成する神経核'''<br>ラット(左図);上図は矢状断面図、下図は上図の矢印位置における冠状断面図(Paxinos & Watson, 1997に基づいて作成)<br>サル(右図):上図は右脳の側面図、下図は上図の矢印位置における冠状断面図(Martin & Bowden, 2000に基づいて作成)]] | ||
扁桃体は側頭葉の背内側部に位置しており、複数の神経核から構成されている。扁桃体の名前はその形がアーモンド(扁桃:amygdala)に似ていることに由来している。図1は、ラットとサルの扁桃体の位置と扁桃体を構成する主要な神経核を示している。これらの神経核の中で、外側核と基底外側核、基底内側核を合わせて基底外側核群と定義される場合がある。このように、扁桃体神経核の分類は古くより染色法による細胞構築という観点から行われてきたが、研究者によりまた動物種により分類や名称が異なっている。表1~2にラットとサルの英米の一般的な分類を示す。表中の同じ番号が振られた神経核は名称は異なるが、それぞれ動物種を越えて同じ神経核であることを示している。 | 扁桃体は側頭葉の背内側部に位置しており、複数の神経核から構成されている。扁桃体の名前はその形がアーモンド(扁桃:amygdala)に似ていることに由来している。図1は、ラットとサルの扁桃体の位置と扁桃体を構成する主要な神経核を示している。これらの神経核の中で、外側核と基底外側核、基底内側核を合わせて基底外側核群と定義される場合がある。このように、扁桃体神経核の分類は古くより染色法による細胞構築という観点から行われてきたが、研究者によりまた動物種により分類や名称が異なっている。表1~2にラットとサルの英米の一般的な分類を示す。表中の同じ番号が振られた神経核は名称は異なるが、それぞれ動物種を越えて同じ神経核であることを示している。 | ||
これらの神経核は、系統発生学的に古い皮質内側核群(表中の1~10までの神経核)と新しい基底外側核群(おなじく、11~13まで)に分類することができる。サルでは皮質内側核群の発達が悪く、前皮質核や後皮質核の存在を明確に確認することができない。また、外側嗅索核はラットでは明瞭であるが、サルでは明確に確認することができない。逆に、扁桃体周囲皮質はサルでよく発達し、さらに4つの区分に分けられるが、ラットではそれほど発達しておらず3つを識別するにとどまる。一方、基底外側核群は系統発生により大脳皮質の発達に伴い扁桃体内で占める割合が増加しおり、ハリネズミでは60%であるが、ヒトでは80%になっているという報告がある。 | これらの神経核は、系統発生学的に古い皮質内側核群(表中の1~10までの神経核)と新しい基底外側核群(おなじく、11~13まで)に分類することができる。サルでは皮質内側核群の発達が悪く、前皮質核や後皮質核の存在を明確に確認することができない。また、外側嗅索核はラットでは明瞭であるが、サルでは明確に確認することができない。逆に、扁桃体周囲皮質はサルでよく発達し、さらに4つの区分に分けられるが、ラットではそれほど発達しておらず3つを識別するにとどまる。一方、基底外側核群は系統発生により大脳皮質の発達に伴い扁桃体内で占める割合が増加しおり、ハリネズミでは60%であるが、ヒトでは80%になっているという報告がある。 | ||
== 扁桃体内部の線維結合 == | == 扁桃体内部の線維結合 == | ||
[[image:扁桃体2.png|thumb| | [[image:扁桃体2.png|thumb|300px|'''図2.サルの扁桃体内部の線維結合の模式図'''<br>(<ref>'''Aggleton, J.P., & Saunders, R.C.'''<br>The amygdala-what’s happened in the last decade? In J.P. Aggleton (Ed.), The amygdala: a functional analysis. 2nd ed. <br>New York: Oxford University Press (2000)</ref>に基づいて作成)]] | ||
トレーサーの微量注入法が開発され、扁桃体の神経核間の結合がサルやラットで詳しく調べられるようになった。図2は、サルの扁桃体内部の線維結合を示す模式図である。外側核は基底核、副基底核に主に投射しているが、その他にも中心核、内側核、前皮質核等にも投射している。基底核は主に中心核に線維を投射しており、その他にも内側核、副基底核、扁桃体周囲皮質に弱い繊維投射がある。副基底核は主に中心核に投射し、その他に内側核、前と後皮質核、扁桃体周囲皮質にも繊維投射がある。中心核と内側核はおもに扁桃体の他の神経核からの投射を受け、視床下部などの皮質下核や脳幹部へ繊維を投射する。サルにおいては、内側核、中心核などの内側の神経核から外側核、基底核、副基底核といった外側の神経核への投射が少ない。しかし、ラットにおいてはそのような結合はサルよりも多く、内側と外側の神経核が相互に結合する。 | トレーサーの微量注入法が開発され、扁桃体の神経核間の結合がサルやラットで詳しく調べられるようになった。図2は、サルの扁桃体内部の線維結合を示す模式図である。外側核は基底核、副基底核に主に投射しているが、その他にも中心核、内側核、前皮質核等にも投射している。基底核は主に中心核に線維を投射しており、その他にも内側核、副基底核、扁桃体周囲皮質に弱い繊維投射がある。副基底核は主に中心核に投射し、その他に内側核、前と後皮質核、扁桃体周囲皮質にも繊維投射がある。中心核と内側核はおもに扁桃体の他の神経核からの投射を受け、視床下部などの皮質下核や脳幹部へ繊維を投射する。サルにおいては、内側核、中心核などの内側の神経核から外側核、基底核、副基底核といった外側の神経核への投射が少ない。しかし、ラットにおいてはそのような結合はサルよりも多く、内側と外側の神経核が相互に結合する。 |