「夢」の版間の差分

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9 バイト除去 、 2013年4月8日 (月)
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一方、Winsonの説とは逆に、「夢は不要な記憶を消去するために見る」という説がある。この説は、DNAの二重らせん構造の発見でノーベル賞を受賞したCrickらが提唱したもので、レム睡眠中の夢は不要な記憶を消去し神経回路を整理するために生じるとしている<ref><pubmed>6866101</pubmed></ref>。記憶の定着・固定に関して、睡眠には過剰なシナプス結合を減少させる働きがあるとする「シナプス恒常性仮説」<ref><pubmed>14638388</pubmed></ref>は、Crickらの説に近い。しかし、シナプス恒常性仮説では、シナプス結合の減少をレム睡眠ではなくノンレム睡眠中の徐波によるものだとしており、またシナプス結合の減少も特定の結合ではなく、一様に結合を減少させるとしており、夢内容との関係は想定されていない。  
一方、Winsonの説とは逆に、「夢は不要な記憶を消去するために見る」という説がある。この説は、DNAの二重らせん構造の発見でノーベル賞を受賞したCrickらが提唱したもので、レム睡眠中の夢は不要な記憶を消去し神経回路を整理するために生じるとしている<ref><pubmed>6866101</pubmed></ref>。記憶の定着・固定に関して、睡眠には過剰なシナプス結合を減少させる働きがあるとする「シナプス恒常性仮説」<ref><pubmed>14638388</pubmed></ref>は、Crickらの説に近い。しかし、シナプス恒常性仮説では、シナプス結合の減少をレム睡眠ではなくノンレム睡眠中の徐波によるものだとしており、またシナプス結合の減少も特定の結合ではなく、一様に結合を減少させるとしており、夢内容との関係は想定されていない。  


夢の生物学的意義を考える上で、レム睡眠の機能と夢の機能、さらにわれわれが全睡眠時間の20%前後を費やして夢を見ていることと見た夢を覚えていることは分けて考えるべきである。そもそもレム睡眠そのものの機能も未だ明らかではない。また、覚醒時と同様の活動パタンを示す睡眠中の自発的神経活動や睡眠中のシナプス強度の減少が、われわれが見る夢の内容と直接関連するかどうかも不明である。したがって、レム睡眠の特徴を基にして夢が生物学的意義を持つと結論づけるべきではないだろう。
夢の生物学的意義を考える上で、レム睡眠の機能と夢の機能、さらにわれわれが全睡眠時間の20%前後を費やして夢を見ていることと見た夢を覚えていることは分けて考えるべきである。そもそもレム睡眠そのものの機能も未だ明らかではない。また、覚醒時と同様の活動パタンを示す睡眠中の自発的神経活動や睡眠中のシナプス強度の減少が、われわれが見る夢の内容と直接関連するかどうかも不明である。したがって、レム睡眠の特徴を基にして夢が生物学的意義を持つと結論づけるべきではない。


活性化合成仮説が主張するように、夢を見ること自体はレム睡眠の付随現象かもしれない。しかし、われわれの意識・精神活動は脳の神経細胞の電気的活動に基づくものであるが、覚醒時の行動の多くが意識には上らない脳活動の影響を受けている。「無我夢中」という言葉があるように、レム睡眠中の夢では、後述の明晰夢を除いていわゆる自己意識は無い(夢を見ながら、これは現実ではなく、自分は夢を見ていると気がつくことは稀である)。レム睡眠中におけるヒトの夢見という現象を、覚醒ともノンレム睡眠とも異なる、覚醒に近いが自己意識が無い状態における自発性の精神活動として捉えれば、夢の脳科学的研究は睡眠にとどまらずヒトの意識や自発性の脳活動と精神活動の関連を研究するための重要な研究手段となりうる。  
活性化合成仮説が主張するように、夢を見ること自体はレム睡眠の付随現象かもしれない。しかし、われわれの意識・精神活動は脳の神経細胞の電気的活動に基づくものであるが、覚醒時の行動の多くが意識には上らない脳活動の影響を受けている。「無我夢中」という言葉があるように、レム睡眠中の夢では、後述の明晰夢を除いていわゆる自己意識は無い(夢を見ながら、これは現実ではなく、自分は夢を見ていると気がつくことは稀である)。レム睡眠中におけるヒトの夢見という現象を、覚醒ともノンレム睡眠とも異なる、覚醒に近いが自己意識が無い状態における自発性の精神活動として捉えれば、夢の脳科学的研究は睡眠にとどまらずヒトの意識や自発性の脳活動と精神活動の関連を研究するための重要な研究手段となりうる。  
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