「不安症」の版間の差分

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 紀元前600年に[[wikipedia:ja:ギリシャ|ギリシャ]]の詩人[[wikipedia:Sappho|Sappho]]が社会不安の症状としてパニック発作を記載したのが不安症状の最も古い記載であるとBandelow(2001)は述べている。本邦で最も古い不安障害の記載は、貞享3年(1686年)本邦の漢方医、[[wikipedia:ja:蘆川桂州|蘆川桂州]]が病名彙解に記した「驚悸」である<ref>'''蘆川桂州'''<br>病名彙解 <br>''六巻'', 1686 [http://www.shiga-med.ac.jp/library/kawamura/content/K0115/K0115v07s0025.html 河村文庫画像データーベース]</ref>。これは現在のパニック障害を的確に描写している。  
 紀元前600年に[[wikipedia:ja:ギリシャ|ギリシャ]]の詩人[[wikipedia:Sappho|Sappho]]が社会不安の症状としてパニック発作を記載したのが不安症状の最も古い記載であるとBandelow(2001)は述べている。本邦で最も古い不安障害の記載は、貞享3年(1686年)本邦の漢方医、[[wikipedia:ja:蘆川桂州|蘆川桂州]]が病名彙解に記した「驚悸」である<ref>'''蘆川桂州'''<br>病名彙解 <br>''六巻'', 1686 [http://www.shiga-med.ac.jp/library/kawamura/content/K0115/K0115v07s0025.html 河村文庫画像データーベース]</ref>。これは現在のパニック障害を的確に描写している。  


 [[wikipedia:William Cullen|William Cullen]](1710-1790)はneurosisという言葉を作り、それは、発熱を伴わない神経系全般の機能にかかわる感覚と運動の異常状態であると説明した。Cullenの[[神経症]]概念は、当時の医学では器質的障害を認め得ないということがその根底にあり、精神病も含み現代の神経症とはかなり様相を異にする。1880年、[[wikipedia:George Miller Beard|Beard]]が神経衰弱の概念を提出し、[[wikipedia:JA:ジークムント・フロイト|Freud]](1894)が神経衰弱から不安神経症を区別している。そして、1990年、Kleinが不安神経症をパニック障害と全般性不安障害に区分した<ref><pubmed></pubmed></ref>(編集コメント:文献をお願いいたします)。
 [[wikipedia:William Cullen|William Cullen]](1710-1790)はneurosisという言葉を作り、それは、発熱を伴わない神経系全般の機能にかかわる感覚と運動の異常状態であると説明した。Cullenの[[神経症]]概念は、当時の医学では器質的障害を認め得ないということがその根底にあり、精神病も含み現代の神経症とはかなり様相を異にする。1880年、[[wikipedia:George Miller Beard|Beard]]が神経衰弱の概念を提出し、[[wikipedia:JA:ジークムント・フロイト|Freud]](1894)が神経衰弱から不安神経症を区別している。そして、1990年頃のKleinらの研究に基づき、不安神経症はパニック障害と全般性不安障害に区分されるようになった<ref><pubmed>2670574</pubmed></ref>


 [[wikipedia:ja:米国精神医学会|米国精神医学会]]の[[精神障害の分類と診断の手引き]]([[DSM]])第Ⅰ版(1952年)のPsychoneurotic Reactionsの下分類にAnxiety reactionの記載がある。[[DSM-Ⅲ]]になるとAnxiety reactionがAnxiety disorderに変わり、神経症概念が過去のものになった。これはパニック障害の誘発実験や終夜[[睡眠]][[脳波]]研究の成果、およびCloninger(1986)のHarm avoidance(損害回避性)気質と[[セロトニン受容体]]の多型性との関係<ref><pubmed> 3809156</pubmed></ref>などの生物学的研究の成果により不安障害の新しい概念が形成されてきた。
 [[wikipedia:ja:米国精神医学会|米国精神医学会]]の[[精神障害の分類と診断の手引き]]([[DSM]])第Ⅰ版(1952年)のPsychoneurotic Reactionsの下分類にAnxiety reactionの記載がある。[[DSM-Ⅲ]]になるとAnxiety reactionがAnxiety disorderに変わり、神経症概念が過去のものになった。これはパニック障害の誘発実験や終夜[[睡眠]][[脳波]]研究の成果、およびCloninger(1986)のHarm avoidance(損害回避性)気質と[[セロトニン受容体]]の多型性との関係<ref><pubmed> 3809156</pubmed></ref>などの生物学的研究の成果により不安障害の新しい概念が形成されてきた。


 現代では、不安障害は遺伝学的に規定された傾病性と環境への反応との総合作用で成立するものと考えられている。
 現代では、不安障害は遺伝学的に規定された傾病性と環境への反応との相互作用で成立するものと考えられている<ref>'''ダン・J・ステイン、エリック・ホランダー(編)'''<br>
不安障害<br>樋口、久保木、貝谷、坂野、野村、不安・抑うつ臨床研究会監訳、2005、日本評論社 </ref><ref>'''貝谷久宣、土田英人、巣山晴菜、兼子唯'''<br>不安障害研究鳥瞰 -最近の知見と展望-<br>2012 不安障害研究4(1)</ref><ref>'''貝谷久宣、兼子唯、正木美奈、巣山晴菜、土田英人'''<br>不安障害の社会的重要性<br>精神科2012;21(5):507-515 </ref> 。


== 病態  ==
== 病態  ==
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<references />
<references />


'''ダン・J・ステイン、エリック・ホランダー(編)'''<br>
 
不安障害<br>
樋口、久保木、貝谷、坂野、野村、不安・抑うつ臨床研究会監訳、2005、日本評論社


   
   
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'''貝谷久宣、兼子唯、正木美奈、巣山晴菜、土田英人'''<br>
不安障害の社会的重要性<br> 
精神科2012;21(5):507-515


'''貝谷久宣、土田英人、巣山晴菜、兼子唯'''<br>
 
不安障害研究鳥瞰 -最近の知見と展望-<br>
2012 不安障害研究4(1)




(執筆者:貝谷久宣 担当編集委員:加藤忠史)
(執筆者:貝谷久宣 担当編集委員:加藤忠史)

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