「細胞接着分子」の版間の差分

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=== 細胞外マトリックス分子(Extracellular Matrix Molecules)  ===
=== 細胞外マトリックス分子(Extracellular Matrix Molecules)  ===


 細胞外マトリックスは主にコラーゲンやラミニンに代表される分泌蛋白質とヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸などの糖から構成されており、これらの分子が自己組織化することにより細胞の周囲にシート状またはメッシュ状の線維を形成する。それぞれの細胞は細胞外マトリックス分子を分泌し、その細胞自体に適した細胞外環境を構築している。また、細胞外マトリックス分子はMatrix metalloproteinaseなどの細胞外プロテアーゼによって分解され、細胞外環境を随時最適なものにカスタマイズしている。<br> 細胞外マトリックスは単に細胞間を埋め尽くしているだけでなく、細胞を支える構造体となり、細胞の増殖、分化、行動、運命などを決定する。細胞外マトリックス分子の情報は主にインテグリンを介して細胞内へと伝えられる。その他、Telencephalin, NeclなどのIgSF分子群もビトロネクチンなどの細胞外マトリックス蛋白質と結合することで細胞内へと情報を伝える<ref><pubmed>17446174</pubmed></ref><ref><pubmed>:23019340</pubmed></ref>(Minami et al., 2007; Furutani et al., 2012)。<br> 運動ニューロンと筋細胞のシナプス(神経筋接合部)ではシート状の細胞外マトリックス(基底膜)が存在し、細胞外マトリックス蛋白質がシナプス形成を制御している<ref><pubmed>10202544</pubmed></ref>(Sanes and Lichtman, 1999)。一方、中枢神経系におけるシナプスでは明らかな細胞外マトリックス構造が見られないが、ビトロネクチンやトロンボスポンジンなどの細胞外マトリックス蛋白質がスパイン成熟やシナプス形成を制御している<ref><pubmed>22405201</pubmed></ref><ref name=ref33><pubmed>22405201</pubmed></ref>(Christopherson et al., 2005; Furutani et al., 2012)。また、細胞外マトリックス分子はシナプス形成のみならず、幹細胞の維持、細胞移動の制御、軸索伸長の促進・抑制などにも関与している<ref><pubmed>20497467</pubmed></ref><ref><pubmed>21898854</pubmed></ref><ref><pubmed>23083738</pubmed></ref>(Gundelfinger et al., 2010; Kazanis and ffrench-Constant, 2011; Sekine et al., 2012)。(詳細は「[[細胞外マトリックス]]」の項を参照)  
 細胞外マトリックスは主にコラーゲンやラミニンに代表される分泌蛋白質とヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸などの糖から構成されており、これらの分子が自己組織化することにより細胞の周囲にシート状またはメッシュ状の線維を形成する。それぞれの細胞は細胞外マトリックス分子を分泌し、その細胞自体に適した細胞外環境を構築している。また、細胞外マトリックス分子はMatrix metalloproteinaseなどの細胞外プロテアーゼによって分解され、細胞外環境を随時最適なものにカスタマイズしている。<br> 細胞外マトリックスは単に細胞間を埋め尽くしているだけでなく、細胞を支える構造体となり、細胞の増殖、分化、行動、運命などを決定する。細胞外マトリックス分子の情報は主にインテグリンを介して細胞内へと伝えられる。その他、Telencephalin, NeclなどのIgSF分子群もビトロネクチンなどの細胞外マトリックス蛋白質と結合することで細胞内へと情報を伝える<ref><pubmed>17446174</pubmed></ref><ref name=ref33><pubmed>23019340</pubmed></ref>(Minami et al., 2007; Furutani et al., 2012)。<br> 運動ニューロンと筋細胞のシナプス(神経筋接合部)ではシート状の細胞外マトリックス(基底膜)が存在し、細胞外マトリックス蛋白質がシナプス形成を制御している<ref><pubmed>10202544</pubmed></ref>(Sanes and Lichtman, 1999)。一方、中枢神経系におけるシナプスでは明らかな細胞外マトリックス構造が見られないが、ビトロネクチンやトロンボスポンジンなどの細胞外マトリックス蛋白質がスパイン成熟やシナプス形成を制御している<ref><pubmed>22405201</pubmed></ref><ref name=ref33/>(Christopherson et al., 2005; Furutani et al., 2012)。また、細胞外マトリックス分子はシナプス形成のみならず、幹細胞の維持、細胞移動の制御、軸索伸長の促進・抑制などにも関与している<ref><pubmed>20497467</pubmed></ref><ref><pubmed>21898854</pubmed></ref><ref><pubmed>23083738</pubmed></ref>(Gundelfinger et al., 2010; Kazanis and ffrench-Constant, 2011; Sekine et al., 2012)。(詳細は「[[細胞外マトリックス]]」の項を参照)  


== ギャップジャンクション(Gap Junction)  ==
== ギャップジャンクション(Gap Junction)  ==


 約1000ダルトン以下の低分子を通すことのできる細胞間チャネルを有する接着構造をギャップジャンクションという。ギャップジャンクションを介して、栄養素、代謝産物、セカンドメッセンジャー、陽イオン、陰イオンなどの様々な分子が細胞間で輸送される。この細胞間チャネルはConnexinsとPannexinsにより形成され、ヒトやマウスのゲノムには約20種類のConnexin遺伝子と、3種類のPannexin遺伝子が存在する。ニューロン間のギャップジャンクションは、主に6種類のConnexin-26, -30.2, -31.1, 36, -45, -57と2種類のPannexin-1, -2で構成される。Connexinsは細胞膜でホモまたはヘテロ6量体(Connexon)として存在し、対面する細胞膜のConnexonどうしでさらにホモフィリックあるいはヘテロフィリックに結合することで細胞間接合部チャネル、すなわちギャップジャンクションを形成する(図5)。ギャップジャンクションはニューロン間のみならず、小脳プルキンエ細胞とバーグマングリアの接着部位などにも存在し、ニューロン−グリア細胞間の情報伝達にも機能している(Sohl et al., 2005)。  
 約1000ダルトン以下の低分子を通すことのできる細胞間チャネルを有する接着構造をギャップジャンクションという。ギャップジャンクションを介して、栄養素、代謝産物、セカンドメッセンジャー、陽イオン、陰イオンなどの様々な分子が細胞間で輸送される。この細胞間チャネルはConnexinsとPannexinsにより形成され、ヒトやマウスのゲノムには約20種類のConnexin遺伝子と、3種類のPannexin遺伝子が存在する。ニューロン間のギャップジャンクションは、主に6種類のConnexin-26, -30.2, -31.1, 36, -45, -57と2種類のPannexin-1, -2で構成される。Connexinsは細胞膜でホモまたはヘテロ6量体(Connexon)として存在し、対面する細胞膜のConnexonどうしでさらにホモフィリックあるいはヘテロフィリックに結合することで細胞間接合部チャネル、すなわちギャップジャンクションを形成する(図5)。ギャップジャンクションはニューロン間のみならず、小脳プルキンエ細胞とバーグマングリアの接着部位などにも存在し、ニューロン−グリア細胞間の情報伝達にも機能している<ref><pubmed>15738956</pubmed></ref>(Sohl et al., 2005)。  


== タイトジャンクション(Tight Junction)  ==
== タイトジャンクション(Tight Junction)  ==


 神経細胞におけるタイトジャンクションの存在に関しての報告はないが、血液−脳関門(Blood-Brain Barier: BBB)の維持におけるタイトジャンクションの役割は欠かせない。血管内皮細胞同士がタイトジャンクションを介して強固に結合することで、脳実質内への血液の浸潤を妨げるバリア構造が形成される。タイトジャンクションはClaudins、Occludins、JAMsによるホモフィリック結合を基盤として構築され、これら分子の細胞内領域がZonula occludens (ZO)を介してアクチン細胞骨格と結合することで、強固な細胞間接着構造が形成される(図6)(Tsukita et al., 2001; Redzic, 2011)。また、末梢神経系でのシュワン細胞による軸索の髄鞘形成においては、Claudin-19を介したタイトジャンクション構造が重要な役割を果たしている(Miyamoto et al., 2005)。  
 神経細胞におけるタイトジャンクションの存在に関しての報告はないが、血液−脳関門(Blood-Brain Barier: BBB)の維持におけるタイトジャンクションの役割は欠かせない。血管内皮細胞同士がタイトジャンクションを介して強固に結合することで、脳実質内への血液の浸潤を妨げるバリア構造が形成される。タイトジャンクションはClaudins、Occludins、JAMsによるホモフィリック結合を基盤として構築され、これら分子の細胞内領域がZonula occludens (ZO)を介してアクチン細胞骨格と結合することで、強固な細胞間接着構造が形成される(図6)<ref><pubmed>11283726</pubmed></ref><ref><pubmed>21349151</pubmed></ref>(Tsukita et al., 2001; Redzic, 2011)。また、末梢神経系でのシュワン細胞による軸索の髄鞘形成においては、Claudin-19を介したタイトジャンクション構造が重要な役割を果たしている<ref><pubmed>15883201</pubmed></ref>(Miyamoto et al., 2005)。  


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