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== サブファミリー == | == サブファミリー == | ||
[[wikipeida:ja:哺乳類 | 哺乳類]]では[[wikipedia:DAB2 | Dab2]]が存在しており、細胞表面分子の[[wikipedia:Protein turnover | ターンオーバー]]、[[wikipedia:ja:エンドサイトーシス | エンドサイトーシス]]等に関与していると考えられている。 | |||
== 発現様式 == | == 発現様式 == | ||
[[wikipedia:ja:In situ ハイブリダイゼーション | ''in situ''ハイブリダイゼーション]]により、dab1 [[wikipedia:ja: 伝令RNA | mRNA]]の発現分布を調べた報告<ref name=rice />によると、発生期のマウス大脳新皮質では、胎生11.5日目の[[神経上皮細胞]]に弱く発現が観察される。胎生12.5日目には[[wikipedia:Cerebral cortex | 皮質板(cortical plate)]]での強い発現が顕著になり、[[wikipedia:Cerebral cortex | 脳室帯(ventricular zone: VZ)]]での弱い発現も引き続き観察される。その後、生後0日にかけて、強い皮質板での発現が維持されるが、脳室帯での発現は弱くなり、[[wikipedia:Intermediate zone of cortex | 中間帯(intermediate zone:IMZ)]]の上部での弱い発現が観察されるようになる。成獣のマウスでも生後0日に比べて弱くはなるが、皮質板において発現が観察される。Dab1の発現部位は、Reelinを発現しているCajal- | [[wikipedia:ja:In situ ハイブリダイゼーション | ''in situ''ハイブリダイゼーション]]により、dab1 [[wikipedia:ja: 伝令RNA | mRNA]]の発現分布を調べた報告<ref name=rice />によると、発生期のマウス大脳新皮質では、胎生11.5日目の[[神経上皮細胞]]に弱く発現が観察される。胎生12.5日目には[[wikipedia:Cerebral cortex | 皮質板(cortical plate)]]での強い発現が顕著になり、[[wikipedia:Cerebral cortex | 脳室帯(ventricular zone: VZ)]]での弱い発現も引き続き観察される。その後、生後0日にかけて、強い皮質板での発現が維持されるが、脳室帯での発現は弱くなり、[[wikipedia:Intermediate zone of cortex | 中間帯(intermediate zone:IMZ)]]の上部での弱い発現が観察されるようになる。成獣のマウスでも生後0日に比べて弱くはなるが、皮質板において発現が観察される。Dab1の発現部位は、Reelinを発現しているCajal-Retzius細胞が存在する[[wikipedia:Cerebral cortex | 辺縁帯(marginal zone)]]と相互排他的発現パターンになっている。海馬では妊娠12.5日目には神経上皮細胞に弱くdab1のmRNAが観察され、妊娠14.5日目までに海馬の辺縁帯、[[錐体細胞層]]、脳室帯の三層が別れ、錐体細胞層に強い発現が観察されるようになる。また隣り合う歯状回の顆粒細胞層にもdab1の発現が観察される。海馬についてもdab1の発現は生後3日でも維持される。また、大脳新皮質と同様、Dab1の発現領域はReelinを発現するCajal-Retzius細胞の存在する辺縁帯に隣接した領域で観察される。小脳については、妊娠13.5日目の脳室帯、[[外顆粒層]]、[[分化帯]]に発現が見られ、妊娠18.5日目から生後3日では、[[wikipedia:ja:小脳 | プルキンエ細胞層]]で発現が観察される。また、妊娠18.5日目ではReelinを強く発現する顆粒細胞が存在する、外顆粒層に隣接してプルキンエ細胞層が存在し、小脳においても相補的な発現パターンを示す。 Dab1のタンパク質がどの様な細胞に、どのような細胞内分布で発現しているのかは、免疫組織化学染色が難しく、詳しくは知られていないが、免疫組織化学染色に成功しているグループによる報告<ref name=rice />によれば、Dab1は主には、大脳新皮質や海馬では神経細胞、小脳ではプルキンエ細胞に発現していると考えられている。 | ||
BGEM http://www.stjudebgem.org/web/view/probe/viewProbeDetails.php?id=1 | BGEM http://www.stjudebgem.org/web/view/probe/viewProbeDetails.php?id=1 | ||
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== Dab1の機能 == | == Dab1の機能 == | ||
前述の通り、dab1のノックアウトマウス及び、自然変異マウスで、大脳新皮質、海馬、小脳、脳幹、脊髄等の神経細胞の移動が障害されていることから、Dab1は層構造・核構造を形成する神経細胞移動において大変重要な役割を行ってると考えられている。他の組織・臓器における機能についてはいくつか報告があるのみで、あまりよくわかっていない。 | |||
=== 大脳新皮質発生で観察されるDab1欠損による発生異常 === | === 大脳新皮質発生で観察されるDab1欠損による発生異常 === | ||
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[[Image:Migration.png|thumb|700px|<b>図2 大脳新皮質の正常発生とReelin、Dab1、ApoER2VLDLR dKOマウスの発生異常</b>]] | [[Image:Migration.png|thumb|700px|<b>図2 大脳新皮質の正常発生とReelin、Dab1、ApoER2VLDLR dKOマウスの発生異常</b>]] | ||
大脳新皮質の神経細胞は脳室帯で誕生後、脳の表面方向に放射状に移動し、最初期に誕生した神経細胞で形成される[[プレプレート]]と呼ばれる細胞層の間に入り込んで、これを[[カハールレティウス]](Cajal-Retzius)細胞を含む辺縁帯とサブプレートと呼ばれる二つの層に分離する(プレプレートスプリッティング)(図2B, iからii)。神経細胞は辺縁帯の直下で移動を終了し、樹状突起を発達させて最終分化を行なう。神経細胞は次々に脳室帯で誕生して脳表面方向に移動するが、誕生時期の遅い神経細胞は誕生時期の早い神経細胞を追い越し、より脳の表層側に配置されるようになる(図2B, iii)。この細胞配置の仕組みは“インサイドアウト”様式と呼ばれ、哺乳類の大脳新皮質でのみ観察される特徴的な組織構築様式である。 | |||
Dab1欠損マウスでは神経細胞は正常に産生されるが、神経細胞はプレプレートの間に入ることが出来ず、プレプレートスプリッティングが起らない。その為辺縁帯が存在しない。後続の神経細胞は正常に移動出来ずに、脳表面から脳室方向に積み重なって行き、“アウトサイドイン”と呼ばれる異常な組織構築を行うようになり、大体の層構造が逆転する異常が観察される。異常な構造中には、[[インターナルプレキシフォームゾーン(internal plexiform zone)]]と呼ばれる細胞密度の低い領域が散在し、この部分に[[視床]]から[[サブプレート]]に投射する[[軸索]]が走行し、また、神経細胞からは樹状突起がこの領域に向かい展開される。 | |||
=== Dab1の大脳新皮質神経発生における機能 === | === Dab1の大脳新皮質神経発生における機能 === | ||
dab1欠損により引き起こされるこれらの神経細胞の移動障害が、dab1が欠損した細胞自身の障害によるものなのか、あるいは、dab1を欠損した周囲の細胞によって引き起こされた二次的な原因によるものなのか、あるいは両方なのか、Dab1の機能を解明する上で、焦点となった。この問題を解決するため、野生型Dab1を持つ細胞とDab1を欠損した細胞の[[wikipedia:Chimera (genetics) | キメラマウス]]が作成された<ref><pubmed>11698592</ref></pubmed>。その結果、野生型のDab1を持つ細胞群がDab1を欠損した細胞群の上に配置されるような大脳新皮質(スーパーコルテックス)が形成される一方、少数の野生型細胞がDab1欠損細胞群中に取り込まれることが示された。この結果より、Dab1欠損による細胞の移動障害は主には細胞内因性の障害によって引き起こされているが、一部は周囲の細胞の障害にも影響されていることが示唆された。また、dab1を欠損したyotariマウスにdab1を''in utero'' [[wikipedia:ja:電気穿孔法 | エレクトロポレーション法]]により、導入してやることにより、Dab1をレスキューした場合においてもdab1を導入された神経細胞はDab1を欠損した神経細胞を追い越して、脳表層まで到達し、プレプレートスプリッティングも引き起こす<ref><pubmed>19796633</pubmed></ref>ことから、dab1欠損による移動障害が主には細胞内在性に引き起こされていることが示唆されている。 | |||
では、Dab1の欠損により、何が一次的に障害されているのか?、この問題を解明する為に、周囲の細胞が正常な環境下で、一部の神経細胞でのみDab1の機能を阻害し、dab1の欠損によりどんな移動障害が引き起こされるのかが詳細に観察された。大脳新皮質の神経細胞は誕生時期の違いにより、異なる移動過程を経ることが知られている<ref><pubmed></pubmed></ref>。早生まれの神経細胞は脳室帯(ventricular zone)で誕生した後、もともと脳の表層にアンカリングしてあった、突起を用いて細胞体を引き上げるsomal translocationと呼ばれる形式で、移動する。一方、遅生まれの神経細胞は脳室帯で誕生した後、[[脳室下帯(subventricular zone)]]の直上で多極性の形態([[多極性細胞]])をとり、突起を出したり縮めたりしながら多極性移動([[multipolar migration]])と呼ばれる移動を行い、その後、紡錘形の形態にトランスフォームして脳表面にロコモーションと呼ばれる方式で移動する。さらに、脳表面付近では神経細胞の進行方向に長く伸びた[[先導突起(leading process)]]と呼ばれる突起を辺縁帯(marginal zone)付近まで伸ばし、核を引き上げる様に移動するターミナルトランスロケーションと呼ばれる移動様式により移動を行う。''in utero''エレクトロポレーションによってdab1のノックダウンが行われた結果、dab1が[[wikipedia:ja:遺伝子ノックダウン | ノックダウン]]された神経細胞は脳の表層近くまで移動するが、移動の最終過程であるターミナルトランスロケーションと樹状突起の発達が障害されていることが示された。この実験結果ではターミナルトランスロケーションも阻害されていることから、樹状突起形成の発達障害はその二次的な影響との可能性も考えられるが、海馬において生後3日からに次期特異的にdab1をノックアウトした場合に、樹状突起形成に異常が生じること、dab1ノックアウトマウスから得られた神経細胞を培養した場合にも樹状突起の形成に障害が生じることから、dab1には樹状突起形成を促進する働きがあることが示唆された。また、dab1のコンディショナルノックアウトマウスを用いた実験では、早生まれの細胞ではsomal translocationが阻害され、遅生まれの細胞ではteriminal translocationが阻害されていることが示された。また、Dab1のチロシンリン酸化非依存的にDab1に結合する分子として、Notch、Dab2IP、N-WASP、mPcdh18、APP、APLP1、 APLP2、が知られている。 | |||
[[Image:Dab1 signaling pathway.png|thumb|700px|<b>図3 大脳新皮質層形成時におけるDab1を介するシグナル伝達系の模式図</b>]] | [[Image:Dab1 signaling pathway.png|thumb|700px|<b>図3 大脳新皮質層形成時におけるDab1を介するシグナル伝達系の模式図</b>]] |
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