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=== Mbh1のエンハンサー  ===
=== Mbh1のエンハンサー  ===


 哺乳類には、千種類以上の様々な個性を持つ神経細胞が存在する。プロニューラル因子と呼ばれる転写制御因子は、神経細胞の分化を開始させるスイッチとして働く<ref><pubmed>17898002</pubmed></ref>。プロニューラル因子が直接制御する遺伝子は長らく不明であったが、転写制御因子''Mbh1''(''Mammalian Bar-class homeobox 1'')がプロニューラル因子の一つである''Atoh1''(''Math1'', ''Mammalian atonal homolog 1'')によって直接に制御されることが見出された<ref name="ref29"><pubmed>15788459</pubmed></ref>。''Mbh1''は胎生期の脊髄交連神経細胞で発現しており、''in vivo'' electroporation法によって強制発現させると脊髄背側の細胞を交連神経細胞へ運命転換させる<ref><pubmed>12657654</pubmed></ref>。''Mbh1''遺伝子の3’側にエンハンサーが存在し、その中のE-box(CAGCTG)にAtoh1タンパク質が結合する<ref name="ref29" />。Atoh1タンパク質はこのE-boxを介して''Mbh1''遺伝子の転写を直接活性化すると考えられる。<br>  
 哺乳類には、千種類以上の様々な個性を持つ神経細胞が存在する。プロニューラル因子と呼ばれる転写制御因子は、神経細胞の分化を開始させるスイッチとして働く<ref><pubmed>17898002</pubmed></ref>。プロニューラル因子が直接に制御する遺伝子は長らく不明であったが、''Mbh1''(''Mammalian Bar-class homeobox 1'')がプロニューラル因子の''Atoh1''(''Math1'', ''Mammalian atonal homolog 1'')によって直接に活性化されることが見出された<ref name="ref29"><pubmed>15788459</pubmed></ref>。''Mbh1''は胎生期の脊髄交連神経細胞で発現しており、強制発現させると脊髄背側の細胞を交連神経細胞へ運命転換させる<ref><pubmed>12657654</pubmed></ref>。''Mbh1''のエンハンサーは遺伝子の3’側に存在し、その活性にはE-box(CAGCTG)が必須である。このE-boxにはAtoh1タンパク質が結合し、転写を活性化する<ref name="ref29" /><br>  


=== 終脳で機能するエンハンサー  ===
=== 終脳で機能するエンハンサー  ===


 マウス胎児の終脳で発現する様々な遺伝子のエンハンサーが網羅的に同定された<ref><pubmed>23375746</pubmed></ref>。DNA配列の種間の比較や、p300の結合を指標にしたCHIP-Seq法によって、4600箇所以上のDNA領域がエンハンサーの候補として挙げられた。そのうち、329のエンハンサーがトランスジェニックマウスを用いて調べられ、再現性のある145のエンハンサーの活性が、レポーター遺伝子の発現として公表された。今後は、終脳で発現する様々な遺伝子の発現制御のネットワークが明らかにされていくものと思われる。<br>  
 マウス胎児の終脳で発現する様々な遺伝子のエンハンサーが網羅的に同定された<ref><pubmed>23375746</pubmed></ref>。DNA配列の種間の比較や、p300の結合を指標にしたCHIP-Seq法によって、4600箇所以上のDNA領域がエンハンサーの候補として挙げられた。そのうち、329のエンハンサーがトランスジェニックマウスを用いて調べられ、再現性のある145のエンハンサーの活性が、レポーター遺伝子の発現として公表された。<br>  


== 関連項目  ==
== 関連項目  ==
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