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オレキシンは睡眠・覚醒制御に重要な役割をする神経ペプチドである。摂食中枢とされていた視床下部外側野(lateral hypothalamic area, LHA)に局在すること、オレキシンをラットやマウスの脳室内に投与すると摂食量が増えることなどから、発見当初にはオレキシンは摂食行動の制御因子の一つとしてまず注目を浴びた。さらに、オレキシンやその受容体遺伝子に関する遺伝子改変動物モデルの解析、その後の臨床的研究によりオレキシン産生ニューロンの変性・脱落がナルコレプシーの病因であることが明らかになった。このことにより、この物質が覚醒の維持にきわめて重要な役割を担っていることが明らかになった。また、オレキシン産生ニューロンの入出力系の解明により、大脳辺縁系、視床下部における摂食行動の制御系、脳幹の覚醒制御システムとの相互の関係が明らかになった。オレキシン系は睡眠・覚醒調節機構の一部であるだけでなく、情動やエネルギーバランスに応じ、睡眠・覚醒や報酬系そして摂食行動を適切に制御する統合的な機能を担っていると考えられている。オレキシンは、報酬系、動機、エネルギー恒常性などと密接に関連しながら、覚醒を制御している。大脳辺縁系との関係は、情動にともなう覚醒上昇にオレキシンが関与していることをしめしており、また不眠症の一部がオレキシンの機能亢進による病態である可能性を示唆する。実際に、オレキシン受容体拮抗薬は理想的な睡眠導入薬として期待されている。 |
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