「精神疾患」の版間の差分

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 [[操作的診断基準|操作的診断]]という新しい診断法が普及したのは、従来の診断法には信頼性について問題があったからである<ref><b>Carol S North, Sean H Yutzy</b><br>Goodwin and Guze's Psychiatric Diagnosis<br><i>Oxford University Press (New York)</i>:2010</ref>。1970年前後に行われたアメリカ—イギリス診断研究の結果が契機となり、精神疾患の診断・分類法を見直す機運が高まったと言われている。以前からアメリカとイギリスで入院患者統計に大きな差があり、アメリカでは[[精神分裂病]](現在の統合失調症に相当)が多く、イギリスでは[[躁うつ病]](現在の[[双極性障害]]に相当)が多かった。2国間で真に有病率が異なるのか、医師の診断に偏りがあるのか調査したところ、結果は後者であった。  
 [[操作的診断基準|操作的診断]]という新しい診断法が普及したのは、従来の診断法には信頼性について問題があったからである<ref><b>Carol S North, Sean H Yutzy</b><br>Goodwin and Guze's Psychiatric Diagnosis<br><i>Oxford University Press (New York)</i>:2010</ref>。1970年前後に行われたアメリカ—イギリス診断研究の結果が契機となり、精神疾患の診断・分類法を見直す機運が高まったと言われている。以前からアメリカとイギリスで入院患者統計に大きな差があり、アメリカでは[[精神分裂病]](現在の統合失調症に相当)が多く、イギリスでは[[躁うつ病]](現在の[[双極性障害]]に相当)が多かった。2国間で真に有病率が異なるのか、医師の診断に偏りがあるのか調査したところ、結果は後者であった。  


 その後の国際的な多国間調査でも、この結果は支持され、1970年以降の精神科診断学にとって、診断の信頼性を向上させることは重要な課題であった。現在、[[ICD‐10]] [[精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン]]([[wikipedia:ja:世界保健機関|世界保健機関]])<ref name=ref2><b>世界保健機関</b><br>ICD‐10 精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン<br><i>医学書院(東京)</i>:2005</ref>、あるいは[[DSM‐IV‐TR]] [[精神疾患の診断・統計マニュアル]]([[米国精神医学会]])<ref name=ref3><b>米国精神医学会</b><br>DSM‐IV‐TR 精神疾患の診断・統計マニュアル<br><i>医学書院(東京)</i>:2003</ref>には、100を優に越える診断カテゴリーが用意されている。
 その後の国際的な多国間調査でも、この結果は支持され、1970年以降の精神科診断学にとって、診断の信頼性を向上させることは重要な課題であった。
 
==現在用いられている診断カテゴリーと疾患単位 ==
 現在は[[ICD‐10]] [[精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン]]([[wikipedia:ja:世界保健機関|世界保健機関]])<ref name=ref2><b>世界保健機関</b><br>ICD‐10 精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン<br><i>医学書院(東京)</i>:2005</ref>、あるいは[[DSM‐IV‐TR]] [[精神疾患の診断・統計マニュアル]]([[米国精神医学会]])<ref name=ref3><b>米国精神医学会</b><br>DSM‐IV‐TR 精神疾患の診断・統計マニュアル<br><i>医学書院(東京)</i>:2003</ref>が主に用いられている。それぞれ100を優に越える診断カテゴリーが用意されている。
 
 ここで共通して用いられる「障害」という用語は、disorderの日本語訳である<ref><b>Michael G Gelder, Nancy C Andreasen, Juan J Jr. Lopez-Ibor, John R Geddes</b><br>New Oxford Textbook of Psychiatry<br><i>Oxford University Press (New York)</i>:2012</ref>。DSM 体系ではdisorderを、確かな原因や病態が不明で、主要な症状やその歴史、時に検査所見などで包括される症状群的な特徴を有するカテゴリーとして、疾患単位とは区別している。たとえばDSM‐IV‐TRには、臨床症状と経過に重点をおいた「大うつ病性障害」の診断のための基準が明記されているが、「大うつ病性障害」に、一定の原因と症状、一貫した経過と治療への反応性を強く期待することは、現時点では難しい。まして、この診断を受けた人に共通する少数の疾患遺伝子や、特異的な脳の構造的機能的異常や環境要因を保証するものではない。近くICD‐10は第11版に、DSM‐IV‐TRは第5版に改訂される。最新の研究成果を取り入れて、信頼性と妥当性の乏しい診断カテゴリーが淘汰され、新しいものにとって代わることは、たいへん望ましいことである。


===ICD-10===
===ICD-10===
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|[[パーソナリティ障害]]
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|}
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== 診断カテゴリーと疾患単位 ==
 ここで共通して用いられる「障害」という用語は、disorderの日本語訳である<ref><b>Michael G Gelder, Nancy C Andreasen, Juan J Jr. Lopez-Ibor, John R Geddes</b><br>New Oxford Textbook of Psychiatry<br><i>Oxford University Press (New York)</i>:2012</ref>。DSM 体系ではdisorderを、確かな原因や病態が不明で、主要な症状やその歴史、時に検査所見などで包括される症状群的な特徴を有するカテゴリーとして、疾患単位とは区別している。たとえばDSM‐IV‐TRには、臨床症状と経過に重点をおいた「大うつ病性障害」の診断のための基準が明記されているが、「大うつ病性障害」に、一定の原因と症状、一貫した経過と治療への反応性を強く期待することは、現時点では難しい。まして、この診断を受けた人に共通する少数の疾患遺伝子や、特異的な脳の構造的機能的異常や環境要因を保証するものではない。近くICD‐10は第11版に、DSM‐IV‐TRは第5版に改訂される。最新の研究成果を取り入れて、信頼性と妥当性の乏しい診断カテゴリーが淘汰され、新しいものにとって代わることは、たいへん望ましいことである。


== 関連項目  ==
== 関連項目  ==

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