「寛解」の版間の差分

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12 バイト追加 、 2013年5月11日 (土)
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 1980年代以前は、寛解およびその周辺の概念である回復、再燃、再発についてのコンセンサスが存在せず、各々の臨床家および研究者が異なる状態を指して使用するという混乱した状況であった<ref><pubmed> 1929769 </pubmed></ref>。  
 1980年代以前は、寛解およびその周辺の概念である回復、再燃、再発についてのコンセンサスが存在せず、各々の臨床家および研究者が異なる状態を指して使用するという混乱した状況であった<ref><pubmed> 1929769 </pubmed></ref>。  


 そのような中、精神疾患の治療経過についての研究や創薬・治験分野における効果判定など種々の研究分野で、また、治療ガイドラインの作成といった臨床の現場でも、その改善や悪化に関する共通言語を定める必要性が高まった。こうして1990年代以降、「寛解」「[[回復]]」「[[再燃]]」「[[再発]]」といった用語について明確に定義しようという動きが活発になった。以下に例として2疾患([[うつ病]]・[[統合失調症]])の寛解の定義について述べる。  
 そのような中、[[精神疾患]]の治療経過についての研究や創薬・治験分野における効果判定など種々の研究分野で、また、治療ガイドラインの作成といった臨床の現場でも、その改善や悪化に関する共通言語を定める必要性が高まった。こうして1990年代以降、「寛解」「[[回復]]」「[[再燃]]」「[[再発]]」といった用語について明確に定義しようという動きが活発になった。以下に例として2疾患([[うつ病]]・[[統合失調症]])の寛解の定義について述べる。  


== うつ病の寛解  ==
== うつ病の寛解  ==
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 ここではうつ病の「(完全)寛解」を「2週から8週間無症状であること、つまりうつ病の診断基準を満たさず、わずかな症状しかないこと」(あるいはハミルトンうつ病評価尺度17項目(HAM-D)で7点以下)、「回復」を「寛解が8週間以上続くこと」と提案した。さらに、「再燃」を「寛解からうつ病の診断基準を満たす症状に戻ること」(あるいは17項目HAM-Dで15点以上)、「再発」を「新しいうつ病エピソードであり、回復からうつ病の診断基準を満たす症状に戻ること」と定義した。  
 ここではうつ病の「(完全)寛解」を「2週から8週間無症状であること、つまりうつ病の診断基準を満たさず、わずかな症状しかないこと」(あるいはハミルトンうつ病評価尺度17項目(HAM-D)で7点以下)、「回復」を「寛解が8週間以上続くこと」と提案した。さらに、「再燃」を「寛解からうつ病の診断基準を満たす症状に戻ること」(あるいは17項目HAM-Dで15点以上)、「再発」を「新しいうつ病エピソードであり、回復からうつ病の診断基準を満たす症状に戻ること」と定義した。  


 他にもいくつかの定義が提案され(ACNP task force<ref><pubmed> 16794566 </pubmed></ref>)定義間で若干の相違点はあるものの、ある閾値を超えるような症候が一定期間認められない状態を「寛解」とし、そのような期間がさらに持続している状態を「回復」とする点は概ね共通している。
 他にもいくつかの定義が提案され(ACNP task force<ref><pubmed> 16794566 </pubmed></ref>)定義間で若干の相違点はあるものの、ある[[閾値]]を超えるような症候が一定期間認められない状態を「寛解」とし、そのような期間がさらに持続している状態を「回復」とする点は概ね共通している。


== 統合失調症の寛解  ==
== 統合失調症の寛解  ==
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#簡易精神症状評価尺度(Brief Psychiatric Rating Scale; BPRS)
#簡易精神症状評価尺度(Brief Psychiatric Rating Scale; BPRS)


 次に寛解基準の具体的項目としては、DSM-Ⅳにおいて統合失調症と診断される5つの診断基準に基づき、3つの精神病理学的な次元(精神病性症状・陰性症状・解体)に分類される8項目が各評価尺度から選択され、これら「8項目全てにおいて軽度以下の得点を最低限6か月維持され、その間に入院していないこと」と定義された。  
 次に寛解基準の具体的項目としては、[[DSM-Ⅳ]]において統合失調症と診断される5つの診断基準に基づき、3つの精神病理学的な次元(精神病性症状・陰性症状・解体)に分類される8項目が各評価尺度から選択され、これら「8項目全てにおいて軽度以下の得点を最低限6か月維持され、その間に入院していないこと」と定義された。  


 8項目とは、例えばPANSSでは、[[妄想]](P1)、[[異常思考]](G9)、[[幻覚]]様行動(P3)、思考の解体(P2)、[[衒奇症]]・不自然な姿勢(G5)、[[感情鈍麻]](N1)、[[引きこもり]](N4)、自発性の欠如(N6)である。なお、「軽度以下の得点」とは、PANSSとBPRSでは各項目について3点以下、SAPS/SANSの各項目について2点以下を指す。  
 8項目とは、例えばPANSSでは、[[妄想]](P1)、[[異常思考]](G9)、[[幻覚]]様行動(P3)、思考の解体(P2)、[[衒奇症]]・不自然な姿勢(G5)、[[感情鈍麻]](N1)、[[引きこもり]](N4)、自発性の欠如(N6)である。なお、「軽度以下の得点」とは、PANSSとBPRSでは各項目について3点以下、SAPS/SANSの各項目について2点以下を指す。  

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