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ADの約1%が常染色体優性遺伝形式の家族性ADである。これまでに原因遺伝子としてプレセニリン1(''PSEN1'')、プレセニリン2(''PSEN2'')、アミロイド前駆蛋白質(''APP'')の変異が同定されている。プレセニリン1・2は、後述するγセクレターゼの構成分子であり、その活性中心を構成する。ほとんどの変異が浸透率100%である。 | ADの約1%が常染色体優性遺伝形式の家族性ADである。これまでに原因遺伝子としてプレセニリン1(''PSEN1'')、プレセニリン2(''PSEN2'')、アミロイド前駆蛋白質(''APP'')の変異が同定されている。プレセニリン1・2は、後述するγセクレターゼの構成分子であり、その活性中心を構成する。ほとんどの変異が浸透率100%である。 | ||
===='' | ====''PSEN1''==== | ||
1995年にSherringtonらによって家族性AD家系から''PSEN1''の5つの変異が同定された<ref><pubmed> 7596406 </pubmed></ref>。現在までに、世界の各地域の350を超える家系から185の病的変異の報告がある。変異は遺伝子産物の全長にまたがるが、その多くは9つの膜貫通領域と第1・4・6ループ内に存在する。臨床的には、変異によっては失行や痙性対麻痺が目立つことがあり、病理学的には孤発例で見られるような核を有する老人斑やneuritic plaqueではなく、コンゴーレッドで染まらない綿花様の斑(cotton wool plaque)を特徴とする変異もある。 | 1995年にSherringtonらによって家族性AD家系から''PSEN1''の5つの変異が同定された<ref><pubmed> 7596406 </pubmed></ref>。現在までに、世界の各地域の350を超える家系から185の病的変異の報告がある。変異は遺伝子産物の全長にまたがるが、その多くは9つの膜貫通領域と第1・4・6ループ内に存在する。臨床的には、変異によっては失行や痙性対麻痺が目立つことがあり、病理学的には孤発例で見られるような核を有する老人斑やneuritic plaqueではなく、コンゴーレッドで染まらない綿花様の斑(cotton wool plaque)を特徴とする変異もある。 | ||
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====''APOE''==== | ====''APOE''==== | ||
''APOE''にはε2、ε3、ε4のアレルがあり、アレル頻度はコーカシアンではそれぞれ8%、78%、14%、日本人ではそれぞれ4%、87%、9%との報告がある<ref><pubmed> 9343467 </pubmed></ref>。1993年に晩発性の孤発性ADおよび孤発性ADにおいて、''APOE'' ε4アレルが発症のリスクであると複数のグループから報告があった。コーカシアンと日本人の疫学調査によると、ε3/ε3と比較して、ε3/ε4のORは2.7-5.6、ε4/ε4のORは11.8-33.1である。一方、ε2は発症に対して保護的に働き、ε2/ε3のORは0.6-0. | ''APOE''にはε2、ε3、ε4のアレルがあり、アレル頻度はコーカシアンではそれぞれ8%、78%、14%、日本人ではそれぞれ4%、87%、9%との報告がある<ref><pubmed> 9343467 </pubmed></ref>。1993年に晩発性の孤発性ADおよび孤発性ADにおいて、''APOE'' ε4アレルが発症のリスクであると複数のグループから報告があった。コーカシアンと日本人の疫学調査によると、ε3/ε3と比較して、ε3/ε4のORは2.7-5.6、ε4/ε4のORは11.8-33.1である。一方、ε2は発症に対して保護的に働き、ε2/ε3のORは0.6-0.9である。apoE蛋白質がADの病態機序のあらゆる段階に作用するという実験データがあるが、apoEは分泌されたAβに結合し、アイソフォームごとにその結合能が異なることが示されており、それによってAβのクリアランスや凝集に関わるという説が重要視されているが、Aβとの結合を否定する報告もある。一方、''APOE'' ε4保因者では、アミロイド蓄積の前から脳のfunctional connectivityの破綻が見られることが示されており、Aβを介さない毒性も示唆されている<ref><pubmed> 23296339 </pubmed></ref>。 | ||
==病態生理== | ==病態生理== |
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