「病識」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
92 バイト除去 、 2012年1月19日 (木)
編集の要約なし
編集の要約なし
30行目: 30行目:
 1990年代になると病識についての操作的基準による量的・多次元的評価尺度が発達し、実証的研究が活発となった。Amadorら<ref name=amador_schizophr_bull><pubmed>2047782</pubmed></ref>やMarkovaら<ref name=Markova_comprehensive><pubmed>7497711</pubmed></ref>によれば、病識の評価方法は以下の5種類がある。
 1990年代になると病識についての操作的基準による量的・多次元的評価尺度が発達し、実証的研究が活発となった。Amadorら<ref name=amador_schizophr_bull><pubmed>2047782</pubmed></ref>やMarkovaら<ref name=Markova_comprehensive><pubmed>7497711</pubmed></ref>によれば、病識の評価方法は以下の5種類がある。
# 1970年代までは患者の自由な陳述を臨床的に記載する方法で、「あり」「なし」に2分される。
# 1970年代までは患者の自由な陳述を臨床的に記載する方法で、「あり」「なし」に2分される。
# 1980年代に開発され、一定の設問への応答を臨床的に記載する方法で、[[wikipedia:Mental_status_examination|Mental Status Examination]]がその例である。
# 1980年代に開発され、一定の設問への応答を臨床的に記載する方法で、[[Mental Status Examination]]がその例である。
# 1970-80年代に用いられた、患者の自由な陳述を一定の評価基準に基づいて採点する方法。1973年に行われたWHOによる国際研究もこの方法で行われた。
# 1970-80年代に用いられた、患者の自由な陳述を一定の評価基準に基づいて採点する方法。1973年に行われたWHOによる国際研究もこの方法で行われた。
# 一定の設問への応答を評価基準に基づいて採点する方法。1990年代に実証的研究に使われるようになり、The Schedule for Assessment of Insight (SAI)<ref name=David_J_Psychiatry1><pubmed>1422606</pubmed></ref>, The scale to Assess Unawareness of Mental Disorder (SUMD)<ref name=amador_Am_J_Psychiatry><pubmed>8494061</pubmed></ref>がその代表である。
# 一定の設問への応答を評価基準に基づいて採点する方法。1990年代に実証的研究に使われるようになり、The Schedule for Assessment of Insight (SAI)<ref name=David_J_Psychiatry1><pubmed>1422606</pubmed></ref>, The scale to Assess Unawareness of Mental Disorder (SUMD)<ref name=amador_Am_J_Psychiatry><pubmed>8494061</pubmed></ref>がその代表である。
51行目: 51行目:
 一方、[[前頭前野]]内側部が自己の感情状態、[[思考]]、自己の性格特性など自分自身の主観的状態を含む[[内的表象]]と密接に関連していることから<ref>'''十一元三'''<br>広汎性発達障害と前頭葉<br>''臨床精神医学:'' 2003, 32:395-404</ref>、この部位の関与も推定できる。なお Parelladaら<ref><pubmed>20884756</pubmed></ref>は初回エピソード精神病患者(統合失調症圏53例、それ以外57例)を踏査し、[[前頭葉]]および[[頭頂葉]]の[[灰白質]]の減少が2年後の精神病症状についての病識と有意に相関することを報告している。
 一方、[[前頭前野]]内側部が自己の感情状態、[[思考]]、自己の性格特性など自分自身の主観的状態を含む[[内的表象]]と密接に関連していることから<ref>'''十一元三'''<br>広汎性発達障害と前頭葉<br>''臨床精神医学:'' 2003, 32:395-404</ref>、この部位の関与も推定できる。なお Parelladaら<ref><pubmed>20884756</pubmed></ref>は初回エピソード精神病患者(統合失調症圏53例、それ以外57例)を踏査し、[[前頭葉]]および[[頭頂葉]]の[[灰白質]]の減少が2年後の精神病症状についての病識と有意に相関することを報告している。


 これまでの実証的研究では、Youngら<ref><pubmed>8398943</pubmed></ref>は、31例の統合失調症患者を対象に、前頭葉機能を反映すると考えられる[[wikipedia:JA:ウィスコンシンカード分類課題|Wisconsin Card Sorting Test (WCST)]], verbal fluency test, trail making testを実施し、現在の症状に対する認識と誤った帰属(SUMDによる評価)とが、WCSTの成績低下と相関していたことを報告しているなど、前頭葉機能と病識との関連を報告したものが多くみられる。
 これまでの実証的研究では、Youngら<ref><pubmed>8398943</pubmed></ref>は、31例の統合失調症患者を対象に、前頭葉機能を反映すると考えられる[[Wisconsin Card Sorting Test (WCST)]], verbal fluency test, trail making testを実施し、現在の症状に対する認識と誤った帰属(SUMDによる評価)とが、WCSTの成績低下と相関していたことを報告しているなど、前頭葉機能と病識との関連を報告したものが多くみられる。


 Queeら<ref><pubmed>21097989</pubmed></ref>は270例の非感情病圏の精神病患者を調査し、神経認知機能よりも社会的認知機能のほうが病識との関連性が高いことを報告し、情動認識や相手の心を推測する機能が関連している可能性について述べているなど、社会的認知の脳科学の発展に伴い、それとの関連で病識欠如の成因を想定しようとする考え方が見られるようになっている。
 Queeら<ref><pubmed>21097989</pubmed></ref>は270例の非感情病圏の精神病患者を調査し、神経認知機能よりも社会的認知機能のほうが病識との関連性が高いことを報告し、情動認識や相手の心を推測する機能が関連している可能性について述べているなど、社会的認知の脳科学の発展に伴い、それとの関連で病識欠如の成因を想定しようとする考え方が見られるようになっている。

案内メニュー