「嗅皮質」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
11行目: 11行目:
細胞種<br>投射ニューロン<br>新皮質や海馬などの他の皮質領域同様、嗅皮質の投射ニューロンもpyramidal neuronである。表層側(LayerⅠ)にapical dendriteを伸ばし、多くのspineを形成し、layerⅠaで嗅球から、layerⅠbでassociation fiberからのシナプス入力を受けている。深層(LayerⅢ)側には細胞体から放射状にbasal dendriteを伸ばしている。Pyramidal neuronの軸索は、細胞体深部から深層方向に向かって伸長し、多数の軸索側枝を出す。<br>介在ニューロン(Nonpyramidal cells)<br>嗅皮質の介在ニューロンの多くはGABAergicであり、抑制性である。LayerⅠ~Ⅲにかけて存在し、horizontal cell、multipollar cellなどがある。  
細胞種<br>投射ニューロン<br>新皮質や海馬などの他の皮質領域同様、嗅皮質の投射ニューロンもpyramidal neuronである。表層側(LayerⅠ)にapical dendriteを伸ばし、多くのspineを形成し、layerⅠaで嗅球から、layerⅠbでassociation fiberからのシナプス入力を受けている。深層(LayerⅢ)側には細胞体から放射状にbasal dendriteを伸ばしている。Pyramidal neuronの軸索は、細胞体深部から深層方向に向かって伸長し、多数の軸索側枝を出す。<br>介在ニューロン(Nonpyramidal cells)<br>嗅皮質の介在ニューロンの多くはGABAergicであり、抑制性である。LayerⅠ~Ⅲにかけて存在し、horizontal cell、multipollar cellなどがある。  


嗅球からの入力<br>興奮性入力<br> 嗅球から嗅皮質への入力源は、僧帽細胞(Mitral cell)と房飾細胞(Tufted cell)である。<br>僧帽細胞は、嗅皮質のほぼ全領域(AON、TT、OT、APC/PPC、nLOT、ACO、PLCO、LEC)に軸索投射するが、房飾細胞は嗅皮質のなかでも前部(AON、OT、TT、APCの一部 )のみに軸索投射する。嗅球の僧帽細胞・房飾細胞の主軸索は、外側嗅索(Lateral olfactory tract&nbsp;: LOT)を通り、嗅皮質の表層に軸索側枝を伸ばし、同側の嗅皮質の各領域へと投射する。これら僧帽細胞、房飾細胞の軸索はすべて、嗅皮質のLayerⅠaにシナプスを形成する。<br>これまでに、嗅球内の各領域(ドメイン)から前嗅核のpars externaへの軸索投射には大まかなトポグラフィーがあることは知られている②が、単一の僧帽細胞は、嗅皮質の各領域へ広範囲な軸索を送り、トポグラフィックな関係は見出されていない。
嗅球からの入力<br>興奮性入力<br> 嗅球から嗅皮質への入力源は、僧帽細胞(Mitral cell)と房飾細胞(Tufted cell)である。<br>僧帽細胞は、嗅皮質のほぼ全領域(AON、TT、OT、APC/PPC、nLOT、ACO、PLCO、LEC)に軸索投射するが、房飾細胞は嗅皮質のなかでも前部(AON、OT、TT、APCの一部 )のみに軸索投射する。嗅球の僧帽細胞・房飾細胞の主軸索は、外側嗅索(Lateral olfactory tract&nbsp;: LOT)を通り、嗅皮質の表層に軸索側枝を伸ばし、同側の嗅皮質の各領域へと投射する。これら僧帽細胞、房飾細胞の軸索はすべて、嗅皮質のLayerⅠaにシナプスを形成する。<br>これまでに、嗅球内の各領域(ドメイン)から前嗅核のpars externaへの軸索投射には大まかなトポグラフィーがあることは知られている<ref><pubmed> 6470206 </pubmed></ref>が、単一の僧帽細胞は、嗅皮質の各領域へ広範囲な軸索を送り、トポグラフィックな関係は見出されていない。


神経調節性入力<br>他の多くの大脳皮質領域と同様、嗅皮質もアセチルコリン性、ノルアドレナリン性、セロトニン性、ドーパミン性、ヒスタミン性の神経調節入力を広く受ける。<br>基底核からのアセチルコリン性入力は、興奮性/抑制性シナプス入力の抑制、シナプスの長期増強などの機能が知られており、これらのコリン性入力による変化は、睡眠覚醒などの行動状態に依存した嗅覚情報処理モードの変換をもたらすと考えられている。<br>また、視床下部からはヒスタミン性の入力を受けている。さらに、腹側線条体の一部である嗅結節では、腹側被蓋野からのドーパミン性入力が多く存在することが特徴として挙げられる。  
神経調節性入力<br>他の多くの大脳皮質領域と同様、嗅皮質もアセチルコリン性、ノルアドレナリン性、セロトニン性、ドーパミン性、ヒスタミン性の神経調節入力を広く受ける。<br>基底核からのアセチルコリン性入力は、興奮性/抑制性シナプス入力の抑制、シナプスの長期増強などの機能が知られており、これらのコリン性入力による変化は、睡眠覚醒などの行動状態に依存した嗅覚情報処理モードの変換をもたらすと考えられている。<br>また、視床下部からはヒスタミン性の入力を受けている。さらに、腹側線条体の一部である嗅結節では、腹側被蓋野からのドーパミン性入力が多く存在することが特徴として挙げられる。  
28行目: 28行目:


徐波睡眠中の嗅皮質の活動<br>徐波睡眠中、梨状皮質では海馬と類似した鋭波が発生することが分かった⑦。梨状皮質の錐体細胞は豊富な興奮性反回側枝が存在し、お互いが密にシナプス接続されている。徐波睡眠時、この反回側枝の同期的な活動により鋭波が発生する。この鋭波は梨状皮質以外の多くの嗅皮質領域でも同期している。海馬鋭波は睡眠直前の経験によって発火したニューロン群がその時間的な関係を保ったまま再活性することが知られている。この再活性化によって、海馬での短期記憶が長期記憶へと固定化されると考えられている。嗅皮質はolfactory association learningの場であることも知られているので、嗅皮質鋭波は、睡眠直前の匂い経験によって発火したニューロン群の再活性化の場であり、再活性されることで嗅覚記憶の固定化に寄与していると考えられる。また、嗅皮質鋭波は嗅球の顆粒細胞層にトップダウン入力し、嗅球回路の再編に寄与している。
徐波睡眠中の嗅皮質の活動<br>徐波睡眠中、梨状皮質では海馬と類似した鋭波が発生することが分かった⑦。梨状皮質の錐体細胞は豊富な興奮性反回側枝が存在し、お互いが密にシナプス接続されている。徐波睡眠時、この反回側枝の同期的な活動により鋭波が発生する。この鋭波は梨状皮質以外の多くの嗅皮質領域でも同期している。海馬鋭波は睡眠直前の経験によって発火したニューロン群がその時間的な関係を保ったまま再活性することが知られている。この再活性化によって、海馬での短期記憶が長期記憶へと固定化されると考えられている。嗅皮質はolfactory association learningの場であることも知られているので、嗅皮質鋭波は、睡眠直前の匂い経験によって発火したニューロン群の再活性化の場であり、再活性されることで嗅覚記憶の固定化に寄与していると考えられる。また、嗅皮質鋭波は嗅球の顆粒細胞層にトップダウン入力し、嗅球回路の再編に寄与している。
<references/>
10

回編集

案内メニュー