「ドーパミン」の版間の差分

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[[Image:DAfig2.jpg|thumb|300px|'''図.ドーパミンの生合成と代謝''']][[Image:DA figure.jpg|right|5px|'''図.ドーパミンの生合成と代謝''']]  
[[Image:DAfig2.jpg|thumb|300px|'''図.ドーパミンの生合成と代謝''']][[Image:DA figure.jpg|right|5px|'''図.ドーパミンの生合成と代謝''']]  


英語名:Dopamine
英語名:dopamine 独:Dopamin 仏:dopamine


 [[wikipedia:ja:カテコール核|カテコール核]]を持つ[[wikipedia:ja:アミン|アミン]]([[カテコールアミン]])で、[[中枢神経系]]の[[伝達物質]]、及び末梢のシグナル分子として働く。生体内のドーパミンは[[wikipedia:ja:チロシン|チロシン]]から二段階の酵素反応によって合成され、[[小胞モノアミントランスポーター]]によって細胞内の小胞に取り込まれる。[[開口放出]]によって放出されたドーパミンは放出部位から比較的離れた場所に存在する[[受容体]]に結合して標的細胞の生理機能を調節する。ドーパミン受容体は全て[[Gタンパク質共役型]]で、遅い信号伝達もしくは神経細胞機能の修飾を担う。[[中脳]]から[[大脳]]に投射するドーパミン神経が中枢のドーパミン神経系の大部分を占め、[[運動]]機能、[[認知]]機能などの中枢機能の調節に関与する。また、ドーパミン神経系は[[精神疾患]]の病態生理に対する関与が示唆されており、[[抗精神病薬]]等の治療薬や[[依存性薬物]]の標的となる。  
 [[wikipedia:ja:カテコール核|カテコール核]]を持つ[[wikipedia:ja:アミン|アミン]]([[カテコールアミン]])で、[[中枢神経系]]の[[伝達物質]]、及び末梢のシグナル分子として働く。生体内のドーパミンは[[wikipedia:ja:チロシン|チロシン]]から二段階の酵素反応によって合成され、[[小胞モノアミントランスポーター]]によって細胞内の小胞に取り込まれる。[[開口放出]]によって放出されたドーパミンは放出部位から比較的離れた場所に存在する[[受容体]]に結合して標的細胞の生理機能を調節する。ドーパミン受容体は全て[[Gタンパク質共役型]]で、遅い信号伝達もしくは神経細胞機能の修飾を担う。[[中脳]]から[[大脳]]に投射するドーパミン神経が中枢のドーパミン神経系の大部分を占め、[[運動]]機能、[[認知]]機能などの中枢機能の調節に関与する。また、ドーパミン神経系は[[精神疾患]]の病態生理に対する関与が示唆されており、[[抗精神病薬]]等の治療薬や[[依存性薬物]]の標的となる。  
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 軸索終末からの放出も[[細胞体]]・[[樹状突起]]からの放出も共に[[Ca2+|Ca<sup>2+</sup>]]依存性であるが、軸索における放出の方がより高濃度の細胞外Ca<sup>2+</sup>を必要とする<ref name="ref7"><pubmed> 21939738 </pubmed></ref>。線条体においてドーパミン放出部位と考えられる構造の60-70%は明確なシナプス構造を形成していない<ref name="ref7" />。また、ドーパミン受容体の大部分はシナプス外の部位に発現している<ref name="ref8"><pubmed> 9651506 </pubmed></ref>。従ってドーパミンによって担われる信号伝達は、主として放出部位から比較的離れた受容体に作用する[[拡散性伝達]]([[Volume transmission]])によると考えられる<ref name="ref8" />。[[ドーパミン受容体]]の活性化によって興奮性の変化やシナプス伝達の修飾が起きる。  
 軸索終末からの放出も[[細胞体]]・[[樹状突起]]からの放出も共に[[Ca2+|Ca<sup>2+</sup>]]依存性であるが、軸索における放出の方がより高濃度の細胞外Ca<sup>2+</sup>を必要とする<ref name="ref7"><pubmed> 21939738 </pubmed></ref>。線条体においてドーパミン放出部位と考えられる構造の60-70%は明確なシナプス構造を形成していない<ref name="ref7" />。また、ドーパミン受容体の大部分はシナプス外の部位に発現している<ref name="ref8"><pubmed> 9651506 </pubmed></ref>。従ってドーパミンによって担われる信号伝達は、主として放出部位から比較的離れた受容体に作用する[[拡散性伝達]]([[Volume transmission]])によると考えられる<ref name="ref8" />。[[ドーパミン受容体]]の活性化によって興奮性の変化やシナプス伝達の修飾が起きる。  
== ドーパミントランスポーター  ==
 細胞外に放出されたドーパミンは細胞膜上の[[ドーパミントランスポーター]]([[Dopamine transporter]], [[DAT]])によって細胞内に取り込まれる。ノルアドレナリンやセロトニンのトランスポーターと同様にイオンの電気化学的勾配によって駆動される12回膜貫通構造を持つトランスポーターで、ドーパミン、Na<sup>+</sup>、Cl<sup>-</sup>を1:2:1の比で輸送する。ドーパミン神経や[[wikipedia:ja:腸管|腸管]]、[[wikipedia:ja:肺|肺]]、[[wikipedia:ja:膵臓|膵臓]]、[[wikipedia:ja:腎臓|腎臓]]、[[wikipedia:ja:リンパ球|リンパ球]]などに発現している<ref name="ref9"><pubmed> 16613553 </pubmed></ref>。
 DATは[[シナプス]]直下ではなくシナプス周辺に主に発現しているため、シナプスにおけるドーパミン濃度よりもその周辺の細胞外液における濃度調節に重要と考えられている<ref name="ref8" /><ref name="ref9" />。DAT欠損マウスではドーパミンの基底濃度が上昇しており、一過性の濃度上昇からの回復が100-300倍遅くなっている<ref name="ref9" /><ref name="ref10"><pubmed> 8628395 </pubmed></ref>。[[コカイン]]や[[アンフェタミン]]などの[[精神刺激薬]]([[Psychostimulants]])はDATを主要なターゲットとし、ドーパミン取込の阻害又は逆輸送によるドーパミン放出を引き起こす。[[wikipedia:ja:ラット|ラット]]や[[wikipedia:ja:マウス|マウス]]にこれらの薬物を投与すると多動になる。DAT欠損マウスは野生型マウスよりも多動で、中枢刺激薬を投与しても行動量が変化しない<ref name="ref10" />。


== 受容体  ==
== 受容体  ==
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 D<sub>2</sub>受容体には[[D2L|D<sub>2L</sub>]](ロングフォーム)と[[D2S|D<sub>2S</sub>]](ショートフォーム)の[[スプライスバリアント]]が存在する。D<sub>2L</sub>とD<sub>2S</sub>は分布や機能が異なることが示されており、D<sub>2S</sub>はドーパミン細胞に発現する抑制性の自己受容体として機能する<ref name="ref18"><pubmed> 19138563 </pubmed></ref>。D<sub>3</sub>受容体も自己受容体として機能することが示唆されており<ref name="ref14" />、D<sub>4</sub>受容体もドーパミン神経系に何らかの抑制的働きを持つことが示唆されている<ref name="ref19"><pubmed> 15567422 </pubmed></ref>。  
 D<sub>2</sub>受容体には[[D2L|D<sub>2L</sub>]](ロングフォーム)と[[D2S|D<sub>2S</sub>]](ショートフォーム)の[[スプライスバリアント]]が存在する。D<sub>2L</sub>とD<sub>2S</sub>は分布や機能が異なることが示されており、D<sub>2S</sub>はドーパミン細胞に発現する抑制性の自己受容体として機能する<ref name="ref18"><pubmed> 19138563 </pubmed></ref>。D<sub>3</sub>受容体も自己受容体として機能することが示唆されており<ref name="ref14" />、D<sub>4</sub>受容体もドーパミン神経系に何らかの抑制的働きを持つことが示唆されている<ref name="ref19"><pubmed> 15567422 </pubmed></ref>。  
== ドーパミントランスポーター  ==
 細胞外に放出されたドーパミンは細胞膜上の[[ドーパミントランスポーター]]([[Dopamine transporter]], [[DAT]])によって細胞内に取り込まれる。ノルアドレナリンやセロトニンのトランスポーターと同様にイオンの電気化学的勾配によって駆動される12回膜貫通構造を持つトランスポーターで、ドーパミン、Na<sup>+</sup>、Cl<sup>-</sup>を1:2:1の比で輸送する。ドーパミン神経や[[wikipedia:ja:腸管|腸管]]、[[wikipedia:ja:肺|肺]]、[[wikipedia:ja:膵臓|膵臓]]、[[wikipedia:ja:腎臓|腎臓]]、[[wikipedia:ja:リンパ球|リンパ球]]などに発現している<ref name="ref9"><pubmed> 16613553 </pubmed></ref>。
 DATは[[シナプス]]直下ではなくシナプス周辺に主に発現しているため、シナプスにおけるドーパミン濃度よりもその周辺の細胞外液における濃度調節に重要と考えられている<ref name="ref8" /><ref name="ref9" />。DAT欠損マウスではドーパミンの基底濃度が上昇しており、一過性の濃度上昇からの回復が100-300倍遅くなっている<ref name="ref9" /><ref name="ref10"><pubmed> 8628395 </pubmed></ref>。[[コカイン]]や[[アンフェタミン]]などの[[精神刺激薬]]([[Psychostimulants]])はDATを主要なターゲットとし、ドーパミン取込の阻害又は逆輸送によるドーパミン放出を引き起こす。[[wikipedia:ja:ラット|ラット]]や[[wikipedia:ja:マウス|マウス]]にこれらの薬物を投与すると多動になる。DAT欠損マウスは野生型マウスよりも多動で、中枢刺激薬を投与しても行動量が変化しない<ref name="ref10" />。


== ドーパミン神経系  ==
== ドーパミン神経系  ==

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