「前頭側頭型認知症」の版間の差分

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 50〜60歳台を中心に発症し、男女差はなく、孤発性、遺伝性の両者の場合がある。有病率では45-64歳の人口10万対15他の報告がある<ref name=ref3 />。
 50〜60歳台を中心に発症し、男女差はなく、孤発性、遺伝性の両者の場合がある。有病率では45-64歳の人口10万対15他の報告がある<ref name=ref3 />。


== 臨床症候、検査、診断 ==
== 臨床症候、検査、診断 ==
臨床症候:早期からの行動障害[自己や社会に対する無関心(自己に無頓着で社会的意識の喪失)、脱抑制的徴候(自己中心的で、性的脱抑制、暴力的行動など)、口運び傾向(oral tendency)、常同的および保続的行動(マンネリ化した行動)など]、感情障害(抑うつ、不安、希死念慮、固定観念、妄想、心気症、感情的な無関心、感情移入や共感の欠如、感情鈍麻、自発性低下など)、言語障害[発話量減少、常同言語(同じ単語や句の反復)、反響言語と保続、後期には無言症]を特徴とし、緩徐な進行を示す。早期から高度の健忘、空間的失見当識、失行はみられず、ADとは対照的である。


検査:頭部CT、MRIで特徴的な前頭側頭葉の限局性萎縮がみられる。局所脳血流および糖代謝の低下がSPECTやPETで鋭敏に検出される。家族例、時に孤発例でタウタンパク質他の遺伝子(図1)に変異を認める場合がある。
'''表1.Neary らによるFTDの臨床診断基準(Nearyら1998を要約して引用)'''


診断: FTDの診断は人格変化、行動異常、限局性前頭・側頭葉萎縮を特徴とする臨床、画像所見による。病初期からの記憶障害を主徴とするADを鑑別除外する。NearyらによるFTDの臨床診断基準を表1に示す<ref name=ref2 />。FTDの原因疾患の診断については、MNDの随伴やCBDといった特徴的臨床所見を認める例や特定の遺伝子変異を有する例以外では、診断マーカーが未確立であり、病理学的検索が必要である。
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| 性格変化と社会的行動の異常が, 初期及び経過を通しての主要な特徴である。知覚, 空間的能力, 行為, 記憶といった道具的機能は正常あるいは比較的良く保たれている。
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Ⅰ. 中核的特徴(すべてが必須項目)<br><br> A. 潜行性の発症と緩徐な進行<br> B. 人間関係に関わる社会的行動が早期から障害<br> C. 自己行動の制御が早期から障害<br> D. 感情が早期から鈍化<br> E. 病識が早期から喪失
 
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| Ⅱ. 支持的特徴(すべての患者には必須ではない)<br><br> A. 行動障害<br>  1. 自己の衛生や身繕いの低下<br>  2. 精神的硬直と柔軟性の低下<br>  3. 易転導性と維持困難(飽きっぽい)<br>  4. 過剰摂食と食事嗜好の変化<br>  5. 保続と常同的行動<br>  6. 道具の強迫的使用<br> B. 発語と言語<br>  1. 発語の変化<br>   a. 自発語の減少, 発語の省略<br>   b. 言語促迫(多弁で止まらない)<br>  2. 常同的発語<br>  &nbsp; 3. 反響言語<br>  4. 保続<br>  5. 無言<br> C. 身体徴候<br>  1. 原始反射<br>  2. 失禁<br>  3. 無動, 筋強剛, 振戦<br>  4. 低く不安定な血圧<br> D. 検査<br>  1. 神経心理学的検査:前頭葉機能検査では顕著な障害がみられるが、高度な健忘、失語、知覚や空間的認知障害はない。<br>  2. 脳波検査:臨床的に明らかな認知症がみられるにも関わらず、 通常の脳波で正常<br>  3. 形態的・機能的画像検査:前頭葉や側頭葉前方部優位の異常
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| Ⅲ. FTLDに共通する支持的特徴<br><br>A. 65歳以前の発症. 一親等に同症の家族歴<br> B. 球麻痺, 筋力低下と筋萎縮, 筋線維束性収縮(一部の患者にみられる運動ニューロン疾患関連症状)
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| Ⅳ. FTLDに共通する除外項目<br><br>A. 病歴と臨床所見<br>  1. 発作性事象を伴う突然の発症<br>  2. 発症に関連した頭部外傷<br>  3. 初期からみられる高度の健忘症<br>  4. 空間的見当識障害<br>  5. 思考の連続性を欠いた語間代的で加速的な話し方<br>  6. ミオクローヌス<br>  7. 皮質脊髄路性の筋力低下<br>  8. 小脳性運動失調<br>  9. 舞踏アテトーシス<br> B. 検査<br>  1. 脳画像:中心溝より後方の病変または機能低下や, CTやMRIでの多巣性の病変<br>  2. 代謝性あるいは炎症性疾患を示唆する検査データ(例えば, 多発性硬化症, 梅毒, AIDS, 単純ヘルペス脳炎)
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| Ⅴ. FTLDに共通する相対的な除外項目<br><br>A. 慢性アルコール症の典型的な病歴<br> B. 持続性高血圧<br> C. 血管性疾患の病歴(例えば狭心症, 間欠性跛行)
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<br> <br> 臨床症候:早期からの行動障害[自己や社会に対する無関心(自己に無頓着で社会的意識の喪失)、脱抑制的徴候(自己中心的で、性的脱抑制、暴力的行動など)、口運び傾向(oral tendency)、常同的および保続的行動(マンネリ化した行動)など]、感情障害(抑うつ、不安、希死念慮、固定観念、妄想、心気症、感情的な無関心、感情移入や共感の欠如、感情鈍麻、自発性低下など)、言語障害[発話量減少、常同言語(同じ単語や句の反復)、反響言語と保続、後期には無言症]を特徴とし、緩徐な進行を示す。早期から高度の健忘、空間的失見当識、失行はみられず、ADとは対照的である。
 
検査:頭部CT、MRIで特徴的な前頭側頭葉の限局性萎縮がみられる。局所脳血流および糖代謝の低下がSPECTやPETで鋭敏に検出される。家族例、時に孤発例でタウタンパク質他の遺伝子(図1)に変異を認める場合がある。
 
診断: FTDの診断は人格変化、行動異常、限局性前頭・側頭葉萎縮を特徴とする臨床、画像所見による。病初期からの記憶障害を主徴とするADを鑑別除外する。NearyらによるFTDの臨床診断基準を表1に示す<ref name="ref2" />。FTDの原因疾患の診断については、MNDの随伴やCBDといった特徴的臨床所見を認める例や特定の遺伝子変異を有する例以外では、診断マーカーが未確立であり、病理学的検索が必要である。


== 治療、経過・予後 ==
== 治療、経過・予後 ==

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