「Dab1」の版間の差分

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 では、Dab1の欠損により、何が一次的に障害されているのか?、この問題を解明する為に、周囲の細胞が正常な環境下で、一部の神経細胞でのみDab1の機能を阻害し、dab1の欠損によりどんな移動障害が引き起こされるのかが詳細に観察された。大脳新皮質の興奮性神経細胞は誕生時期の違いにより、異なる移動過程を経ることが知られている。早生まれの神経細胞は脳室帯(ventricular zone)で誕生した後、もともと脳の表層にアンカリングしてあった、突起を用いて細胞体を引き上げるsomal translocationと呼ばれる形式で、移動する。一方、遅生まれの神経細胞は脳室帯で誕生した後、脳室下帯(subventricular zone)の直上で多極性の形態(多極性細胞)をとり、突起を出したり縮めたりしながら多極性移動(multipolar migration)と呼ばれる移動を行い、その後、紡錘形の形態にトランスフォームして脳表面にlocomotionと呼ばれる方式で移動する。さらに、脳表面付近では神経細胞の進行方向に長く伸びた先導突起(leading process)と呼ばれる突起を辺縁帯(marginal zone)付近まで伸ばし、核を引き上げる様に移動するターミナルトランスロケーションと呼ばれる移動様式により移動を行う。in utero electroporationによってdab1のノックダウンが行われた結果、dab1がノックダウンされた神経細胞は脳の表層近くまで移動するが、移動の最終過程であるターミナルトランスロケーションと樹状突起の発達が障害されていることが示された。この実験結果ではターミナルトランスロケーションも阻害されていることから、樹状突起形成の発達障害はその二次的な影響との可能性も考えられるが、海馬において生後3日からに次期特異的にdab1をノックアウトした場合に、樹状突起形成に異常が生じること、dab1ノックアウトマウスから得られた神経細胞を培養した場合にも樹状突起の形成に障害が生じることから、dab1には樹状突起形成を促進する働きがあることが示唆された。また、dab1のコンディショナルノックアウトマウスを用いた実験では、早生まれの細胞ではsomal translocationが阻害され、遅生まれの細胞ではteriminal translocationが阻害されていることが示された。
 では、Dab1の欠損により、何が一次的に障害されているのか?、この問題を解明する為に、周囲の細胞が正常な環境下で、一部の神経細胞でのみDab1の機能を阻害し、dab1の欠損によりどんな移動障害が引き起こされるのかが詳細に観察された。大脳新皮質の興奮性神経細胞は誕生時期の違いにより、異なる移動過程を経ることが知られている。早生まれの神経細胞は脳室帯(ventricular zone)で誕生した後、もともと脳の表層にアンカリングしてあった、突起を用いて細胞体を引き上げるsomal translocationと呼ばれる形式で、移動する。一方、遅生まれの神経細胞は脳室帯で誕生した後、脳室下帯(subventricular zone)の直上で多極性の形態(多極性細胞)をとり、突起を出したり縮めたりしながら多極性移動(multipolar migration)と呼ばれる移動を行い、その後、紡錘形の形態にトランスフォームして脳表面にlocomotionと呼ばれる方式で移動する。さらに、脳表面付近では神経細胞の進行方向に長く伸びた先導突起(leading process)と呼ばれる突起を辺縁帯(marginal zone)付近まで伸ばし、核を引き上げる様に移動するターミナルトランスロケーションと呼ばれる移動様式により移動を行う。in utero electroporationによってdab1のノックダウンが行われた結果、dab1がノックダウンされた神経細胞は脳の表層近くまで移動するが、移動の最終過程であるターミナルトランスロケーションと樹状突起の発達が障害されていることが示された。この実験結果ではターミナルトランスロケーションも阻害されていることから、樹状突起形成の発達障害はその二次的な影響との可能性も考えられるが、海馬において生後3日からに次期特異的にdab1をノックアウトした場合に、樹状突起形成に異常が生じること、dab1ノックアウトマウスから得られた神経細胞を培養した場合にも樹状突起の形成に障害が生じることから、dab1には樹状突起形成を促進する働きがあることが示唆された。また、dab1のコンディショナルノックアウトマウスを用いた実験では、早生まれの細胞ではsomal translocationが阻害され、遅生まれの細胞ではteriminal translocationが阻害されていることが示された。
[[ Image:Dab1_signaling_pathway.png | thumb | 700 px | '''図3 大脳新皮質層形成時におけるDab1を介するシグナル伝達系の模式図''']]


 一方Dab1が神経細胞移動を制御する分子メカニズムについてはN-cadherinとIntegrinが関与していることが実験的に示唆されている。大脳新皮質神経細胞のReelin刺激により、Dab1のチロシンリン酸化が起こり、ここにCrkを介するC3Gの活性化、続くRap1の活性化が起こることが培養細胞を用いた実験により知られていた為、Rap1のエフェクターとして既に知られていたN-cadherinの関与が調べられた。実験では、Rap1の不活性化因子であるRap1GAPを強制発現させることにより、Rap1を不活性化した。これにより、神経細胞の移動が障害され、皮質板に侵入する神経細胞の割合が減少する。Rap1はN-cadherinの細胞内から細胞表面への輸送に関わっていることが知られていたことから、Rap1GAPとN-cadherinを同時に発現させた所、Rap1GAPによる神経細胞の移動障害が抑制されることが示唆された。この結果により、間接的ではあるが、Reelin-Dab1シグナルがRap1を介してN-cadherinの細胞表面への輸送制御を行うことにより、神経細胞移動を制御している可能性が示唆された。
 一方Dab1が神経細胞移動を制御する分子メカニズムについてはN-cadherinとIntegrinが関与していることが実験的に示唆されている。大脳新皮質神経細胞のReelin刺激により、Dab1のチロシンリン酸化が起こり、ここにCrkを介するC3Gの活性化、続くRap1の活性化が起こることが培養細胞を用いた実験により知られていた為、Rap1のエフェクターとして既に知られていたN-cadherinの関与が調べられた。実験では、Rap1の不活性化因子であるRap1GAPを強制発現させることにより、Rap1を不活性化した。これにより、神経細胞の移動が障害され、皮質板に侵入する神経細胞の割合が減少する。Rap1はN-cadherinの細胞内から細胞表面への輸送に関わっていることが知られていたことから、Rap1GAPとN-cadherinを同時に発現させた所、Rap1GAPによる神経細胞の移動障害が抑制されることが示唆された。この結果により、間接的ではあるが、Reelin-Dab1シグナルがRap1を介してN-cadherinの細胞表面への輸送制御を行うことにより、神経細胞移動を制御している可能性が示唆された。
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