「前後軸」の版間の差分

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535 バイト追加 、 2013年3月23日 (土)
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[[image:前後軸図1.jpg|thumb|300px|'''図1.神経板の前後軸パターン化'''<br>(A) マウス初期胚におけるシグナリングセンター (<ref name=ref2 />を基に作成) (B) マウス神経板における前後軸パターン形成 (<ref name=ref4 />を参考に作成) VE, visceral endoderm; DVE, distal visceral endoderm; Epi, epiblast; EE, extra embryonic endoderm; AVE, anterior visceral endoderm; Mes, mesoderm]]
[[image:前後軸図1.jpg|thumb|300px|'''図1.神経板の前後軸パターン化'''<br>(A) マウス初期胚におけるシグナリングセンター (<ref name=ref2 />を基に作成) (B) マウス神経板における前後軸パターン形成 (<ref name=ref4 />を参考に作成) VE, visceral endoderm; DVE, distal visceral endoderm; Epi, epiblast; EE, extra embryonic endoderm; AVE, anterior visceral endoderm; Mes, mesoderm]]


 [[wikipedia:ja:鳥類|鳥類]]胚や[[wikipedia:ja:齧歯類|齧歯類]]胚を用いた移植実験や[[機能喪失実験]]は、さらに神経板の前後軸パターン形成機構の解明に貢献した。
 [[wikipedia:ja:ニワトリ|ニワトリ]]胚や[[wikipedia:ja:マウス|マウス]]胚においは、原腸陥入以前の胚盤葉上層(エピブラスト epiblast)には、神経系マーカー遺伝子(Sox3、Sox1)と前脳および中脳マーカー遺伝子(Otx2)が発現している[1]。したがって、これらの種における初期神経板は前方神経の性質をもつと考えられており、ニューコープのモデルにおける活性化の段階に相当するように思われる[1]


 [[wikipedia:ja:ニワトリ|ニワトリ]]胚や[[wikipedia:ja:マウス|マウス]]胚において頭部オーガナイザーに相当する領域は二次軸誘導能をもつ[[原始線条]] (primitive streak) 先端部であり、BMPシグナル阻害分子が発現している。[[頭部オーガナイザー]]によって[[wikipedia:ja:胚性外胚葉|胚性外胚葉]](エピブラスト epiblast)に誘導された初期神経板は、[[Otx2]]などの前方マーカー遺伝子を発現する。したがって、初期神経板は前脳の性質をもつと考えられる<ref name=ref1 />。
 胚盤葉上層の神経前方化に関わる領域として、ニワトリ胚の[[胚盤葉]]下層(hypoblast)やマウス胚の[[前方臓側内胚葉]](anterior visceral endoderm:AVE)が重要である。ニワトリ胚の胚盤葉下層の細胞を別の胚に異所的に移植すると、エピブラストにOtx2や[[Sox3]]の発現が一過的に誘導される<ref name=ref1 />。マウス胚においてAVE細胞(図1)を除去すると、神経板における前脳マーカー遺伝子の発現が消失する。また、AVE細胞に発現する[[Hex]][[Hesx1]]、Otx2、[[Lim1]]遺伝子は、正常な[[前脳]]形成に必須である<ref name=ref1 /> <ref name=ref2><pubmed>22754658</pubmed></ref>(注:AVEは[[wikipedia:ja:遠位臓側内胚葉|遠位臓側内胚葉]] (distal visceral endoderm: DVE) が前方へ移動したものであると考えられてきたが、AVEはDVEと異なる[[細胞系譜]]をもつことが最近明らかになった<ref name=ref3><pubmed>21623358</pubmed></ref>。DVE はAVEの前方移動をガイドするために必要とされる。)。AVE細胞は両生類の頭部オーガナイザーと同様に、CerberusやDkk1 を発現する。Cerberusは後方から分泌されるNodalによって、前方に原始線条が形成されないように抑制的に働く。また、CerberusやDkk1は後方化シグナルとして働くWntシグナルを阻害することで、前方神経板の確立や維持に関わっている<ref name=ref2> <ref name=ref4><pubmed>12461551</pubmed></ref>。


 オーガナイザーの他に前後軸パターン化に関わる領域として、ニワトリ胚の[[胚盤葉]]下層(hypoblast)やマウス胚の胚体外組織である[[前方臓側内胚葉]](anterior visceral endoderm:AVE)が重要である(図1)(細かい話ですが図にはVEしか示されていません。村上)。ニワトリ胚の胚盤葉下層の細胞を別の胚に異所的に移植すると、エピブラストにOtx2や[[Sox3]]の発現が一過的に誘導される<ref name=ref1 />。マウス胚においてAVE細胞を除去すると、神経板における前脳マーカー遺伝子の発現が消失する。また、AVE細胞に発現する[[Hex]]、[[Hesx1]]、Otx2、[[Lim1]]遺伝子は、正常な[[前脳]]形成に必須である<ref name=ref1 /> <ref name=ref2><pubmed>22754658</pubmed></ref>(注:AVEは[[wikipedia:ja:遠位臓側内胚葉|遠位臓側内胚葉]] (distal visceral endoderm: DVE) が前方へ移動したものであると考えられてきたが、AVEはDVEと異なる[[細胞系譜]]をもつことが最近明らかになった<ref name=ref3><pubmed>21623358</pubmed></ref>。DVE はAVEの前方移動をガイドするために必要とされる。)。
 ニワトリ胚やマウス胚において、二次軸誘導能をもち、両生類のオーガナイザー領域に相当する場所は、原始線条 (primitive streak) 先端部および原始線条の先端部から時期を追って形成される結節(ノードnode)と呼ばれる領域である。これらの領域にはBMPシグナル阻害分子であるNogginやChordinが発現している。NogginとChordinの二重変異マウス胚においては、DKK1の変異マウスで見られる頭部欠損と類似し、前脳領域が形成されない。したがって、マウス胚においては、AVE領域とオーガナイザー領域の両者が、前方神経領域の確立に必要であると考えられる。また、CerberusやDkk1は、オーガナイザー領域に由来する中内胚葉細胞(脊索前板 prechordal plate)にも発現しており、中内胚葉細胞からのシグナルも、前方神経板のパターン化に寄与している<ref name=ref5><pubmed>22462542</pubmed></ref>。
 
 AVE細胞は[[Cerberus]]や[[Dkk1]]などの分泌性因子を産生する。これらの分子は、後方化シグナルとして働く[[Wntシグナル]]を阻害することで、前方神経板の性質を維持している<ref name=ref2 /> <ref name=ref4><pubmed>12461551</pubmed></ref>。前方神経板を裏打ちする中内胚葉細胞にもWntシグナル阻害分子が発現し、中内胚葉細胞からのシグナルが前方神経板のパターン化に寄与している<ref name=ref5><pubmed>22462542</pubmed></ref>。


== 神経板の後方化 ==
== 神経板の後方化 ==

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