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[[Image:強迫性障害 図3.jpg|thumb|350px|'''図3.皮質-線条体-視床-皮質回路 (CSTC circuit)'''<ref name=ref25><pubmed>22138231</pubmed></ref><br>強迫性障害の原因回路と考えられている。]] | [[Image:強迫性障害 図3.jpg|thumb|350px|'''図3.皮質-線条体-視床-皮質回路 (CSTC circuit)'''<ref name=ref25><pubmed>22138231</pubmed></ref><br>強迫性障害の原因回路と考えられている。]] | ||
OCDに関する神経生物学的モデルでは、チック障害、トゥレット症候群など各種神経精神疾患との関連や、神経心理学的検査所見、外傷などによる限局性皮質損傷例、ならびに形態学的、機能的脳画像研究などの知見より、[[皮質]]-線条体-[[視床]]-皮質回路(cortico-striatal-thalamic-cortical (CSTC) circuit)が注目されている<ref name="ref18" /> <ref name="ref23">'''中尾智博'''<br>生物学的機序-治療的な観点から-<br>上島国利、松永寿人,多賀千明ほか編<br>エキスパートによる強迫性障害(OCD)治療ブック<br>''星和書店'', 東京, p41-52, 2010.</ref> <ref name="ref24"><pubmed>9829024</pubmed></ref> <ref name="ref25"><pubmed>22138231</pubmed></ref> | OCDに関する神経生物学的モデルでは、チック障害、トゥレット症候群など各種神経精神疾患との関連や、神経心理学的検査所見、外傷などによる限局性皮質損傷例、ならびに形態学的、機能的脳画像研究などの知見より、[[皮質]]-線条体-[[視床]]-皮質回路(cortico-striatal-thalamic-cortical (CSTC) circuit)が注目されている<ref name="ref18" /> <ref name="ref23">'''中尾智博'''<br>生物学的機序-治療的な観点から-<br>上島国利、松永寿人,多賀千明ほか編<br>エキスパートによる強迫性障害(OCD)治療ブック<br>''星和書店'', 東京, p41-52, 2010.</ref> <ref name="ref24"><pubmed>9829024</pubmed></ref> <ref name="ref25"><pubmed>22138231</pubmed></ref>(図3)。 | ||
OCDの脳病態に関しては、いくつかの仮説が立てられているが、その中に、Saxenaら<ref name="ref24" />による[[前頭葉]]—皮質下回路に関する神経ネットワーク仮説(OCD-loop仮説)がある。これによれば、[[眼窩前頭前皮質]](OFC)を主とした前頭葉領域の活性化に伴い、それらの領域からの入力を間接経路(背側[[前頭前野]]—線条体—[[淡蒼球]]—[[視床下核]]—淡蒼球—視床—皮質)と直接経路([[前頭眼窩面]]—線条体—淡蒼球—視床—皮質)に振り分ける[[尾状核]]において制御障害が生じ(ブレイン・ロック)、視床への抑制性の制御が弱まる。その結果[[視床]]と前頭眼窩面の間でさらなる相互活性が生じ、強迫症状が維持、増幅されるという。これらの領域の機能的役割を考えると、社会的に適切な行動をとるための検出機能をもつ眼窩前頭前皮質、行動のモニタリングと調節に主要な役割を果たす[[前帯状皮質]] (ACC)、辺縁系や前頭葉からの入力を受けるゲート機能を有する尾状核、入力された情報に対するフィルター機能をもち皮質への投射を行う視床、といったように各々の部位が連携しながら円滑な行動の遂行を担っている<ref name="ref23" />。その後の検証によってOCD-loopにはさらに広汎な脳部位の関与を考慮する必要が出てきている<ref name="ref25" />(図3)。 | OCDの脳病態に関しては、いくつかの仮説が立てられているが、その中に、Saxenaら<ref name="ref24" />による[[前頭葉]]—皮質下回路に関する神経ネットワーク仮説(OCD-loop仮説)がある。これによれば、[[眼窩前頭前皮質]](OFC)を主とした前頭葉領域の活性化に伴い、それらの領域からの入力を間接経路(背側[[前頭前野]]—線条体—[[淡蒼球]]—[[視床下核]]—淡蒼球—視床—皮質)と直接経路([[前頭眼窩面]]—線条体—淡蒼球—視床—皮質)に振り分ける[[尾状核]]において制御障害が生じ(ブレイン・ロック)、視床への抑制性の制御が弱まる。その結果[[視床]]と前頭眼窩面の間でさらなる相互活性が生じ、強迫症状が維持、増幅されるという。これらの領域の機能的役割を考えると、社会的に適切な行動をとるための検出機能をもつ眼窩前頭前皮質、行動のモニタリングと調節に主要な役割を果たす[[前帯状皮質]] (ACC)、辺縁系や前頭葉からの入力を受けるゲート機能を有する尾状核、入力された情報に対するフィルター機能をもち皮質への投射を行う視床、といったように各々の部位が連携しながら円滑な行動の遂行を担っている<ref name="ref23" />。その後の検証によってOCD-loopにはさらに広汎な脳部位の関与を考慮する必要が出てきている<ref name="ref25" />(図3)。 |